2016.12.09

いごこちのよい暮らしかたを研究する仕事です。

代表取締役社長 青木耕平
いごこちのよい暮らしかたを研究する仕事です。

クラシコムの仕事は社会においてどんな役割をもっているのか。

存在意義は何なのか。

どんな成果を社会に還元すれば存在が許されるのか。

最近僕がずっと考え続きてきたテーマです。

なぜそんな大仰なことを考えるようになったかといえば、会社が成長してくる中で「自分たちがこうなりたい!」という利己的な理由だけを掲げて事業活動をしていては、僕らの成功が僕らを囲む社会全体のメリットと捉えられなくなる日が来て、その存在や自由を許されなくなる日がくるのではないかという懸念からでした。

クラシコムの成功は社会全体の成功となるような僕らの存在意義を定義し、実際社会に有用な価値を還元しようとする姿勢を保つことがこれからの僕らには切実に必要だと感じています。

ここに来て表題の通りなのですが、我々の仕事は

「いごこちのよい暮らしかたを研究する仕事」

なのだと考えるととても腑に落ちるなと思い至りました。

いごこちのよい暮らしかたを研究し、その研究過程や研究結果を社会に還元することが僕たちの仕事の本質であり、社会の中で存在を許される理由なのではないかと思うようになりました。

これまでも、

「僕たちはメディア編集部のように仕事します」

「僕たちは出版社のように事業を展開してきます」

ということは公式に語ってきたことですが、この中では

僕らが「何をするか」「どうなりたいか」しか考えきれていなくて、それが実現した結果として会社の存在を許してくれている「社会」に対して何を還元しているのかが、考えきれていなかった。

でも、今でも何かを還元しているはずだとも思っていたのです。

ただいま会社を設立して10期目。お客様が増え、一緒に働いてくれる仲間が増え、お取引先様が増え、金融機関が貸してくれるお金が増えているのです。これはささやかにではありますが、社会から一定の信任が得られていることの、少なくともこの先信任できるようになりそうと期待されていることの表れであるに違いありません。

なぜクラシコムは社会から存在していいよ、もっと活躍してもいいよ、と言っていただけるのか。その理由は僕の勝手な解釈ですが、僕たちが事業活動を通じて「いごこちのよい暮らしかた」を研究し、様々な仮説をたて、実験的な取り組みを行い、その過程や結果を公にしてきたことがあるのではないか、そう思うようになりました。

僕たちはそれぞれの人にとってのそれぞれの「いごこちのよい暮らしかた」がどうしたら実現できるのかの間違いない方法を教えることはできません。それは研究者の仕事ではなく、教師や聖職者の仕事です。

研究者の仕事は「こうではないか?」と仮説をたて、それに基づいて実験を行い、その過程や結果を論文にして発表することです。

クラシコムの仕事も「いごこちのよい暮らしかた」の実現にこんなことが役に立つのではないか?というような仮説をたて、日々の暮らしの中で実践的な研究をし、実験を重ねて検証し、その過程や結果をコンテンツや商品作り、商品選びという形で発表する。そういう仕事だと思うのです。

僕らにとっての研究者のアウトプットである「論文」にあたるものは「コンテンツ」や、「商品」だけにとどまりません。僕たちの「働きかた」や「会社や事業の運営方法」も「いごこちのよい暮らしかた」の実現に役立つ研究のための「実験」であり、成果が「論文」として他者の役に立つ事例となっているべきだと考えます。

*使うと気分がよくなったり、便利で心が軽くなったりするような商品を研究して探したり、作ったりして紹介すること。

*美味しくて、安全なこころとからだの両方を喜ばせるような食べ物を研究してレシピコンテンツを作ったり、自分たちで作って商品化したりすること。

*自分にとっての「いごこちのよさ」を知るために、他の人はどんな時にいごこちのよさを感じているのかを研究し、インタビュー記事として発表すること。

*どんな表現、どんなサービス、どんな企画が多くの人に「いごこちがよい」と感じていただけるのかを研究して、「北欧、暮らしの道具店」というサイトで様々な実験をし、運営方法を磨き上げていくこと。

*暮らしと仕事、サービスを提供する自分とサービスを受ける自分、会社と個人の「いごこちのよい」関係を研究するために、実験的な働きかた、事業運営方法を試し、その過程を公にすること。

こうした活動全てが「いごこちのよい暮らしかた」研究所たるクラシコムの研究活動あり、僕らが社会に還元し得る価値そのものと言えるんじゃないか。たとえ今はそうなれていなくても、いつかそうなれるように取り組みがいのある定義なんじゃないか、そんな風に思っています。

また研究所にはたくさんの研究員がいます。そしてその研究員達はそれぞれにポストと役割を持っています。研究の方向性を決めたり、論文の執筆を担当する人がいる一方で、新人の研究員の人はひたすら地味な実験作業と記録作業を担うことで研究を支えていたりするかもしれません。

クラシコムという「いごこちのよい暮らしかた」研究所のスタッフもいろいろな仕事をしていますが、その全ての活動が「研究」を支える活動である以上、どんな仕事をどんなレイヤーでしていたとしても全員が「研究員」だと思います。

僕らの仕事は「いごこちのよい暮らしかた」を研究し、その過程や結果を社会に還元することで、それを望む一人でも多くの人が「自分の」いごこちのよい暮らしをつくることに貢献することです。

メディア化、パブリッシャー化の先にはラボラトリー化があるなと。

この新しい理解のもとに改めて自分たちが取り組むべきことは何か、集中すべきことは何かを考え直していきたいと思います。