2024.10.30

参加して感じた変化と学び。味の素社参加メンバーに聞く中間報告インタビュー〈クラシコム×味の素社の協働プロジェクト「暮らしの素プロジェクト」〉

書き手 白方はるか
参加して感じた変化と学び。味の素社参加メンバーに聞く中間報告インタビュー〈クラシコム×味の素社の協働プロジェクト「暮らしの素プロジェクト」〉

2024年6月に始動した、味の素株式会社と株式会社クラシコムによる協働マーケティング「暮らしの素プロジェクト」。クラシコムが「北欧、暮らしの道具店」で培ったD2Cビジネスのノウハウと、味の素社の持つブランド力・商品開発力を生かして協働することにより、ターゲットとの強い繋がりのある商品の企画開発を目指す新しいプロジェクトです。

▲ 関連プレスリリース:味の素㈱とクラシコム、 協働マーケティング「暮らしの素プロジェクト」を始動

メンバーは、クラシコムから3名と味の素社から3名の合計6名。クラシコムの商品企画メソッドにならい、企画の源泉となる「動機」の発掘からスタートし「北欧、暮らしの道具店」店長佐藤への企画提案を経て生産準備を行い、商品発売へと進んでいく予定です。9月末までにワークショップを含む複数回のディスカッションを実施し、現在もチームでコミュニケーションをとりながら企画を進めています。

この記事ではプロジェクトの中間報告として、味の素社のメンバー3名へのインタビューをお届けします。話を聞いたのは、味の素の食品研究所 コンシューマーフーズ開発センターの西田さん、食品事業本部 マーケティングデザインセンターの瀧本さん、任さんです。

■ クラシコムメンバーとふりかえる「暮らしの素プロジェクト」中間報告レポートはこちら
https://kurashi.com/journal/15048

クラシコムの第一印象は?

▲左から味の素社のメンバーの西田さん、瀧本さん、任さん(以下、敬称略)

–– クラシコムの第一印象を教えてください。

瀧本:「やっぱりやさしいんだなぁ」というのが、率直な第一印象です。クラシコムのみなさんは、仲間にも自分にもやさしい言葉をかけられるし、事象を良し悪しで判断するのではなく、まるっと包み込むように受け止めてくれます。もともと見ていた「北欧、暮らしの道具店」からも、そういった懐の深さを感じていたのでギャップがありませんでした。また、日頃から動機を深く考えているためか、みなさん自分の感じたことを伝えるときの解像度と言語化力がとても高くて驚きました。

▲クラシコムの社員は約8割が「北欧、暮らしの道具店」の元お客さまであることから、スタッフ個人の動機をもとに企画を立てることでお客さまのニーズに合った商品を生み出している

任:味の素社では「このターゲットにこんなニーズがありそうだ」と世間の潮流や調査データから予測を立てて商品企画に取り組んでいきます。この考え方が染みついているので、ディスカッション中にクラシコムのメンバーに「お客さまはどんな人たちですか? 」と質問したとき、顧客データではなく「私の場合は……」と個人の意見が返ってくることに、最初は驚きました。

その後「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤さんに企画提案したときも、メンバーのみなさんと同じように、自分を主語にフィードバックをいただいて、動機を大切にする考え方が、クラシコムのカルチャーとして浸透しているのだなと実感しました。

▲「ごはんづくりのモヤモヤ」をテーマにワークショップを行ったときの意見やアイデアがメモされたホワイトボード

西田:私は2回目のワークショップからこのプロジェクトに参加しました。味の素社であれば商品企画の途中で出口のイメージが見えることも多いので、合流するときは1回目のワークショップに使ったホワイトボードの写真を見たら企画の全貌がわかるかも……と思いきや、全く出口のイメージが見えず「一体何が起きているんだ?」と衝撃を受けました(笑)。

個人を主語にして考え抜くことの難しさ

–– ここまでの過程で、難しかったポイントは?

西田:ワークショップでみんなが「わかるわかる」と共感している状態を、普段の生活で自分たちが使っている言葉に変えて、企画書へ落とし込むことの圧倒的な難しさを感じました。

任:クラシコムは企画の入口から出口まで、一気通貫でお客さんと対話するような言葉で語るけれども、味の素社では企業と生活者の視点を行き来しながら企業の言葉へ集約する感覚があります。企画を生活者目線の言葉に噛み砕き、違和感を感じない文章へと磨く作業は、真逆の起点からものづくりをしてきた私たちだからこそ難しいと感じるプロセスでした。

瀧本:たしかに、味の素社の企画書は、バリューチェーンに関わる他部署にも展開するため、洗練された端的な言葉でまとめる、いわゆる「企業言語」を使いますが、クラシコムは企画書においても、とことん生活者である「個人」が主語です。

生活者目線の言葉で企画書を書くと、ちょっとした単語の選び方ひとつでニュアンスが変わってしまったり、同じだと思っていた動機もメンバーそれぞれの言葉にすると、少しずつ異なる価値観に変換されてしまい伝えたいことがまとまらなかったり。企画を言葉に落とし込んでいく上では、共感してもらうには企画のベースになる担当者の動機が抽象的すぎないほうがいい、という気づきにも繋がりました。

チームの動機がひとつにまとまった理由

–– 言語化の難しさも感じながら、最終的にチームの動機をどのようにひとつにまとめていったのか、教えてください。

任:コミュニケーションを重ねていくうちにメンバー全員が互いに自己開示できる状態になり、根源の深いところまで理解しあえるようになった結果、自ずと動機がまとまっていきました。

瀧本:「なぜ?」を掘り下げていくうちに、メンバー全員が共通して疑問に思っていることを発見できて、最終的にはそこに企画が集約されていきました。会社は異なりますが、お客さまを第一に考える姿勢は同じでしたし、メンバー全員が強い探究心を持っていたので、企画がひとつにまとまっていったのかもしれません。

西田:動機のコアな価値や絶対に崩したくないところ、深堀りする姿勢が共有できていたからスムーズに着地できたと思います。個人的には、目に映るものすべてが「なぜ?」の状態で入ったので、ひとつずつ疑問をつぶしていくようなコミュニケーションの進め方が、すっと腑に落ちた感覚もあります。

プロジェクトを通じての変化と学び

–– プロジェクトに参加してみて、変化したこと、学んだことはありますか。

任:実は最初のワークショップのとき「私はマーケターだから」と責任を感じ「北欧、暮らしの道具店で販売するならアウトプットはこんなかんじかな? 」と企画のイメージをあらかじめ考えて臨んだのです。

でもクラシコムのみなさんと意見を交わすうちに「動機から企画を発掘するのか!」と考え方の違いに納得して、プロジェクトに向きあう姿勢が変わっていきました。だんだんと「こうすべきなのでは?」と考えていたことも「どうしてもこうしたい!」と変わってきて、今は「あるべき論」ではなく「本当に自分がやりたいこと」に向き合う大切さを実感しています。マーケターとしては、商品発売後のコミュニケーションをどう組み立てていくのか、今後のインプットも楽しみです。

瀧本:今回のプロジェクトは社内でも気にかけてくれる人が多く、周囲からもたくさんアドバイスをもらったり、ポジティブな応援の声をかけてもらったりと、嬉しい反応を感じています。

そうした後押しもあるなか、私も任さんと同じようにディスカッションを繰り返す中で、「ゴールに間に合わせる」というマインドではなく「納得する形でやりきりたい!」という強い気持ちが生まれたことが、大きな変化でした。

また、普段の仕事の中で生活者の目線に立ち返ることを実践してきたつもりだったのですが解像度が低いのかもしれないと感じることもあり、今回のプロジェクトの動機の発掘やコミュニケーションを通じて、もっと解像度高くできるのではないかと、可能性を感じました。

西田:企業言語に圧縮された状態の企画書を、工場で実現するための言語や条件へ解凍していく作業は日常的にしているのですが、企画づくりから携わり、かつお客さまと同じ言葉で表現を考えるという作業は、開発分野に携わる自分にとって新しいトライでした。

チームでひとつの企画に向き合い、途中でいろいろ迷走したりゴールが変わったりするなかで、普段の自分の担当領域以外のこともケアをしなくちゃいけないという学びもありました。必要なことのはずなのに、これまでやってこなかったと思います。自分の担当領域プラスアルファをケアすることが、ひいては自分の担当領域以外に関わる能力であったり、責任感であったり、能動的に情報をとりにいく姿勢だったりにつながっていくように感じられました。

 

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