「イタリアで売っていそう」がカギ。20周年を迎えるオリーブオイルBOSCOが大切にする「らしさ」って?

書き手 忠地 七緒
写真 忠地 七緒
「イタリアで売っていそう」がカギ。20周年を迎えるオリーブオイルBOSCOが大切にする「らしさ」って?
「暮らしを支えるロングセラーブランド」は、わたしたちの生活に身近な商品にスポットをあて、その愛され続ける理由を紐解く連載シリーズです。

連載第5回目に登場するのは、オリーブオイルのBOSCO。

イタリア生まれ、でも内に秘める心遣いはどこまでも日本ブランド。味とらしさをどこまでも大切に、今もなお変化し続けるBOSCOの思いにせまります。


吉村 和馬さん
日清オイリオグループ株式会社 食品事業本部 商品戦略部 家庭用グループ
2003年、日清オイリオグループ株式会社へ入社。約10年間、食用油の研究に携わったのち3年前、食品事業本部に異動、BOSCOの担当に。現在は食品企画開発や品質への対応、オリーブの購買までBOSCOに広く・深く携わっている。BOSCOのおすすめの楽しみ方は、納豆にかけること。

イタ飯ブームがきっかけ。オリーブオイルがレストランから家庭に

——まず、BOSCOが生まれたきっかけを教えてください。

吉村和馬さん(以下、吉村) 1990年代にイタ飯ブームがありました。当時は海外製のオリーブオイルを日本に輸入してレストランで使うのが主流でしたが「日本のマーケットにふさわしい本格的なオリーブオイルを発売したい」と社内で気運が高まり、1996年BOSCOが誕生。昨年、20周年を迎えました。

——20周年ですか!おめでとうございます。BOSCOの開発時、何か苦労されたことはありますか?

吉村 そうですね。やはり、現地イタリアでの言葉や文化の壁でしょうか。発売前に、プロジェクトチームを結成しイタリアへ乗り込んだのですが、完成直前、ボトルに貼るラベルに「見本」という字が大きく印刷されていたというハプニングもありました。

現地で印刷したそうですが、そもそも、イタリア人は日本語が分かりません。だから見本と書かれていることがダメな理由が分からないですよね。あわてて印刷し直したという話を聞きました。今となっては笑い話ですが、当時の担当者は青ざめたそうです(笑)

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——それは青ざめますね(笑)

吉村 そういった奮闘もあって、BOSCOは発売当初からお客さまにご好評いただきました。

実はちょうど同時期に、他社もオリーブオイルを発売したんです。だから発売当初にぐんとオリーブオイルの市場規模が大きくなり、もともと外食で使われていたオリーブオイルを、家庭でも使うという流れができたように思います。

「海外で売っていそう」な空気感を大切に

——今、メインで販売している商品はどちらですか?

吉村 エキストラバージンオリーブオイルですね。こちらの商品がラインナップの半分のシェアを占めています。

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——こだわりを教えてもらえますか?

吉村 こだわりは「風味」と「空気感」です。

私たちは発売当初から、BOSCOらしい風味を守り続けています。オリーブは収穫時期によって完熟と早摘みの2つに分かれますが、BOSCOは果実がグリーンのうちに収穫する「早摘みオリーブ」にこだわっています。

早摘みオリーブは、青々しい野菜のような香りと、適度な苦味・辛味が楽しめるため、最近は世界的に人気です。

実は、完熟オリーブと比べると、早摘みオリーブの収穫時期は1ヶ月間と短いんです。しかもオリーブの熟し具合を一本一本確認して収穫しているため、手間ひまがかかっています。

本場の職人が摘んだオリーブの実をていねいに洗い、粗砕・撹拌し、搾る。専門のテイスターによるテイスティングを経て、BOSCOらしい味・品質を保っています。

BOSCOの味は、青々としていてフレッシュで適度な辛味が特徴ですので、口に入れた瞬間に必ず分かっていただけます。今、オリーブオイルのブランドは他にもたくさんありますが、この風味が他のブランドとの差別化にもなっていると思います。

——空気感、というのはどのようなことを指しているのでしょう。

吉村 「本場イタリアの食文化」というのが一つのキーワードになるかもしれません。

パッケージにあえて日本語を入れず、使う色は白、緑、赤に統一。イタリアで売られていそうな空気感、それがBOSCOらしさであり、守っていくべきものです。

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よく、お客様から「BOSCOがイタリアで販売されていました」という言葉をいただきますが、イタリアでBOSCOは売っていません(笑)

品質への徹底したこだわり

——20周年を経て、発売当初から変えている部分はありますか?

吉村 色々とバージョンアップしていますよ。まず、注ぎ口のキャップです。元々、金属製のキャップでしたが「金属だと油がもれる」というご意見をいただいたので、ボトルとの隙間が生まれにくい樹脂のキャップに変えました。

オイルボトルも発売当初は透明でしたが、日当たりの良い場所に置くと退色してしまうので、今は色のついた遮光ボトルに変えています。

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発売当初のエキストラバージンオリーブオイル。キャップとボトルの色に注目

——なるほど!昔からBOSCOは変わらないイメージがありましたが、私たちが気付かないところで変わっているんですね。

吉村 まだまだありますよ。例えば、ボトルに貼るラベルは以前紙でしたが、分別がしやすいフィルムラベルに変えています。

長く続いているブランドというのは、お客様が気付かぬところでバージョンアップしているものだと感じます。ガラッと変えると皆さんを驚かせてしまうので、少しずつ少しずつ。

——イタリア生まれで見た目もイタリアですが、細やかなこだわりはとことん日本品質ですね。

吉村 きっと、日本人だからこそ気にする部分もあるんですよね。例えば、海外の人は油もれなんて全く気にしません。でも、日本の皆さんの要望に沿って樹脂キャップに変えたところ、油もれがしないわけですから、やっぱり便利です。

わたしたちも日本品質としてこだわりを持っている部分ですし、お客様のご要望にもきちんと応えていきたいと思っています。

和食にも、納豆にも。あなたの「好き」にBOSCOを楽しんでほしい

——BOSCOオリーブオイルの楽しみ方を教えてください。

吉村 バニラアイスにさっとひとかけすると、味に深みが出ます。あとは納豆にかけるのもイチオシです。

——納豆ですか!それは意外な組み合わせです。

吉村 和食には香りや辛味で味をひきたてる「薬味」という文化がありますよね。だから青々しい香り、苦味・辛味を持ち合わせるBOSCOのオリーブオイルを納豆にかけるのは、とても合うんですよ。

アイスも納豆も「かけるだけ」という手軽さの点でもおすすめです。 

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——今後、BOSCOが目指すところをお聞かせください。

吉村 抽象的な答えになってしまいますが、オリーブオイルが今よりも広がってほしいです。近年、オリーブオイルの楽しみ方は広がっていますが、家庭での購入経験率(1年間に1本以上購入した比率)は50%とまだ半分です。

最近は「かけるオイル」として小容量のフレッシュキープボトルを開発し、食卓でより気軽にオリーブオイルを楽しんでいただけるようにしています。オリーブオイルの用途をイタリアンに限定することなく、消費者の皆さんが好きに、自由に楽しんでもらえたらと思っています。

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一滴から注げる「フレッシュキープボトル」

そして繰り返し使ってもらえるよう、核となる風味・空気感はこれからも大切に。その他の部分については日本の皆様のニーズや感性に合わせてどんどんバージョンアップしていきたいです。オリーブオイルブランドとしてのBOSCOの魅力をこれからも磨いていきたいですね。

 

「イタリアンに行くとお店の方にお願いして、オリーブオイルを試食させてもらいます。職業病です」と朗らかに笑う吉村さん。20年間大切にしてきた味と「らしさ」をたずさえて、BOSCOは今日も次の一歩を進む。日本を代表するブランドとしての心意気を胸に。