【「北欧、暮らしの道具店」データ活用の取り組み】データ分析チーム発足、4年で売上約2倍の年商51億円・定価消化率95%超達成。200万DLアプリ・50万超会員データが社員の感性を裏付け意思決定を迅速化。
■データ分析基盤構築の背景
「北欧、暮らしの道具店」のスタッフは約8割が元顧客であり、顧客理解が深い点が特徴です。顧客と趣味嗜好が近い社員が、高い解像度で顧客を理解しニーズを汲み取った上でのコンテンツ制作や商品開発が強みです。さらに、SNSやスマホアプリなど560万アカウント(*1)を超えるエンゲージメントチャネルにより、多様な接点で顧客と長期的に繋がることで、「ライフカルチャープラットフォーム」として年々右肩上がりに成長しています。
※1:2022年7月末時点の数値
「北欧、暮らしの道具店」コンテンツ編集担当の仕事風景
エンゲージメントアカウント数の推移 2022年7月期決算補足説明資料より
この強みにより、データ分析チーム発足前においても、趣味嗜好が近いスタッフが感性で行うマーケティング施策や商品開発の企画を、自社開発のECサイト上の受注・会員に関するデータやGoogle Analyticsを駆使したコンテンツ閲覧のデータ等を、属人的に分析して意思決定することで定価消化率や在庫消化率を上げ、高い経常利益を保つ健全な成長を続けてきました。
しかし、年間売上が20億円超となり規模が拡大したことを受け、1つの施策にかかるメリットやリスクが大きくなったことや、スマホアプリのリリースにより解析データの幅がさらに広がることで属人的なデータの照らし合わせによる業務負荷の増加を見越し、より効率的なデータ活用を実現するため、2019年よりデータ分析チームを発足しました。
データ分析チームでは、感性で行うマーケティングや商品開発を裏付けるためのデータを算出するにあたり、システムの不具合や人為的なミスによるリスクを最小限に抑えた上で、従来より効率的なデータ活用の実現を目指し、チーム運営を開始しました。
売上高・経常利益・経常利益率 2022年7月期決算補足資料より
■データ分析チームの成果・貢献
データ分析チーム発足前の2018年7月期21億円だった売上は、2022年7月期には約2倍の51億円へと成長。またD2Cの商品売上においては、データ分析を元に、発注数や販売計画の精度を高めることで定価消化率95%超を実現しました。同時に、それらの高い数値を維持しながらもさまざまな解析作業の効率化も進めたことにより、2022年7月期の残業時間は、月平均1人あたり約4.8時間と、創業当初からの「残業を当たり前にしない働き方」も継続し、サービス・社員ともに「健全な成長」を続けています。
■データ分析チームの運用体制
「ビジネスサイド」「データアナリスト」「データエンジニア」という構成でチームを運営しています。
・ビジネスサイド…数値分析から売上予測を立て、各施策を決定
・データアナリスト…ビジネスサイドが判断を行うためのデータを決定
・エンジニアサイド…データアナリストが必要だと判断した数値を抽出
3者の協力により、データやプログラミング等の専門知識が無くてもデータ活用ができる基盤を構築し、まずは経営企画やMD(マーチャンダイズ)グループを中心に活用を開始しました。現在は、現場からのフィードバックを受け、スマホアプリのグロース施策やカスタマーサポートやSNS運用の改良にもデータ活用を実現しています。
チームの人員は社内外にこだわらずプロ人材から構成されています。チーム運営のコンサルティングは株式会社風音屋、ビジネスサイドは社内スタッフ、データアナリストは副業採用の社員、開発は面白法人カヤックと社内エンジニアが担当し運営しています。
データ分析チームの運用体制図
■データ活用事例
・全社の予算作成に活用
事業計画、各部署の予算作成などにおいてデータを用いた合理性の高い計画を立てることが可能となりました。
・発注予測にデータを活用し、意思決定の迅速化と精度向上を実現
MDグループが発注予測を立てる際の裏付けとしてデータを活用し、意思決定の迅速化や精度向上につながり、2021年7月期、2022年7月期共に全商品の定価消化率は95%を超えています。
・商品の販売動向データを新商品開発に活用し、人気シリーズの誕生に貢献
PB(プライベートブランド)開発グループが商品の販売動向データを元に、商品の改良及び販売計画の精度を上げ、毎シーズン発売される人気シリーズの誕生に貢献しています。2019年の発売から改良を重ねて毎シーズン連続で7回販売し、累計3万本以上本販売している「春いち・秋いちボトムス」(*2)や、2020年から販売し、累計6万足以上販売している靴下等のヒットシリーズ開発につながっています。
・SNS,メルマガでの顧客動向を分析し、効果的なフォーマットに改善
SNSやメールマガジンの登録者数の推移や流入元分析によりエンゲージメントアカウント数を増やし、流入元ごとのCTRやCVRを計測することで、より効果の高いフォーマットへの改善を行っています。
・商品購入6割がスマホアプリ経由へ
2019年にリリースしたスマホアプリにおいて、コンテンツ間の行動分析を元に改善を重ねアプリ内の回遊を促進し、EC購入の約6割がアプリ経由に*3。
※2参考:累計3万2千本販売の定番ボトムスシリーズ 俳優・小島聖をモデル起用。顧客年齢層の拡大を受け4サイズ展開で新発売。
※3参考:「北欧、暮らしの道具店」スマホアプリが2年で200万DL突破。
■導入ツール
・BIツール「Looker」
分析環境の安定化及び、経営陣や現場に近いスタッフも気軽に日々の数値を確認するためのダッシュボード作成を目的にを導入しました。
・データウェアハウス「BigQuery」
「Looker」との相性が良く、採用し各種データを集約化できるため導入しました。
・分析基盤の総合支援ツール「trocco」
データ転送の効率化や、複数のデータベースをBigQueryに取り込むことによって、分析の対象を広げて事業の状態を可視化し、意思決定のスピードを加速するため導入しました。
■解析対象データの変化
<データ分析チーム発足前>
・自社ECの受注・会員データ
・Google Analyticの行動ログ
<データ分析チーム発足後>
・自社ECの受注・会員データ
・Google Analytics (GA4)の行動ログ
・読み物に関するデータ
・在庫データ
・顧客対応データ
・予算データ など
解析対象データの変化図
■データ分析プロジェクト責任者コメント
株式会社クラシコム執行役員 ビジネスプラットフォーム部 部長 高尾清貴
これまで、クラシコムの各部署で行われてきた「点」の分析が、データ分析チームの立ち上がりとともに、過去からの連続性をもって、トレンドを分析できる「線」の分析になり、LookerやBigQueryなどのツールとともにデータ基盤の「面」の環境が整備されました。さらにtroccoの導入によって分析対象にできるデータが増え、より「立体」的なデータ分析が求められるようになりました。上場を機に多様なステークホルダーとの関係もはじまり、クラシコムにおけるデータ分析の重要性が増してきており、これからどのようにクラシコムのデータ分析を展開していけるのか、とてもワクワクしています。
■コンサルティング会社コメント
株式会社風音屋 取締役 竹信瑞基氏
クラシコムらしさを活かしながら、お客さまとのつながりをより深めていく「経営・ブランド運営の羅針盤」として、データ分析基盤やグロースサイクルを共創して参りました。分析基盤に関しては、trocco + BigQuery + Looker といったマネージドサービスを組み合わせ、システム構築・運用・保守の労力を最小限に減らすことで、メンバーがデータの整備・活用に専念できる環境を実現しています。
ハードとしてのインフラのみならず、どうしたらお客さまにもっと喜んでもらえる仕組みを部門横断で作れるか、引き続き一緒に模索していければと思っています。
■開発者コメント
面白法人カヤック 池田将士氏
クラシコムのデータは、オーソドックスなECにまつわるデータを主軸としながら、マルチメディアなど幅広いデータが紐づいているため、データエンジニアとして扱うのがとても興味深いです。また、コンサルティングを担当する風音屋や、データアナリストも、日本のデータエンジニアリング分野の第一人者たちがメンバーとして集い、最先端のツールを駆使して分析する妥協のない理想的な環境です。その中で、エンジニアとして期待に応えるのは容易ではなく、プレッシャーを感じながらも、大変成長できる環境だと感じています。最終的にはクラシコムのエンジニアさんが自走できるように手離れしなくてはと考えていますが、そのゴールまで、私自身もまだまだチャレンジをしていきたいと考えています。
参考:面白法人カヤック「カヤック×クラシコム流 事業成長に寄り添うデータ分析基盤のつくり方」
■エンジニア採用中
長く愛される自社サービス開発!北欧、暮らしの道具店エンジニア募集
■参考:当社エンジニアによるブログやイベント情報
・エンジニアブログ
Kurashicom Tech Blog
・エンジニア向けイベントの開催レポート
100名のエンジニアらが参加、クラシコム初のエンジニアイベント開催レポート(2022年7月28日)約2年で200万DL・EC購入率6割を実現した人気アプリの裏側を開発者が解説。
〜鍵は運用の利便性とアプリならではの“心地よさ”を両立させる実験的思考〜