クラシコムの代表取締役社長・青木耕平が「こうかな?」「こうかも!」とうろうろ思考を巡らせながら、ビジネスの悩みにお答えする企画の第三回。今回のテーマは「顧客生涯価値(Life Time Value)の考え方」です。
ブランドソリューショングループのプランナーが、企業のマーケティングやブランディング担当者の方とお話するなかで「LTVの高い新規顧客を獲得したい」「既存顧客のLTVを伸ばしたい」といった声をよく伺います。そこでクラシコムでは、どのような考え方でLTVと向き合っているのか、青木に聞いてみました。

クラシコムにおけるLTVの考え方は?
LTVは「顧客生涯価値」という言葉の通り、ビジネスにおいて最大化したい価値ではありますが、正確に計測するのは非常に難しい値です。だからこそ目的に応じた期間を定義し、適切な中間指標を設定しながら計測するようにしています。クラシコムでは、新規で買い物をしたお客さまが最初の注文でどれくらい購入し、その後どんな頻度でどれだけ買ってくださっているか、day0LTVから最長3年LTVまで目的に応じて様々な期間で区切ったLTVをモニタリングしていますね。
そもそもLTVを因数分解すると注文あたりの粗利益×注文回数で、3つの変数があると考えています。まずお客さま1回あたりの「注文金額」、お客さまとお付き合いする「期間」、そしてその期間の中でどれくらい買い物してもらえるかの「頻度」。注文金額はカテゴリや商材で大きく異なると思うので、今回は、期間と頻度について考えてみたいと思います。
長く頻繁に思い出してもらうための、マルチチャネル×マルチカテゴリ戦略
期間と頻度、つまり……、お客さまにできるだけ長い期間、頻繁に思い出してもらうことが、LTVを上げるための鍵だと考えています。クラシコムではそのための戦略として「マルチチャネル×マルチカテゴリ」を掲げています。
まずインターネットを見ているときにブランドを思い出してもらえると、すぐに行動につながるので良いですよね。ですのでクラシコムでは、SNSや検索エンジン、YouTube、Podcastなど、あらゆるオンライン上のチャネルで存在感を持たせるために、コンテンツの量とリーチの総和を増やしています。

それから「北欧、暮らしの道具店」では商品カテゴリも、年々増やしています。ひとつのカテゴリの取り扱いだと、そのカテゴリに用事があるときしかお客さまとの接点が生まれないけれども、服、コスメ、雑貨など、さまざまなカテゴリを展開することで、お客さまの可処分時間や可処分所得を、私たちのプラットフォームで過ごしてもらう割合を増やすことができます。

また、お客さまに頻繁に思い出してもらうためには、来訪のたび何かしらのおみやげがある状況が理想です。おみやげとしてコンテンツをお届けするのですが、それがお客さまにとって鬱陶しいものであったり、嫌な思い出になったりすると結果につながらないので「(見せてくれて)ありがとう」と言ってもらえるような質の高さも大切です。セールやクーポンといった施策だけではなく、常に新しい気づきやおもしろい情報をお届けできるとよいと思います。
ここまでクラシコムの「マルチチャネル×マルチカテゴリ戦略」についてお話してきましたが、実現するのは非常に難しいと思います。実際、日本にはマルチカテゴリブランドは、数えるほどしかないですよね。
非常に難しいのですが、魅力的な世界観でコンテンツや商品を統一し、それら一つひとつの質を高め、一貫性のある濃いものにしていくことができれば、お客さまはどこのチャネルでブランドに出会っても「私のためのものだ」と感じてくださり、チャネルやカテゴリ間もジャンプしやすくなります。

カテゴリの種類とコンテンツの量をどれだけ適切に増やせるか、どれだけ多くのチャネルで思い出してもらえているか。こうした積み重ねが結果として、LTVの向上につながると信じて、私たちもお客さまと長いお付き合いができるよう、日々コツコツとブランドを育てています。
連載「クラシコムのうろうろマーケ談話室」
1:Q.ブランディングの費用対効果が見えず、不安です
2:Q.SNSのKPIはどう設定する?運用をやめるとき、アクセルを踏むときの判断は?
3:LTVを最大化するには?クラシコムが実践する、マルチチャネル×マルチカテゴリの考え方