「暮らしを支えるヒットブランド」では、そんな商品にスポットをあて、ヒットの理由を紐解いていきます。
今回登場するのは、プロのスタイリストから一般家庭まで幅広く使われている「衣類スチーマー」。パナソニック株式会社の巽(たつみ)敦子さんにご登場いただき、ヒットの秘密をお伺いしました。
巽敦子さん
パナソニック株式会社 スモールアプライアンス商品部 ビューティ・ヘルスケア商品課 主務(アクア・アイロン担当)
入社以来、冷蔵庫・アイロンから体組成計まで、幅広い商品のマーケティングを担当。現在は、アイロン商品の企画や販促に携わっている。家でのアイロン仕事はもちろん巽さんのシゴト。趣味で着物を着るときも、衣類スチーマーが手放せない。
アイロンへの不満が、発想の原点
——「衣類スチーマー」は、いつ頃生まれたのでしょうか。
現在の形の初代「衣類スチーマー」が誕生したのは2013年です。開発のきっかけは、アイロンへの不満の声でした。アイロンは9割の家庭にあるのに、アイロンがけがうまくできないといった理由で、常に“嫌いな家事”の上位に入っているんです。
加えて、当時流行していたのは、ふんわりとしたガーリーな女性服。立体的でアイロンがけが難しかったことから、もっと簡単に早くシワ伸ばしができる商品が求められていました。
——時代の消費者ニーズに合致したのですね。
そうですね。「衣類スチーマー」は、アイロン台を出さなくても、ハンガーにかけたままで素早く簡単にシワ伸ばしができるので、アイロンがけが苦手な方にも使いやすいんです。
女性なら、スカートの座りジワや荷物を持ったときのシワ、ストールなどの折りシワなど、これまではケアしづらかった部分も手軽にシワ伸ばしができます。
それに、衣類のニオイが取れるのも好評です。
——スチームで脱臭というのは想像していませんでした。
男性のスーツなど、頻繁にクリーニングできないものは、ニオイが気になりますよね。スチームでニオイの粒子を飛ばすことで、脱臭効果が期待できるんです。
——スチームの出方にもこだわりがあるのでしょうか?
連続スチームがウリなので、スチームの加減にはこだわりました。シワ伸ばしをしていて、水が「ピシャッ」と出たら嫌ですよね。
やかんを想像すると、わかりやすいと思います。お湯を沸かし続けると、お湯が飛び出ることがあると思うのですが、スチーマーでもその状態が起こります。なので、水が飛び出そうになったらヒーターをオフにし、しばらくしたらまたオンに、というのを自動的に繰り返して、常にベストなスチームを出せる状態を保っています。
スチーム量を担保しながら、製品を持ち続けても手が疲れないようにコンパクトで軽量にする、というバランスを取ることは、製品開発の難しさでもありましたね。
——衣類スチーマーの注目すべき特徴はありますか?
一つは、電源を入れた後の“立ち上がり時間”が約24秒になったことです。忙しい朝でもすぐに使えて、「着たいのにシワがあって着られない」といったストレスもなくなります。
もう一つは、360度、どの角度でもスチームが出ること。これなら左利きの方も不便なく使えますし、衣類の内側に手を回してもかけやすいんです。これは、スチーマーをよく使うスタイリストさんからも好評です。
「衣類スチーマー」は正しく使ってこそ、威力を実感できる
——「衣類スチーマー」の上手なかけ方を教えてください。
まず、衣類の素材が適しているか、必ず絵表示を確認してください。弊社の衣類スチーマーは、アイロンの中温の温度(約160度)なので、たとえば、綿やポリエステル、麻であれば問題ありません。
スチーマーにアイロン面がついているので、スチームをあてながら、「面」でしっかりシワを伸ばすと、スピーディーに仕上がりますよ。また、じっとりと濡れた感じが残ることもありません。
男性のワイシャツは、片方の手でピンと裾を引っ張り、アイロン面をゆっくりとあてて、スチームを行き渡らせていくのがコツです。
スチームをふりかけるように手を早く動かしてしまうと、手が疲れるだけでなく、スチームが衣類に入らず、シワが伸びないんです。
ブラウスなど、薄くて立体的なものは、手で支えて軽く当てるだけで、熱とスチームでシワが伸びます。リボンもスチーマーをかけてから結べば、よりきれいに仕上がりますよ。
——ジャケットはどうですか?
ジャケットは、生地から1cmぐらい離して、形を整えながらスチームをたっぷり含ませて動かします。最後に服をパタパタと振ると、ニオイも飛びやすく、クリーニングの回数も抑えられます。
ポイントは、衣類にゆっくりスチームを入れる感覚で行うこと。立体的な衣類は、台に置いてアイロンをかけると、デザインによっては、アイロン線が入ってしまうことがありますが、スチームなら簡単です。もし使い方に悩んだら、ブランドサイトに動画を掲載しているので、そちらも参考にしてくださいね。
便利なだけじゃない。「衣類スチーマー」が暮らしを変えた
——お客様からの反響で、意外な声はありましたか?
「衣類スチーマー」のコンパクトさから、「なかなか洗えない子どもの制服や帽子にも使いやすく、さらに肌に触れるものなので水だけで脱臭できるのがいい」というお声をいただきました。
また、「以前は『アイロンがけが難しそう』という理由で、気に入った服を買うのを諦めていたけど、そういうことがなくなった」というお声もちょうだいしました。
好きな服を着ていただけるようになっただけでなく、「シワがないから気持ちいい」「自分に自信が持てる」など、気持ちまで前向きになった方も多くいらっしゃるのもうれしいですね。
——幅広く使われている「衣類スチーマー」ですが、今の課題はあります?
「衣類スチーマー」を持っている人はまだまだ少ないので、まずはより多くの方に商品を知っていただきたいです。そして、どのくらいシワが伸びるかをご覧いただくことが、商品の良さを知っていただくことにつながると思います。
そして、商品をお使いいただいたお客様によりご満足いただき、皆さんがおしゃれをもっと楽しめるようにしていきたいと思います。
編集後記
「衣類スチーマー」の機能は理解していましたが、ひと昔のイメージから、「うまくシワが伸びない」という印象を抱いていました。今回、デモンストレーションを拝見し、その威力にびっくり。生地に合わせて正しく使うと、本当にあっという間にシワがなくなり、きれいな服に生まれ変わりました。「これがあれば暮らしが変わる」とすぐに実感できること。それが、みんなの「欲しい!」につながり、ヒットアイテムへとつながるのだと、身をもって実感しました。
【編集協力】そこそこ社