味の素社との協働企画「暮らしの素プロジェクト」クラシコム担当者が始動からの4カ月をふりかえる中間報告レポート

書き手 白方はるか
味の素社との協働企画「暮らしの素プロジェクト」クラシコム担当者が始動からの4カ月をふりかえる中間報告レポート

2024年6月に始動した、味の素株式会社と株式会社クラシコムによる協働マーケティング「暮らしの素プロジェクト」。クラシコムが「北欧、暮らしの道具店」で培ったD2Cビジネスのノウハウと、味の素社の持つブランド力・商品開発力を生かして協働することにより、お客さまとの強い繋がりのある商品の企画開発を目指す新しいプロジェクトです。

▲ 関連プレスリリース:味の素㈱とクラシコム、 協働マーケティング「暮らしの素プロジェクト」を始動

この記事では、プロジェクトの中間報告としてクラシコムメンバーの声を交えながら、レポートをお届けします。

クラシコムのメソッドに沿った企画進行

「暮らしの素プロジェクト」は、味の素社の商品開発リソースを活用しながら、クラシコムの企画メソッドに沿って商品開発を進める試みです。チームはクラシコムから3名と、味の素社から3名の合計6名で構成されます。

2024年6月のキックオフから9月現在まで、複数回のディスカッションを実施。そのほかにも日常的にメンバー同士でSlackでコミュニケーションをとりながら、コンセプト策定から商品選定へと進み、現在は「北欧、暮らしの道具店」店長佐藤への企画提案を経て、具体的な生産についての検討を進めているところです。

動機を発掘するためのワークショップ

▲ワークショップの様子

キックオフ後の6月、初回に行ったのはワークショップです。

クラシコムは社員の約8割が「北欧、暮らしの道具店」の元お客さまのため、自分自身の生活における課題や気づきを深く掘り下げることによって、お客さまのニーズにつながる企画を生み出しています。このメソッドにならい、今回のプロジェクトでは、商品開発の起点になる「動機」をチームでみつけることを目的としたワークショップを実施しました。

ワークショップは、普段のごはんづくりでそれぞれが感じているモヤモヤする気持ちやエピソードを言語化して共有するところから始まりました。メンバーひとりずつ、事前に考えてきたエピソードを持ち寄り、テーブルを囲んで、意見を交わします。

当初ワークショップは1回の予定でしたが、話し合いを経て2回目を実施することになったのだそう。その経緯について、プロジェクトメンバーのひとり斉木(さいき)に聞いてみました。

▲写真左から3番目、クラシコム プライベートブランド開発グループ 商品企画開発担当 斉木

「自分のごはんづくりの向き合い方を深掘りするなかで、そもそも私自身はそんなにごはんづくりにモヤモヤしていないなと気づいたんです。だから、ごはんづくり=モヤモヤするものという前提で動機を深掘りすることに違和感を持ってしまって。ちゃぶ台を返すようでドキドキしたのですが、1回目のワークショップの最後に、率直に自分が感じたことをメンバーに伝えてみました」(斉木)

クラシコムでは、商品企画だけでなく、さまざまなプロジェクトの過程において、本当にこれでいいのかな? と一つひとつの選択を巡るように考え、そこから得られた気づきを大切にしながら、前へ進んでいきます。

今回のプロジェクトにおいても、1回目のワークショップでじっくりと巡って考えたことにより、2回目は違う角度から光を当ててみようという結論に至りました。

▲1回目のワークショップで出た「ごはんづくりのモヤモヤ」

「2回目のワークショップでは、ごはんづくりの原点に立ち返るために、料理で楽しい瞬間は? 食べるってどういうこと? どんな食卓にしたい? など、メンバーそれぞれの料理への向き合い方と理想についてすりあわせる時間になりました。結果として一人ひとりのライフスタイルが違う中でも共通する課題、そして理想の食卓のイメージがだんだんと見えてきました」と斉木は話します。

チームの動機をひとつにまとめる

8月、ワークショップを経て見えてきた共通の「動機」をベースに、商品サンプルから商品のイメージを組み立て、企画書へとまとめていく作業にとりかかりました。

企画書にまとめるプロセスについて「複数人の動機を言葉にしてまとめるところに難しさがあった」とふりかえる斉木。通常のクラシコムのものづくりでは、ひとつの商品企画をひとりのプランナーが担当しますが、今回はチームでの商品企画。

メンバーの共通の動機がみつかっても、複数人が主語になることで抽象的な表現になってしまったり、個々のライフスタイルや趣味嗜好から言葉に変えるときに少しずつ「ずれ」が起きてしまったりするため、企画がぼやけないように、チームのみんなで何度も何度も巡って考える時間が必要だったようです。

「メンバー一人ひとりが違和感に蓋をせずディスカッションを重ねた結果、自ずと企画が筋肉質に変化していきました。もしここで議論することを諦めたり飲み込んだりしてしまっていたら、きっとお客さまにも小さなずれが伝わっていたと思うので、企画を練り上げるためのコミュニケーションの量と質は、とても重要だったと思います」(斉木)

企画提案とフィードバックを経て

8月末、いよいよチームでまとめた企画書を「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤へ提案することに。提案では、サンプルを囲み試食しながら、佐藤へ商品イメージを共有しました。

▲「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤

提案後のフィードバック、佐藤からはこれまでの企画へのねぎらいと背中を押す言葉と共に、お客様の心の動きを想像した上で、企画のコンセプトを変えてみるのはどうか? と提案がありました。その後メンバーみんなで方向性を議論し、コンセプトを変更した企画で再び佐藤へ提案することになったのだそう。

▲サンプルを囲む味の素社のメンバー

「フィードバックのあと、味の素社のメンバーのひとりがコンセプトを変えることに対する戸惑いを明かしてくれたり、別の味の素社のメンバーは『こういう解釈もあるんじゃないかな』と気づきを共有してくれたり。クラシコムが大切にしている『率直なコミュニケーション』に驚く場面も合ったのではないかと想像するので、そんななかで感じていることを共有し、時間をかけてすり合わせてくれた味の素社のみなさんの思考の柔軟さを実感しました」(斉木)

プロジェクトを通じての気づきと学び

商品発売に向けて、再提案と商品生産へと動き出した「暮らしの素プロジェクト」。最後に、斉木にこのプロジェクトを通じての気づきと学びについて聞いてみました。

「ワークショップで『どんなにヘトヘトの日でも、なにかひと手間加えられると大丈夫って思えるよね。食べること、つくることって生命力につながってるのかもね』という声が出たとき、チームのみんなが『わかる!』と共感できました。小さな工夫で自分なりに食卓をよりよいものにしたいという気持ちは、味の素社とクラシコムの共通の価値観のように感じましたし、こうした食に向き合う姿勢はお客さまも同じかもしれない、と繋がりを感じた瞬間でした。

私自身、これまで、憧れの方やブランドとコラボレーションする仕事の過程で『こんなところに光を当てるのか』とその分野のプロフェッショナルなものづくりに感銘を受けてきました。今回のプロジェクトを通じても、味の素社のみなさんにリスペクトを感じています。

味の素社のみなさんが、どんなことに気を配り、どんな姿勢でものづくりしているのかを、クラシコムにいながら体験できていることは、個人としても大きな学びです。このプロジェクトでの体験をこれから少しずつチームや会社に還元して、今後の新しい商品開発にいい影響を与えられたらと思います」

 

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