北山 浩さん
タイガー魔法瓶株式会社 ソリューショングループ 食生活みらい研究所 マネージャー
メーカーで商品開発担当後、2009年にタイガー魔法瓶株式会社へ入社。ブランドマネージャーとしてホットプレート・ミキサー事業を担当する他、GRAND Xのブランディングも担当している。趣味は北欧のアンティーク雑貨集め。最近気になる食べものは大阪カレー。
比べないで本質を目指す。GRAND X開発のきっかけ
——まず、タイガー魔法瓶がGRAND X(以下、グランエックス)という調理家電ブランドを立ち上げたきっかけをお聞かせください。
北山浩さん(以下、北山) タイガー魔法瓶は創業94周年を迎える調理家電の老舗メーカーです。当社は昔からなじみのあるメーカーである反面、先進的なイメージがなくちょっと無難…。そんな旧態依然とした状況に危機感を抱いていました。
今まで私たちは商品をつくる時、他社の商品と競争してきたんです。「他社がAという機能を付けたから、当社はBを付加価値としよう」というような。でもどんどん安価な海外製品が日本に入ってきますし、これからは相対的な商品開発では生き残れないと感じていました。
そこで2011年頃、食におけるおいしさと健康を第一に考えた絶対的な商品を開発することを決定。2014年に「感動の、おいしさを。」をテーマにした調理家電ブランド、グランエックスが誕生しました。
——グランエックスという名前にはどのような意味が込められているのでしょうか。
北山 「エックス」は未知なるものという意味、「グランド」には雄大・壮大などの良いイメージがあります。未知なるものへどんどん進化し続けたいという想いで名付けました。
GRAND Xが心地よいワケは、五感へのこだわりにあり
——現在、グランエックスで展開している商品はいくつありますか?
北山 「スチームコンべクションオーブン<やきたて>」「土鍋圧力IH炊飯ジャー<THE 炊きたて>」「コーヒーメーカー」「IHホームベーカリー<THE 炊きたて>」の4商品を展開しています。
——その中で一番人気の商品を教えてください。
北山 一番は「土鍋圧力IH炊飯ジャー<THE 炊きたて>」ですね。お米に熱を加える熱伝導と蓄熱性とのバランスに優れた全く新しい土鍋を三重県四日市にある萬古焼の工房と開発しました。お米の芯まで熱が通るので、すっきりした甘みとコクがおいしいごはんに炊き上がります。
——サイトを拝見して、コーヒーメーカーも気になりました。
北山 蒸気プレスで淹れるTiger Press方式を採用し、コクやうまみのある安定した味わいを楽しめます。抽湯温度を3段階、浸し時間を5段階用意しており、気分や好みに合わせて全部で15通りものテイストが選べます。
——グランエックスシリーズの商品を作るにあたり、大切にしているポイントはありますか?
北山 お客様がキッチンでグランエックスを使うとき、五感が心地よくなるよう意識した基準を独自に定めています。
デザインは主張しすぎずキッチンになじむもの。高級感を損なわないように色は統一し、音は聞きやすく愛される音にすること。ピッピッという操作音の周波数など細かい部分にもこだわります。
操作性も大切なポイントです。たとえば「土鍋圧力IH炊飯ジャー <THE 炊きたて>」は、人が近づくとセンサーが検知し、タッチパネルが点灯するんですよ。
こういった基準を満たした商品だけが、グランエックスシリーズに仲間入りしていきます。メカ的な機能をどんどん追加していくことよりも、グランエックスは心地よさにこだわっています。
生活シーンそのものが商品になれば、自然とお客様に魅力が伝わる
——WEBサイト「グランエックスクラブ」は一般的な商品紹介サイトと異なり、わたしたちの暮らしに役立つ読みものがたくさんありますね。
グランエックスクラブのコンテンツ
北山 グランエックスは、お客様にとって顔の見える存在になることを目指しています。「タイガー魔法瓶=グランエックス」とパッと想起いただけるような…。
タイガー魔法瓶の商品は主に家電量販店で販売しているので、お客様との直接のつながりが少ないんです。だからWEBサイトでダイレクトに商品の魅力を伝え、お客様との距離を縮めたいと考えました。
——写真や文章がきれいですし、読みものページも充実していてつい読み込んでしまいます。
北山 見て楽しいし、日々の生活に役に立つがモットーです。お客様にとっては、商品の詳細説明より、食材の知恵や料理レシピの方が、ずっと身近で役立つはずですから。
——松浦弥太郎さんがクリエイティブ・ディレクターをしていることにも驚きました。
北山 グランエックスは、食や健康に対する意欲が強く、モノに対して厳しい目を持つ人びとをメインターゲットに据えています。だからその代表として松浦弥太郎さんに監修いただこうと決めました。
松浦弥太郎さんはモノを見る千里眼をお持ちですし、商品の良さを自分なりに解釈し伝えていただけるところが魅力です。
——WEBサイトを読んでいると、商品のある暮らしの良さが伝わってきます。
北山 私たちはモノを売るメーカーですが、WEBサイトではモノが使われる生活シーンを中心に提案するよう心がけています。だって商品は使われてなんぼですから。
たとえば松浦さんが最初に「グランエックスのきほん」というコンテンツを作ってくれました。松浦さんご自身がグランエックスを実際に使い、その使い方や食べる楽しさを丁寧な文章と写真で綴っていますが、これが一番人気です。それはグランエックスのある暮らしの魅力が伝わるからだと思います。
商品、食材、お客様をつなげて、おいしく健康を皆で目指したい
——今、北山さんが感じているグランエックスの課題はありますか?
北山 課題は「つながり」ですね。お客様ともっとつながりたいですし、あと…食材とのつながりを作っていきたいと思っています。
——食材とのつながりというと?
北山 やっぱり良い食材を正しく調理し、食べていただくことが一番おいしいんですよ。
だから、わたしたちはグランエックスをただ売るだけでなく「食」をキーワードに、食材や食品メーカーとの連携、料理家さんのレシピ紹介などソフト面と組み合わせて、みんなでおいしい食卓を提案できたら面白いと思っています。
お客様にとって、たとえば「グランエックスシリーズを買うと、おいしい食材や作り方が分かって、上質な食事が楽しめる」というイメージを描けたらうれしいですよね。それって調理家電メーカーのタイガー魔法瓶だからこそできることだと思うんです。
家電であるグランエックス、食材、お客様全部つなげることで、しあわせな食卓のお手伝いをしていきたいですね。