2023年8月にクラシコムのグループ会社として加わった「foufou(フーフー)」。2016年、デザイナーのマール・コウサカさんが文化服装学院在学中にハンドメイドのEC販売から始めたファッションD2Cブランドです。
「健康的な消費のために」をコンセプトに、コンテンツやSNS発信を駆使しながらプロダクトに独自の世界観を纏わせて大きな支持を獲得しています。
▲クラシカルでタイムレスな独特の世界観を持つfoufouの商品
▲グループジョインのプレスリリースより。 左:クラシコム副社長・佐藤 中央:foufouコウサカ 右クラシコム代表・青木
2024年7月にはオンラインストアをリニューアルするなど足元を整えながらも、ドローンで撮影した書道家によるパフォーマンス動画を公開したり、Xでスタッフの着用写真の投稿が驚くほどの反響を生み出していたりと、私たちも驚くような展開を見せてくれるfoufou。
ジョインからまもなく1年、foufouがクラシコムグループに加わったことでどのように変化したのか、代表のコウサカさんに話を聞こうとすると「僕よりもマネージャーたちに聞いたほうがリアルな話が聞けると思います!」と返ってきました。
そこで今回は、foufouを支える3名のマネージャーに1年の変化について話を聞いてみます。
写真左から
生産管理チーム マネージャー 山田(4年目)
商品の生産から納品までのスケジュールや品質管理を担当。最近はコンテンツ制作も小松と一緒に担当している。
バックオフィスチーム マネージャー 神田(7年目)
人事総務とシステム関連を中心に、営業と生産管理に当てはまらない仕事を幅広く担う。以前は生産管理チームのマネージャーを担当。
営業チーム マネージャー 小松(4年目)
営業チームで販売計画の立案から売上分析を担当。オンラインストアの全体の管理と実店舗の運営、コンテンツ制作も行う。
foufouのカルチャー
余力をつくって、健やかに働きたい
–– この1年でさまざまな変化があったと思いますが、まずはfoufouのカルチャーについて教えてください。みなさんの働き方には、何か共通する考え方がありますか?
神田:もともとfoufouには「できるだけ作業を効率化して、自由になりたい」という思いがあって、それぞれの働き方に反映されていました。それがこの1年で、より実現できるようになった気がします。
–– 「健康的な消費のために」というブランドのコンセプトにも重なりますね。
神田:みんなの中に「健康的に働きたい!」「もっと自由になりたい!」というモチベーションがあるのかもしれないです。
小松:確かに、可能なかぎり効率化して手を動かす時間を減らして、自由に考える時間をつくりたい気持ちがあります。いま自分が担当している仕事も、新しい仲間が増えて、いずれ誰かにバトンを渡して、組織図もどんどん変化するのかなー、なんて想像するとワクワクします。
–– 自分の仕事やポジションを人に渡したくない、みたいな気持ちはない?
山田:言われてみれば……ないですね。「この仕事をお願いします!」と言われたら「はい、やってみます!」というかんじで。私も最近は生産管理以外にコンテンツ制作も担当するようになりました。
こっちですか?の積み重ねで解像度を上げる
–– 公にはマールさんが出てくることが多いのかな、と感じていますが、普段のマールさんとマネージャーのみなさんのやりとりは、どんなかんじでしょう。
小松:仕事の大きな方針はコウサカさんが決めますが、それはとても漠然としていることも多くて。
コウサカさんの「こんなことしたい!」というアイデアに「こんなかんじですか?それともこっちですか?」とあれこれ選択肢を提案しながら、かたちにしていきます。ときには「こっちのほうが良いと思います!」と別の案を提示して「いいね!そっちでいこう!」と決まることもあって。
神田:バックオフィスも同じです。例えば「採用活動をしよう」とコウサカさんが決めてくれるのですが、実際に募集に必要な情報を調べたり告知のたたきをつくったり、実現するための方法は、私が中心になって模索していきます。
クラシコムにジョインして会社としてのルールを策定するとなった際も、コウサカさんに意思決定はしてもらいましたが、具体案は現場が中心となって考えました。
–– コンテンツも同じようにつくっているのですか?
山田:そうですね。SNSにアップする動画を撮影するときも、コウサカさんからピックアップする洋服と動画のキャッチコピーが出てきますが、そこからコウサカさんとイメージをすりあわせて、場所やスタイリングなど具体的につめていきます。
–– では、商品開発も?
小松:はい。スケジュールや生産数など、コウサカさんに要件を伝えるとデザインが出てきます。それに対して生産管理の山田を中心にみんなで意見を出しながら「こうですか?」と確かめていきます。
山田:コウサカさんのデザインは写真とテキストが中心なので「具体的にはこんなかんじですか? 」と私たちから提案することもあります。
–– こういう流れは、一般的な洋服のデザインの進め方なのですか?
小松:あまり一般的じゃないかも、です(笑)。最終的に、コウサカさんからパタンナーへデザインを説明して仕上げていくのですが、そこでも「こうなっちゃうけど大丈夫?こうしたほうがいいかもしれないよ」とパタンナーからアドバイスをもらうこともあるんです。
–– みんなでマールさんから出されたクイズを解くようにしてかたちにしていくのですね。
小松:以前はコウサカさんの中にもう少し細かなリクエストがあったような気がするのですが、だんだんとチームが成長して信頼が積み重なって、最近では「こっちかな?」「こっちがいいかもね!」とコミュニケーションしながら解像度を上げていくような仕事の進め方になりました。
クラシコムに加わってからの変化
–– ここからは、この1年の変化について詳しく聞いてみたいと思います。
1.倉庫移転やシステム開発など「物流・システム」の変化
–– 1年前、最初にトライしたのが倉庫の移転でした。
神田:はい。2023年夏に自社倉庫から委託倉庫へ引っ越したのですが、すべての商品を整理しなおしてデータベースをつくり、商品情報の照合を人力からバーコード管理に変更しました。
まずはクラシコムの物流やデータ分析を統括している高尾さんと、クラシコムのシステム開発を協業しているソニックガーデン社、そして倉庫、3者とすり合わせながら要件定義をして、急ピッチでfoufouの基幹システムにあたる「benri(べんり)システム」を開発しました。
–– べんりシステムですか?
神田:システム開発のキックオフミーティングで「名前はどうしよう?」と議題があがったとき、コウサカさんが「便利だから名前もbenriシステムにしよう」と(笑)。
–– なるほど(笑)。benriシステムができて、倉庫を引っ越して、現場は変化しましたか?
山田:生産管理においては、人力作業が減ったり、細かく数字を追えるようになったりしたことで、日々の業務負担が大きく削減されました。
小松:引越し後に倉庫で出荷するところを見たときは、とても感動しました。当たり前ですけど「バーコード管理ってすごくスムーズだなぁ」と(笑)。
倉庫の移転が決まったときは「商品情報を全て変えるのか!」「どこから着手すればよいのだろう」と先が見えなくて不安もあったのですが、高尾さんと神田を中心にどんどん環境を整えてくれて。
▲写真右:クラシコム 執行役員、ビジネスプラットフォーム部 部長の高尾
今ではもう「昔からbenriシステムで運用しています!」というくらい業務に馴染んでいて欠かせない存在です。
2.データ分析や販売方法など「経営管理」の変化
–– 経営管理の面でも、各部門にクラシコムからアドバイザーがアサインされました。
神田:オンラインストアのリニューアルをクラシコムのデザイナーと一緒に進めたり、クラシコムの法務に気軽に相談できる体制をつくってもらったり。「このまま進めて大丈夫かな?」と悩む場面で頼れる相手ができたことが何よりも心強いです。
山田:生産管理も、クラシコムを通じて紹介してもらった企業を通じて、品質管理について相談できる環境が整ったので、ますます安心して作業できるようになりました。
–– クラシコムの併走もあって、これまで以上に安心して仕事を進められるようになったのですね。さらにこの1年で、売上管理体制も見直しました。
小松:はい。売上管理についても高尾さんにアドバイスをいただきながら改善を進めました。まずは実績を記録する習慣をつけるところからのスタートです。
–– 日々の分析はどのように行っていますか?
小松:週1回、高尾さんに相談しながら「数字の読み解き方」を教わっています。数字から現状を正しく把握し、予測を立てたり、予測と実績の差分を見てなぜそういう動きをするのか考えたり。
高尾さんはアパレルの専門家ではないので、私が立てた予測に対して「どうしてこうなるの?」と、それが肌感の数字なのか実績ベースの数字なのか、冷静に指摘をしてくれるのが新鮮です。
コウサカさんも「数字は国語の読解問題のように見るといい」とよく言っているので、今はデータから何が起きているかキャッチする方法を学んでいる感覚ですね。
–– この1年で販売方法にも変化がありましたか?
小松:ありました。例えば需要予測を立てられるようになったことで、販売方法を予約中心から在庫中心に変更することができました。
予約販売は、注文からお届けするまでの期間をできるだけ短くしようと思うと限界がありましたし、生産に負担がかかる方法でもありました。メイン商品を在庫販売に切り替えたことで、お客さまにも誠実で自分たちにとってもより健康的な販売方法が整ったと思います。
3.オフィス移転や就業時間など「働く環境」の変化
–– オフィスもクラシコムのある国立へ移転しました。
小松:国立のオフィスに移転したことで、クラシコムのスペースを借りて即売会や試着会などリアルイベントをカジュアルに開催できるようになったことも、大きな変化のひとつです。
会場準備の手間が減り、最小限の準備と本社スタッフだけで運営することができるようになったことで、お客さまの動向を観察してお客さま像を具体化するハードルがぐっと下がりました。
–– 発売開始時間を原則21:00から業務時間内の15:00に変更するトライもしていますね。
小松:はい。販売時間の変更でスタッフも夜間に稼働する時間が減り、また一歩、健やかな働き方に近づけたような気がします。
ただ発売時間の変更はSNSでの配信時間も変更することになるので、売上にマイナスの影響が出るのではないかと不安もありました。ですがfoufouのお客さまがついてきてくれることを信じて変えてみたところ、売上は大きく落ち込むこともなく、私たちの売上がSNSの配信だけで担保されているのではないという新たな気づきを得ることもできました。
余力が生まれた結果、新企画も続々「PR」の変化
–– 近ごろ、新しいコンテンツやPRの取り組みも増えていますね。海外モデルを起用した新ルックや、Instagramではニュース速報風の動画も…….!
山田:全体的に効率化が進んで余力が生まれた結果、PRも以前よりも自由に、ますます注力できるようになったと思います。最近、コウサカさんから「時間が空いたから撮影にいこう!」と誘われることも増えました(笑)。
–– 今年は夏に真っ赤なワンピースをつくる企画「夏をドラマチックに纏う方法(夏ドラ)」も2年ぶりに帰ってきましたね。
小松:高校生の書道パフォーマンス見て感動したので、コウサカさんに「今年の夏ドラ企画の動画は、書道パフォーマンスでどうですか?」と提案したら「いいかも!」と盛り上がって。その後、書道家の香寳/KOHOさんがfoufouのInstagramアカウントをフォローしてくださっているのをみつけたのでお声掛けして、今回の動画企画に至りました。
–– 企画のアイデアは、小松さんが発端だったのですね!
これからのfoufouについて思うこと
–– 数年先には、みなさんまったく違うことにチャレンジしているかもしれませんが……!最後に、それぞれがこれからについて思うことを教えてください。
山田:不要な無理はせず、これからも長く仕事を続けたいです。
神田:自由度が上がって、働き方もさらに柔軟になって。環境が変わったことで、今までと見える景色ががらりと変わったように感じています。
昔からfoufouを応援してくださっているお客さまにとっては、自慢したくなるブランドになれたら嬉しいですし、一方で、昔と同じやりかたでは出会えなかった新しいお客さまとお会いできることも楽しみです。
小松:この1年で環境が整って、新しいことにチャレンジできるようになりました。とはいえ、まだまだ一人ひとりの仕事の負担は大きいので、改善を重ねて業務を分散していきたいです。今度はそこにかけていた時間を使って、一つひとつの仕事のクオリティを上げられるのかと思うと、明るい未来しか見えません。1年前よりも未来が楽しみです。