SNSで手を止める「伝わる動画」を目指して──「北欧、暮らしの道具店」動画制作の裏側。

書き手 クラシコム馬居
写真 岩田貴樹(3、4枚目を除く)
SNSで手を止める「伝わる動画」を目指して──「北欧、暮らしの道具店」動画制作の裏側。
「北欧、暮らしの道具店」では、コラムや特集などの「読み物」を毎日更新しておりますが、さらにお客様との接点を増やしたいという想いで、昨年からは本格的に「動画」「ラジオ」に挑戦しています。

本日ご紹介するのは、その「動画」を作っているチームです。

約1年前にこの動画の作成を任されたのは、普段は「読み物」や「商品ページ」を作っている編集グループ。文章を書いたり、写真を撮ったりということはありながらも、動画制作は全くの素人でした。

まずは気軽なスマートフォンの動画アプリからはじめ、段々と機材を整え、トライアンドエラーを繰り返しながらコツコツと改善を積み重ねてきました。

そして最近発売した新商品の動画がこちら。



そのほかにも、今では「BRAND MOVIE」というスポンサードコンテンツメニューも提供させていただいております。

「北欧、暮らしの道具店」が目指す動画とは?

1年の試行錯誤を経て、やっと言語化できるようになってきた気がします。一歩一歩、今日まで進んできた過程と共にお届けします!

みんな素人!ゼロから始めた動画制作

──今日は動画制作チームのお話を伺いたいと思います。まず、動画チームの構成について教えてください。

二本柳
動画チームは、普段は商品ページや読み物を作る「編集グループ」で構成されています。

もともとは、私ともう1人のスタッフの2人で約1年前に始めたのですが、彼女が産休に入ることが決まったので松浦さんがジョインしました。その後、田中さんがクラシコム初の動画制作を目的に募集した採用で入社し、今はこの3人体制です。

私はディレクターとして企画やコンテ、編集のチェックに携わり、実質的に手を動かして動画を作ってくれているのは田中さんと松浦さんの2人です。


左:田中 中央:松浦 右:二本柳

──つまり、田中さんが入るまでは、誰も動画制作の経験もなかったんですね。

松浦
なかったですね(笑)。

──そもそも、どういったきっかけで「北欧、暮らしの道具店」で動画を作ろうということになったのですか。

二本柳
実は商品を紹介する動画は、2015年頃から始めていたんです。写真やテキストよりも、動画のほうが伝えやすい商品を紹介しようと。

でも、このチームで私たちが作ろうと思った動画は、ちょっと意味合いが違います。

「北欧、暮らしの道具店」のお客様は、商品を買うためだけではなく、毎日更新しているコラムや特集などの「読み物」を入り口に訪れる方がたくさんいらっしゃるんですね。その入り口をもっと増やしたいと思っていたんです。昨年始めたラジオもそのひとつです。読みたい方、聴きたい方、観たい方、それぞれが、その時の気分によって選べるといいなと思いました。

──それを、動画は全くの素人だったみなさんが始めたわけですね。

二本柳
そうですね。最初はとにかく「今の私たちができる動画って何だろう」ということを知りたかったので、なにはともあれ「作ってみる」ことにしました。

編集業務と兼任のため、かけられる工数を月4日と決めて、最小工数からスタートしました。一番着手しやすいiPhoneで撮ったり、気軽な無料動画アプリを使ってみたり。走りながら必要な道具やアプリを学んでいく、試行錯誤の毎日でした。


現在産休中のスタッフ岡本と松浦。動画編集中の様子。

──機具や動画のクオリティも気になるけど、まずはとにかく始めて模索していったということですね。

二本柳
そうですね。実際に自分たちの手で作ってみないと、「何が分からないのか」も「分からない」状態だったので(笑)とにかく、ゼロベースで、自分たちのできる範囲で動画を作って公開してを繰り返していました。

でも、こういうやり方ってすごく私たちらしいなと思っているんです。「北欧、暮らしの道具店」の編集グループのメンバーは、編集経験もないまま入社してきた人がほとんどなんです。それでも、自分たちでやり方を探して、ここまでやってきました。動画も同じ道を辿っていますね。

「響く動画」を作るために、技術よりも大切にするべきこと

──そして、経験者の田中さんも入社して本格的に始動したわけですね。

二本柳
そうですね。田中さんは、私たちが手探りでやっていた作業に『この作業は「企画コンテ」といいます』とか、『ここからは「オフライン編集」ですね』と共通言語を作るところから整理してくれてとても助かりました。

田中
前回あれやってよかったよね、みたいな思いつきで動く部分は改善できましたね。

松浦
今までつかってた脳みそにちょっと余白ができて、より私たちが作りたい動画にこだわってチャレンジできることがすごく増えましたよね。

──作りたい動画というのは、具体的には?

二本柳
最近、その自分たちが作りたい動画って何だろうということを言語化できるようになってきたんです。それは「伝わる動画」なんじゃないかなと。

──「伝わる動画」ですか。

二本柳
思えば、私たちはこれまで商品をサイト上で紹介する際に、売る側が伝えたいポイントと、お客様が日常の中で困っていることと、その二つが繋がるポイントを探すところから始めていたんですね。つまりお客様が「共感」できるポイントを探す。

それが動画となると、どうしても綺麗な映像で商品の良さを余すことなく伝えたい!と思ってしまっていました。でも、どんなに綺麗な映像でも、どんなに素晴らしい技術をもってしても、一方的なメッセージでは響かない、伝わらないと気づいたんです。

つまり、「動画」もテキストと写真で構成された「商品ページ」も同じなんじゃないかと。大切にするべきことは、お客様が共感できる、観たいと思える理由がある動画かどうか、ということ。それが「伝わる動画」なのではないか、と。


「北欧、暮らしの道具店」商品ページ

「伝わる動画」を作るためのステップは?

──では、実際の動画制作はどういった流れで進めるのですか?

松浦
まず「伝わる動画」を目指すべく、商品のスペックや、オリジナル品なら開発意図をホワイトボードに箇条書きしていきます。その隣に、お客様(私たち)の課題を具体的に挙げていく。そこがつながるところを「共感ポイント」として設定して企画を検討します。

そのあと、私と田中さんがそれぞれ企画コンテを作り、撮影し、編集します。分担するのではなく、各自が1本の動画制作の全てを行います。

──全ての工程を一人一人が行うのですね。

松浦
そうです。撮影は得意な方がするということも考えたんですが、お互いに1本ずつ作ってフィードバックを重ねるほうがインプットがあるなと思い、今はこのスタイルに落ち着きました。

2人で同じように日々試行錯誤しているので、共通言語ができてくるというか、イメージの共有もどんどん早くなってきて、とても嬉しいし、楽しいです。

田中
たしかに、私たち、すごく話しますね。

二本柳
動画の撮影や絵コンテなど、一部の業務は外部の方にお願いするという選択肢もありました。でも、初めからそうしてしまうと、ノウハウが自分たちにたまらないんですよね。

「読み物」も、今でこそプロのカメラマンさんにお願いすることも多いのですが、最初はみんな自分で撮って、レタッチして、記事に入れて、ということをしていました。その経験があるからこそ、プロのカメラマンさんにお願いするときも自分の意見を持つことができる。そういう意味で、下手でも、間違っててもいいから、まずは全部自分たちでやってみるということを大事にしたいんです。

──実際作ってみて、テキストや写真で作るページと動画の違いは感じますか。

松浦
動画はテキストや画像よりも、もっと私たちが描いていることをダイレクトに伝える事はできるのかもしれませんね。ただ、それは同時に嘘がつけないとも言えます。

写真は構図や撮り方である程度良い感じにできるのですが、動画は少なくとも今の私たちの技術ではごまかすことが難しいんです。たとえ映らない部分でも、その空気が伝わってしまったり。ですから撮影する際には、空間全体の隅々までこだわる必要があると感じます。

二本柳
私たちの動画はSNSで観ていただく機会が一番多いので、引っかかりがないとスルーされてます。最初の5秒でお客様に自分とつながりのある動画だと思ってもらわないと、手を止めてもらえないんです。

さらには、やっぱり最後まで観て欲しいので、30秒の動画なら30秒間「没頭」してもらわないといけない。このシビアな条件をクリアするためには、とことんこだわらないと、と思いますね。

目先の結果より「今、挑戦するべきこと」に集中して

──お客様からの反応はどのように図っているのですか。

二本柳
私たちはECサイトなので、ありがたいことに「売上」というものが一つの指標になります。動画って、再生回数とか視聴率とか、指標は色々あるとは思うんですが、良い動画だったのかということはいまいち計りづらいと思うんです。でも、商品がちゃんと買ってもらえたということは、何かしらお客さまの「心に触れて」「行動につながった」ということだと思うので。

松浦
良い動画は、社内のテンションでわかったりもしますよね。つい声をかけたくなるくらい、心を動かしたんだって。

──ほとんどの社員が「元お客様」というクラシコムだからこその指標ですね。

二本柳
そうだと思います。販売にしても、声をかけたくなるということにしても、何かアクションを起こさせるというのは、それだけ心を動かしたのかなと。

でも、「これなら『北欧、暮らしの道具店』らしいと言えるかも」と思えるスタイルを見つけるまでに1年かかってしまったから、今は検証するだけの数が足りない。次は、数をきちんと作っていくフェーズになるかな。ストックを増やせば、傾向も見えてくるはずです。

──どんどん進化していくんですね。

二本柳
進化というか、今はそういうフェーズなのかなと思うんです。

最初の「とにかくやってみよう」というチャレンジの時期は、できることとできないことを知るフェーズ。そのあとに世界観を模索した時期は、「北欧、暮らしの道具店」がつくる動画はこういうものという「らしさ」を作るフェーズ。それを経て、今は「伝わる」ということに集中したり、数を増やしたりできるようになりました。

つい、反応の良し悪しで一喜一憂してしまうのですが、「今、わたしたちは何にチャレンジしてるのか」ということをチームで確認しあうようにしています。そのチャレンジに対して、結果がどうだったか、何ができて、何が足りなかったか、という振り返りを大切にしていきたいです。できてるかどうかはわかりませんが、希望としては、そうしたいですね。

──そして今のフェーズは、動画の制作数を増やしていくというところですかね。

松浦
そうですね。月にこれだけ作りたいという目標数にむかって。まずはある程度のパターンを作りたいですね。これからも田中さんとお互いにいろんな挑戦をして、チームでたくさん話をして改善していきたいです。

田中
多くのアウトプットをして、そこからインプットを得て、をたくさんできたらいいですね。

二本柳
きっと二人なら大丈夫です。

──楽しみにしています!


がんばります!


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