多田 裕之介さん
味の素冷凍食品株式会社 マーケティング本部 家庭用事業部 開発マーケティンググループ
2005年味の素冷凍食品株式会社へ入社。6年間大阪にて営業を経験した後、現在の部署へ異動し、2014年からギョーザの商品開発担当に。ギョーザ商品の企画、事業計画の立案からプロモーションまで幅広く携わる、ギョーザの総監督。根っからの食好きで、食べ歩きが趣味。最近気になるのは火鍋。
発売から20年は「ギョーザ」の下積み時代だった
——味の素冷凍食品の「ギョーザ」と言えば、冷凍食品のロングセラー。油や水を入れずにパリッと焼ける手軽さや、安定感のあるおいしさから多くの方に愛されています。そもそもどういうきっかけで誕生したのでしょうか。
多田裕之介 さん(以下、多田) 1972年、当時冷凍食品事業を行っていた味の素から家庭用冷凍食品を発売しました。発売された商品は12品あって、シューマイなどメジャーなものから仔牛のクリーム煮など洒落たものまで。その一つに「ギョーザ」がありました。
1970年代は、セブンイレブンさんやマクドナルドさんの1号店がオープンし、日本の食文化が大きく変わりはじめた頃です。冷凍食品もその波に乗って「未来の食」という憧れの存在として受け取ってもらえたと聞いています。
でも、味の素のギョーザは発売から20年間、あまり売れていなかったんです。
——そうなんですか?意外です。
多田 昔は冷凍食品=お弁当のイメージが強かったので冷凍食品を家で食べることに馴染みがなかったんですね。また、今のように油・水なしになる前のギョーザですので、調理簡便性という点において、味の素のギョーザを選ぶ必然性も少なかった気がします。今考えると、最初の20年間はギョーザの下積み時代でしたね。
油・水なしで焼ける「ギョーザ」なんてクレイジー!だから多くの人に愛された
——その後、1997年に油なしで焼けるギョーザ、2012年に油・水なしで焼けるギョーザが発売され、味の素冷凍食品のギョーザは一気にメジャーになります。
※味の素冷凍食品(株)は2000年に味の素(株)の冷凍食品事業が分社化して設立しました。
多田 日本人が好きなおかずの一位は餃子だそうです。老若男女問わずみんな大好きで、いわば日本人の国民食。でも焼くときに皮が破れたり、焼き加減を失敗したりといった調理上の悩みを持つ料理でもありました。だから餃子を簡単にキレイに焼ける商品を出したかったんです。
ギョーザにおいては、お客様が家で調理をする際に、油が均一に行き渡らないことで、焼ムラができ、上手に焼けないという悩みを抱えていました。それを解決するために、油なしで焼けるギョーザが生まれたんです。きっかけは、工場で働く社員のひらめきでして。ギョーザの製造ラインを見ていた時、ふと「ギョーザの底に油のもとをつければ、簡単に上手に焼けるかも」って。
開発を進めて1997年に油なしで焼けるギョーザを発売したところ、売上はぐっと上向きになり、2003年に家庭用冷凍食品の中で売上1位になりました。
——そこからさらに水なしで焼けるギョーザを目指したきっかけは何でしょうか。
多田 油なしで焼けるギョーザを発売したあと、売上が伸び悩んだ時期があったんです。そのとき、本当にお客様はギョーザをきれいに焼けているのかという疑問が浮かび、お客様に目の前でギョーザを焼いてもらいました。すると驚くことに、水を目分量でジャッと入れている方が多くて(笑)皮がやぶれたり焦げたり、出来上がりにばらつきがあることに気付いたんです。
そこで「水なしでも焼ける餃子を作ろう」と、約2年の開発を経て2012年、油・水なしで誰でも簡単に失敗なく綺麗に焼けるギョーザを発売しました。
でも、そもそも水を入れずにギョーザを焼くという発想自体クレイジーじゃないですか?(笑)
——たしかに今までの常識からすると、考えられないかもしれません。
多田 その意外性がプラスに働きました。「油も水を入れずにギョーザを作れるなんて、面白いから買ってみよう」と購入のきっかけにつながり、初めて買っていただ方がギョーザのおいしさや綺麗に焼けることに気づいてリピーターに繋がり、売上もかなり伸びましたね。
「きれいに焼けた!」その感動がギョーザのおいしさを倍増させる
——味の素冷凍食品のギョーザのこだわりはありますか?
多田 まずは確実においしいという安定感です。…うまく言葉で説明できないのですが、味の設計や肉・野菜のバランスなど「ここを越えると行き過ぎだぞ〜」というポイントが自分の中にいくつかあって。商品開発時はそのポイントを守るよう意識しています。
あとは、おいしさにプラスして「ビシっと焼ける」ところにこだわりを持っています。油・水なしは手段であって、その背景にはお家できれいに焼いて喜んでほしいという想いがあるんです。
——ギョーザってきれいに焼けると感動しますよね。
多田 そうなんです。その感動を皆さんと分かち合いたくて企画したのが、7月に東京・両国駅の3番ホームに期間限定でオープンした「ギョーザステーション」です。サラリーマンが会社帰りに食べに来てくれたり、親子連れで遊びに来てくれたり…。
このイベントはまさに「ビシっと焼けると気持ちがいい」を多くの方に体感してもらえたと思います。みんなでテーブルを囲んでギョーザを焼いて、待つこと6〜7分。フライパンをお皿にひっくり返して、ギョーザがビシッと焼けた瞬間の皆さんの盛り上がりは最高でしたね(笑)
——個人的におすすめしたいギョーザの食べ方はありますか?
多田 味の素冷凍食品のWEBサイトでご紹介していますが、チーズフォンデュがイチオシです。
——ギョーザをチーズフォンデュ!
多田 ギョーザをチーズにディップして食べるとおいしいんですよ。ほかにも「ギョーザのココナッツミルクスープ」など想像の斜め上をいくレシピが多いのでWEBサイトであたらしいギョーザの楽しみ方を見つけてみてください。
食卓を明るく楽しくする。おなかも心も満たす新時代の「ギョーザ」
——発売45周年を迎え、これから味の素冷凍食品のギョーザがどう進化していくのか楽しみです。
多田 調査によると、過去3年間味の素冷凍食品のギョーザを買ったことのない方が約70%もいるんです。だからもっと多くの方に楽しんでいただける伸び代があると思っていて。
魅力を届けきれていない方に買ってもらえる方法を分析し、新商品の開発など進めています。
11月26日からは、新商品の「福福ギョーザ」を発売します。餃子の発祥地である中国では、新年に縁起物として餃子が食べられていて。その習慣にならって、ふかひれや筍を厚皮で包んだ、ハレの日にぴったりなギョーザを作りました。家族が揃う機会が多い年末年始に、ぜひ食べていただきたいですね。
——ブランドとしてどんな未来を描きたいですか?
多田 ギョーザって食卓を明るくしますよね。だからわたしたちはギョーザがあるシーンを、日本の家庭に増やしていきたいです。そのためには「おいしい」だけではなく「綺麗に焼けると気持ちがいい」「みんなで食べると元気になる」といった気持ちをプラスすること。おなかも心も満腹になるギョーザでありたいと思っています。
それをずっと積み重ねた先に、自ずとブランドが強くなると思うんです。いつか冷凍食品という枠組みを取っ払って「ギョーザといえば味の素冷凍食品のギョーザだ」と言ってもらえるよう頑張りたいです。