2016.11.30

「適切な戦略は、高度な戦術を不要にする 」の事例

代表取締役社長 青木耕平
「適切な戦略は、高度な戦術を不要にする 」の事例

「適切な戦略は高度な戦術を不要にする」とか「高い戦術レベルを要求する戦いに参加してしまってる時点で戦略的に失敗している」

というような事を僕は良く話すし、自分が事業運営する上でおそらく最も気をつけている勘所だと思っているのだけれど、

「なるほどそういうことか!」

と誰でも理解できるような事例を示せずにいるばっかりに、突飛なことを言ってると言うような誤解を受けることがあった。

で、いろいろ考えた結果として僕が小学校五年生の時に記憶に残る限り最初に戦略的な成果を実感した体験の事例がシンプルであるがゆえに、この問題を解決するための事例として最も適当なんじゃないかと思うに至った。

以下、適切な戦略が高度な戦術を不要にした事例として読んで頂けたらと。

僕が小学校5年生のある日、ちょうどキャプテン翼が最も流行っていた頃、担任の先生の発案でクラス内でサッカーの紅白戦をやることになった。

男女それぞれを半分ずつに分けて紅白チームを作り、男子の紅白戦、女子の紅白戦をやると。

でその紅白チームにどうやって別れるかは先生の一声で

「好きな人同士で別れなさい」

ということに。

多くの方が大体想像つくと思うのだけれど、クラス内でサッカーが好きで上手い奴らはいつも一緒にやってるし、地元のクラブチームのチームメイト同士なんかもクラス内にいたりするので、「好きな人どうし」で子供たちが自由にチームを組んだ場合

紅組:サッカーのスキル上位半分

白組:サッカーのスキル下位半分

に別れるのは当然といえば当然のことだ。

担任の先生も今から考えれば全くもって愚かで、実際にそういうチームが組成されたところでさすがに技術的な差が圧倒的なチーム分けになってしまったことに気がついたのだろう

「誰か上手い子が一人紅組から白組に行きなさい」

みたいな事になった。

自分で言うのも恥ずかしいし、その後の僕を知ってる人からすればとても信じられないかもしれないが、僕は小学校の時は学校の代表として陸上大会に出場したりするぐらい足も早く、毎日朝5時おきして友達と学校の校庭でサッカーの練習をするほどサッカー少年だったこともありおよそ20人強のクラスメイトがいる中ではベスト5くらい(上位20%くらい)の位置にいることを自他共に認める感じだった。

で、何故だか僕がその流れで「紅組から白組へ」放出されることとなった。先生の指名だったのか、僕がなんとなく仲間内で疎まれていたからだったのかは、今となっては正確に思い出せない。

いずれにしても当時の僕はその決定にマジ泣きするぐらい不本意だったが従わなければいけなくなったわけだ。

当然やる気ゼロ。

っていうか白組自体が「どうせ負けるし、恥かかされるだけだし」みたいな厭世的な雰囲気が濃厚で、チーム全体としてやる気ゼロ以下な感じだった。

ただ大会当日が近づくに連れ、サッカーの上手い奴らが集まった紅組は自分たちで集まって「秘密練習」なるものを開催しては、ついこの間まで仲間だったはずの僕に

「すごい技を練習してるけどお前には教えてやらない」

みたいな事を言って当てこすってくるようになる。やっぱり嫌われていたのかしら。。

このへんから僕の中に猛烈な反骨心というか、絶対負けたくないとか、見返してやりたいという気分が沸き上がってくる。

で、ようやく話しの本題に入るんだけれど、当時はもちろんそんな意識はさらさらないが、今振り返ると実に適切な戦略構想とその実現に取組むことで、サッカーなんて好きでも得意でもない奴らだけの白組を勝利に導くことができた。

どんな戦略だったのか。

まず以下の前提条件を共有する。

*オフサイドの概念は存在しない
→サッカーに詳しいわけでもない女性の担任教師が一人でジャッジをするし、子供たちもオフサイドの概念を理解していなかったため。

僕がまず考えたのは
「引き分けに持ち込めれば相手を半端無く悔しがらせることができるだろうな」

ということ。

相手は僕達白組を徹底的に舐めて馬鹿にしてて、日頃から

「何点差つけれるかな~」

なんて言って僕らを揶揄してきていた。

彼らにとっては勝って当然で、興味はむしろクラスの女子の前でどう自分がかっこよく活躍するかというところにあったように思う。

なのでたとえ引き分けたとしても僕らは自分たちのリソースを考えれば十分結果に満足して溜飲を下げる事ができるし、紅組は半端無く悔しがるだろうと考えたのだ。

その時点で「勝利」の定義が

「同点でOK」→「スコアレスドローでもOK」となり

勝利の十分条件の中から「得点をあげること」が排除されたため、シュート、フリーキック、ドリブルその他サッカーにおける殆どの戦術的スキルは不要になった。

勝利の十分条件を戦略的に「得点させないこと」だけに絞ったことで、白組の乏しいリソースをその条件を満たすことに集中して投下する事ができるようになった。

で、実際「スコアレスドロー」を狙って得点させない事に全てのリソースを投入するという戦略の大枠の構想が固まったところで、それを実現するための「作戦」の立案と、「作戦」の成功のための「リソース配分」という仕事に手を付けた。(もちろん当時は全くそんな意識はないですw)

僕が考えた「作戦」とその作戦のためのリソース配分はこんな感じ。

1.一人を除く10人は自陣から一歩たりとも出てはならない。

2.キーパーを除いて下手な順に一列目、二列目、三列目に並べる。つまりポジションでいうと最後列に最も上手い奴が来るようにした。

3.自陣にいる10人はボールに触れる機会があったら、全てタッチラインに向かって大きくクリアする。ドリブル、縦方向へのクリア、キープ禁止。

*例えタッチラインの1m以内の場所でボールに触る機会があっても瞬間的に大きくクリアする。

*ボールを蹴ること自体が下手なので縦方向へのクリアはよほど相手との距離がある場合か、前述した3列目のポジションに入ったチームの中では上位のスキルを持ったもの以外には許可しなかった。

4.チーム内で一人だけは相手陣内のゴールそばに常時張り付き、どんなことがあっても自陣に帰ってきてはならない。

*コーナーキック、フリーキックが発生してもその一人がわざとクリア

*サッカーは上手くないけれど足は速かった石川君を配置

意識したのは

1.ボールを蹴ること自体がヘタな奴らが、ミスキックをしにくい戦い方、ある程度ミスしても決定的な場面になりにくい戦い方。

2.元々体力が乏しいチームメイトがあまり走る必要がない戦い方。

ということだ。

ここまでのところ

1.我々にとって「勝利とは何か」→「スコアレスドロー」

2.勝利の十分条件は何か「得点を入れさせないこと」

3.得点を入れさせないための適切な戦い方(作戦と兵站)の立案とポジション配置(リソース配分)

この3段階までが所謂「戦略」を定める仕事だ。

そして「戦術」とはこの勝利の定義を実現することを目的とした作戦を実行する上で、試合中に個人としてあるいはチームとして直面する様々な局面において発揮すべき技術のことだ。要はこの場合個人としての体力やドリブル、シュート、パスの技術だったり、サッカーのセオリーを理解して個々人が動けるチームとしての能力のようなものが含まれるだろう。

なので戦術レベルを高めるためには、長い時間の練習の積み重ねによる個人としてチームとしての研鑽が求められるため、高いコストの支払いが必要になる。

僕が構築したこの時の「戦略」は、勝利の定義を「スコアレスドロー」に設定しそのために全てのリソースを「得点を入れさせない事」のために投入し、戦術的能力を可能な限り不要にする作戦と兵站を立案したことで、そもそも戦術レベルの差が圧倒的な相手と戦術レベルの戦いをしない(戦術レベルの差を無意味にする)ことを目的としていた。

繰り返すようだが、この時に僕はそんな分析はできていない。子供ながらに勝ちたい一心でいろいろ考えた結果でしかなく、上記の内容はあくまで後講釈である。

で、そんな戦略を持って臨んだ決戦の結果はどうだったかというと

なんと想定以上の結果で2対0で僕たち白組が勝ってしまったのだった。

とにかくボール持ったら「おもいっきり」タッチ方向にクリア、っていうのが相手にとって相当イライラと体力消耗(スローインする奴がボールを走って取りに行くので)の原因となった上に、一人を除く全員が引いた状態に対して、紅組もキーパー以外の全員で攻めてきたため、稀に縦方向のクリアが発生した時にゴール前にいる石川くんが奇跡的に得点してしまうってことが2回も起きてしまった結果だった。

結局僕らは勝つことができたわけだが、本題と関係ない話をすると個人的には全くスカッとせず、後日紅組の連中に呼び出されて「卑怯者」だということで殴られるなどろくなことにならなかったのだった。

しかしこの小学生の幼く、矮小な事例がまさに戦術的弱者が戦略レベルで相手を圧倒することで、戦術的な高度さをそもそも必要としない戦い方をして勝利したわかりやすい事例なのかなと思い、こんなに長々と書き連ねることになってしまった。

もしこの長い文章を最後まで読んで下さった方がいらっしゃったら、そのことに心から御礼を申し上げますw