小麦とバターの黄金比率を求めて。「ロイヤルブレッド」が山崎製パンのトップ商品であり続ける理由

書き手 阿部 花恵
写真 鈴木 静華
小麦とバターの黄金比率を求めて。「ロイヤルブレッド」が山崎製パンのトップ商品であり続ける理由
世の中に数多くあるヒットブランド。開発の背景はさまざまですが、その裏には共通して「ずっとこういうものが欲しかった」というお客さまの声が潜んでいます。長く求められていたのに、今までになかったもの。それが、ヒットブランドのキーワードだといえそうです。

「暮らしを支えるヒットブランド」では、そんな商品にスポットをあて、ヒットの理由を紐解いていきます。

今回、お話をお聞きしたのは、「春のパンまつり」でおなじみの山崎製パン株式会社の菅真一さんです。そんな「ヤマザキパン」の看板商品である食パン「ロイヤルブレッド」についてお話をお聞きしました。

菅 真一さん
山崎製パン株式会社 営業統括本部 マーケティング部 マーケティング第一課 課長
1997年、山崎製パン株式会社に入社。武蔵野工場、伊勢崎工場などの製造・営業職を経て、2018年7月に本社マーケティング部に異動。食パンをメインで扱う第一課の課長として製品開発・販売促進などを担当する。

30年以上続いた「サンロイヤル」を生まれ変わらせる

――「ロイヤルブレッド」が誕生した背景について教えてください。

「ロイヤルブレッド」の発売は2012年です。意外と歴史が浅いように感じられるかもしれませんが、もともとは30年以上の歴史を持つ「サンロイヤル」という食パンが前身。

その「ロイヤル」の名を受け継ぎつつ、をさらにこだわりを持ってグレードアップさせた食パンをつくろう、というコンセプトで誕生したのが「ロイヤルブレッド」です。いうなれば、スタンダードな食パンを極めた食パンです。

――具体的にどのような点をグレードアップさせたのでしょうか。

まずは材料です。麦本来の風味をさらに出すために、「サンロイヤル」で使っていた小麦粉よりもランクを上げて、「ロイヤルブレッド」では厳選した上級小麦粉を使うことにしました。

もうひとつはバターを加えてコクを出したこと。トーストしたときにバターがふんわり香るように、小麦とバターの風味のベストなバランス、黄金比率を探りました。

もちろん、かじったときのサクッとした食感・弾力にもこだわっています。焼くと硬くなってしまうパンもありますが、「ロイヤルブレッド」は焼いてもサクッと香ばしく、口溶けはしっとりしているのが自慢です。

パン断面のきめ細かさに注目してほしい

ーー価格帯はカジュアルでも、おいしさは「ロイヤル(王の、王室の)」級を目指したのですね。

しっとりした食感の秘密は、きめの細かさにもあります。パンの断面を見ていただくとわかると思うのですが、同価格帯のほかの食パンは、もう少しきめが荒いと思うんですね。このきめの細かさは良質な小麦に含まれるグルテンによるものです。


パンの表面(断面)を見ただけでわかるきめの細かさ。これがしっとりした食感につながる

これは弊社が長年培ってきた独自技術があってこそ実現した風味です。ですから2012年の発売当初から、「自信を持って売れる商品ができた。メインを張る看板商品として、社をあげてしっかり売っていこう」と開発も営業も力を入れてやってきました。

――「ヤマザキの食パン」といえば、「ダブルソフト」「超芳醇」「ふんわり食パン」などがありますが、最も人気が高いのはやはり「ロイヤルブレッド」ですか?

はい。2012年の発売以降は右肩上がりで売り上げを伸ばし続けています。品質とおいしさを訴求した営業活動の成果が、多くのお客さまに受け入れられたおかげだと思っています。

また、今年2月に稼働した神戸工場でも「ロイヤルブレッド」の生産をスタートしたため、中四国エリアのお客さまにも、よりフレッシュな商品をお届けできるようになったことによって、売り上げもアップしました。今では弊社の食パンのトップ商品となっただけでなく、「ロイヤルブレッド」の名が食パンのブランドとして定着を図れたと考えています。

ベーカリーさんでこのクラスのパンを売ろうと思ったら、やはり200~300円台になるのではないでしょうか。そこは日本全国に工場を持ち、毎日、200万斤超の食パンをつくっている弊社の強みで、大量に安定供給できるシステムと機械による効率化のおかげで、「ロイヤルブレッド」も150円前後というお試ししやすい価格に抑えることができています。ふわっとしたバターの風味が香り立つ食感をぜひ一度味わっていただければ、と思います。

「ロイヤルブレッド」の卵サンドがおいしい秘密

――菅さんのおすすめの「ロイヤルブレッド」の食べ方を教えてください。

やっぱりトーストですね。「ロイヤルブレッド」はきめが細かく水分が逃げにくいので、トーストすると外はサックリ、中はしっとり焼き上がるんです。トーストしたときの香ばしさ、サクッとした食感、しっかり感じられる風味をぜひ味わっていただきたいです。

さらに、きめの細かさを実感してもらえるという意味では、「卵サンド」もおすすめです。表面のきめが細かいので、具材の水分がパンに流れにくいんですよ。

ーー表面のきめの細かさが、水分を逃げにくくするのでしょうか?

そうです。パンによっては具材から出る水気が染みてべちゃーっとなってしまうことがあると思うのですが、つぶしたゆで卵やスクランブルエッグをのせても、「ロイヤルブレッド」ならふんわりとした食感を保ったまま、うまく包んでくれます。弊社のサイトでもレシピをご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

――2017年には「ロイヤルブレッド プレミアム」も誕生していますね。どういった違いがあるのでしょう。

こちらは「ロイヤルブレッド」よりもさらにワンランク上げて、というコンセプトで誕生しました。最上級の小麦粉とバターをたっぷり使い、丁寧に熟成させることで、しっとりなめらかな食感に仕上げています。ミミまでふんわり柔らかな食感はシニア層の方々にも好評です。

「おいしい」だけでなく、さらなる付加価値を

――最後に、ブランドとしての今後目指すところについて教えてください。

まずはおいしさの「品質」を多くのお客さまにわかってもらうこと。発売当初からこれまで一貫して「品質」を一番に押し出して売ってきた商品ですから、ここは今後もしっかりと丁寧に伝えていくつもりです。

「ロイヤルブレッド」はこれまでは「おいしさ」で数多くのお客さまに支持されてきましたが、今後はさらなる付加価値をアピールしていければと思っています。

具体的には「安全」「安心」であることの周知、さらには食べ方やシーンの提案などをもっと仕掛けていくつもりです。

――お客さまとの直接のコミュニケーションも重視されているのでしょうか。

もちろんです。弊社には「マーケットクルー」と呼ばれる食育活動の専門スタッフがいるのですが、マーケットクルーによる全国のスーパーマーケットの店頭デモンストレーションはお客さまに「ロイヤルブレッド」を食べていただく絶好の機会ですので、こちらは今後も積極的に行っていきます。

そういった店頭デモやイベントを通じて、朝食の場以外でもパンを食べていただけるようなシーンの提案、お酒と合うパンメニューの考案などにはさらに力を入れていくつもりです。あとは「春のパンまつり」のような全国キャンペーンがあるのも弊社の強みですから、そこから若年層にも今以上に「ロイヤルブレッド」を認知していただけたら。

そんな風に積み重ねていく中で、1回だけのチョイスではなくて、継続的に「ロイヤルブレッド」を手にとっていただけるようになったら、うれしいですね。