データだけでは辿り着けない顧客理解のために。お客さまインタビューの目的と実施方法【北欧、暮らしの道具店の裏側】

書き手 クラシコム 馬場
データだけでは辿り着けない顧客理解のために。お客さまインタビューの目的と実施方法【北欧、暮らしの道具店の裏側】

クラシコムの仕事の裏側や大切にしている考え方などをお伝えしている「北欧、暮らしの道具店の裏側」。今回のテーマは、当店が実施している「お客さまインタビュー」について。購入体験をお客さまからくわしく聞くことで、どのような効果が生まれるのか。プロダクトマーケティンググループの白木と佐成に、どのようなポイントを大事にしながら実践しているのか聞いてみました。

写真左:白木  右:佐成

インタビューの目的は「お客さまを理解すること」

–– お客さまインタビューはいつスタートしましたか。

白木:UXリサーチのためのインタビューは、2021年に始まりました。それ以前にも、オフィスに4〜6人のお客さまを招いて、交流を目的とした座談会を行っていたようです。

–– お客さまインタビューの目的や実施方法について、くわしく教えてください。

白木:1回60分ほどかけて、リモートでひとりのお客さまにヒアリングを実施しています。さまざまなお客さまを理解するために、インタビューごとに目的を設定しています。

佐成:当店のオリジナルアパレルを未購入のお客さまにその理由をお聞きしたり、逆に購入経験のある方に購入動機をお聞きしたこともあります。このときは、オリジナルアパレルの開発担当にも同席してもらいました。現在は不定期で、だいたい月2回ほど行っていますね。

データではわからない「暮らし」が見える

▲ 店長・佐藤が同席することも。写真は、お客さまインタビューをする佐藤をテレビの取材班が撮影しているところ。

–– 画面越しで、お客さまと距離を縮めるために心がけていることは?

佐成:直接的にお伝えしたことはありませんが、少しでもお客さまに親しみを感じていただけるよう、インタビューでは、なるべく当店のオリジナルアパレルを着るようにしています。

白木:お客さまの大切な時間をいただいているので、なるべく楽しんで帰ってほしい。当店を好きだとおっしゃってくださる方が多いので、もっと好きになってほしい。そんな気持ちでお話しています。

–– リモートで行うメリットがあれば教えてください。

白木:お客さまが「こんな使い方をしています」と日常の一部を見せてくれたり、お部屋に当店で購入したものが並んでいる様子を見せてくれたり。商品の購入履歴はデータからもわかりますが、お客さまの暮らしのなかで商品がちゃんと使われていることを実感できるのは、リモートならではの良さかもしれません。

「質問リストに沿っての一問一答」はできるだけ避ける

–– インタビューの依頼から実施までの流れを教えてください。

白木:年2回ほど行っている「お客さまアンケート」で、協力可能と回答されたお客さまの中から、目的に合った方へお声かけしています。お客さまには事前に私たちが購入データを見ていることをお伝えしているので、「当店での購入体験に関して伺います」と概要のみをお伝えし「これを購入したときはどうでしたか?」といった尋ね方でヒアリングを進めます。

–– あらかじめ質問リストを用意していますか。

白木:目的にまつわる質問をいくつか用意しますが、リストに沿ってひとつずつ質問するような流れは避けています。お話を聞きたい気持ちが先行すると、一方的な面接のような空気になってしまうので、ひとつの質問から、お話をふくらませていくイメージで進行します。

–– お客さまと当店の出会いから現在までの関係の変化を「ジャーニーマップ」にまとめることも試されていましたね。

白木:はい。お客さまの話を元に当店との関わり方を年表のような形式でまとめ、それを一緒に見ながらお話してみました。当店との関係性の変化がわかりやすく、お客さまがエピソードを思い出しやすくなり、深いお話が聞くことができました。これはオンラインだからこそ思いついた方法かもしれないです。

深堀りしたい話にきちんとリアクションする

–– インタビューの進め方で、最近変えたことはありますか。

白木:外部のアドバイザーに入っていただいたことで、真意をつくような質問も、はっきりと聞いても大丈夫なんだ、というのがわかったのは大きかったです。お客さまの期待を裏切らないようにしなくてはという思いから、うまく聞き出せない質問もあったので。

佐成:例えば「なぜこの商品を購入しないのですか?」といったストレートな質問も、外部の方がインタビューしている様子を見ることで、お客さまを残念な気持ちにさせずに聞き出すにはこうしたらいいのか、と新しい気づきを得られました。

–– お客さまと会話するうえで気をつけていることは?

白木:気になることには、すかさず「その話、すごく興味深いです」とお伝えすることです。お客さまの多くは、当たり前のことだと思って、さらりと質問に答えてくださるのですが、それが「大きな改善の種」ということも多くあります。なので、深く話していただきたいときは「貴重な話をいただいている」「役に立っている」ということを、きちんと伝えるようにしています。

会社全体に「お客さまへ聞く」という選択肢が生まれた

–– インタビューのデータをどのように活用していますか。社内におけるポジティブな変化があれば教えてください。

佐成:会社全体の学びや改善に繋がるよう、毎回録画データをSlackで共有しています。なるべく多くのスタッフに活かしてもらえるよう、共有する際には、そのインタビューの見どころも添えるようにしています。

白木:マーケティングへの活用はもちろんですが、会社全体がお客さまを理解することで、「北欧、暮らしの道具店」という場所における「より良い体験」を考えやすくなったり、改善の精度が上がったりするのではないか、と考えています。

結果的に、ほかのチームでも何か知りたいことがあったとき「お客さまに直接聞いてみよう」という選択肢が生まれたような気がして、インタビューが全社の選択肢として根付きはじめたことは、ポジティブな変化だと感じています。

–– データを扱う上で、気をつけている点は?

白木:直接お話するとその意見の印象が強くなりますが、あくまでn=1であることは忘れないようにしています。ひとりの方がおっしゃっていたことをヒントに、それが多くの人にとっても良い改善となるという裏付けをデータで確かめたり、同じようなインタビューをいくつか実施してから、改善に活かすようにしています。

「信頼」が醸成されるステップを探っていきたい

–– インタビューを重ねていくなかでの気づきや、これから知りたいことがあれば教えてください。

佐成:最初の頃、「購入頻度が低いお客さまは、当店への接触頻度も低いのではないか」という仮説のもとインタビューを始めたところ、ほぼ全てのお客さまの接触頻度が高いことがわかりました。購入とは関係なく見にきてくださる方がたくさんいらっしゃるということ、「北欧、暮らしの道具店」がとても愛されていることに、気がつきました。

白木:なぜ「北欧、暮らしの道具店」との接点が深まったかをお聞きすると、多くのお客さまから「信頼」というキーワードが出てきます。あるお客さまは「好きな店員さんのいるなじみのカフェみたいに、信頼しています」と教えてくれました。当店に対する「信頼」がどんなステップで醸成されていくか、今後のインタビューを通じて、探ってみたいです。

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