目指すのは、ゆとりの時間を生み出すお手伝い。ウォーターオーブン「ヘルシオ」が叶えてくれるおいしさと利便性

書き手 阿部 花恵
写真 鈴木 静華
目指すのは、ゆとりの時間を生み出すお手伝い。ウォーターオーブン「ヘルシオ」が叶えてくれるおいしさと利便性
変化のスピードが速い今の時代、淘汰されずに「残り続けてきた」優れた商品には秘密があります。時代を超えて愛されるロングセラーブランドの秘密を知ることは、「本当にいいもの」とは何かを考え直すことでもあります。

「暮らしを支えるロングセラーブランド」は、長く、広く、多くの人々に愛され続けている商品にスポットをあてた連載シリーズです。

今回は、「水のチカラで調理する」という新発想で家庭用オーブンレンジの常識を変えた「ヘルシオ」ブランドについて、シャープ株式会社の奥田哲也さんにお話を伺いました。

奥田哲也さん
シャープ株式会社 IoT HE事業本部 スモールアプライアンス事業部 商品企画部 部長

「ヘルシオ」をはじめとする調理家電や掃除機などのスモールアプライアンス事業部にて部長として商品企画全体を統括。お気に入りのヘルシオレシピは、皮をむいた玉ねぎを「おまかせ調理」するだけの「玉ねぎのまるごと焼き」。

オーブンレンジの“次の一手”を求めて過熱水蒸気に注目

――「ヘルシオ」のオーブンレンジはいつ誕生したのでしょうか。

「ヘルシオ」は日本で初めての家庭向けウォーターオーブンとして2004年に誕生しました。もともとは日本で初めて電子レンジを開発したのも当社なんです。

電子レンジで温めることを「チンする」っていいますよね。あの音を採用したのも実はシャープです。食堂車にも採用された1962年の国産1号機にあたる業務用電子レンジを皮切りに、50年以上ずっとオーブンレンジ、電子レンジの開発に取り組んできました。

そういった歴史のなかでも2000年代前半には“次の一手”となる新機能がなかなか見つからなかった。そんな矢先に知ったのが「過熱水蒸気」を使った調理技術です。


写真提供/シャープ株式会社

――過熱水蒸気とはどんなものでしょう?

水を温めると蒸気になりますよね。その水蒸気をさらに加熱すると、100℃を超える無色透明の気体に変わります。これが「過熱水蒸気」です。

水は非常に面白い性質を持っていまして、過熱水蒸気を使うと、食材の余分な油や塩分を水で洗い流すこともできる。水のチカラでおいしさをしっかり保ったまま、脱油・減塩ができるヘルシーな家庭用ウォーターオーブンとして開発されたのが「ヘルシオ」なんです。

――開発で最も苦労した点はどんなところでしたか。

過熱水蒸気を噴射する高熱ヒーターを、家庭の台所に置けるサイズにどう収めるか。過熱水蒸気を使った家庭用の料理のメニューをどう提案するか、といったところが難しかったと当時の担当者からは聞いています。

そういった「ヘルシオ」ならではの特長をお客さまにわかっていただくために、商品自体の色も発売当初から一貫して「赤」をコンセプトカラーに位置づけています。

 「水で焼く」ってどういう原理なの?

――一方で、「水で焼く」オーブンレンジと言われても、ほとんどの人にはピンと来なかったのではないでしょうか。

おっしゃる通りです。そこをクリアするために、「過熱水蒸気とはどんなものなのか」をわかってもらうための実演と試食が楽しめる体験イベントを東京・大阪などで発売当初から現在に至るまで、行っています。

過熱水蒸気をつくってマッチ棒をあてるとボッと燃える、という科学実験のようなところから始めて、過熱水蒸気で焼いた野菜や温め直した天ぷらを食べていただく、という体験教室や料理教室なども積極的に開催しています。

また、動画を使って「ヘルシオ」の機能や特長をわかりやすく理解していただくためのプロモーションも展開しています。今年は庫内の密閉性の動画を公開しました。

「ヘルシオ」を人々の健康を支える調理機器に発展させたい

――現在はウォーターオーブン以外のホットクックなどの商品にも、「ヘルシオ」のブランド名称が使われていますね。その狙いは?

2013年に「ヘルシオ ジュースプレッソ」を発売したのを皮切りに、それまでオーブンだけの商品名だった「ヘルシオ」をブランド名に発展させました。

オーブンだけでなく、人々を健康にする機器そのものを「ヘルシオ」と位置づけてどんどん広げていこう、「健康調理機器といえばヘルシオ」という意識をもっと浸透させていこうという気持ちがあります。

その試みとして、オーブンレンジやホットクックのほか、現在は計5カテゴリーに「ヘルシオ」の名称を使っています。

――1号機の発売から14年。最新の「ヘルシオ ウォーターオーブン」では見た目もぐっとシンプルに変わっていますが、どんな機能があるのでしょうか。

無線LAN対応モデル(AX-XW500/AW500など)では、スマートスピーカーに対応できるようになったことが大きいですね。これによってリビングやダイニングからでも献立相談ができるようになり、利便性がぐっと高まりました。

「レンジで600W、3分」と話しかけるだけで設定ができますし、AIが家族の嗜好や調味履歴からぴったりの献立を提案してくれます。

 

上段で「まかせて調理」で主菜をつくりながら、下段でお惣菜を同時にあたためることができる「2段調理」。写真提供/シャープ株式会社

もちろん、味の面でも進化しています。最新の最上位モデル(AX-XW500)では、手作りのおかず調理とお惣菜のあたためを2段同時にできる「2段調理」、火加減の難しい塊肉を高温と低音を組み合わせて加熱する「あぶり豊潤焼き」などがあります。

切り詰める時短よりも、ゆとりの時間を生む方向へ

――お話を聞いていると、「料理」の概念がどんどん変化していることを実感します。今後は、ブランドとしてどのようなチャレンジをしていくのでしょうか?

家事や作業時間を短縮させる“時短“も大事ですが、時間を生み出すことも大事ですよね。機器に任せられることは任せてしまって、自由な時間、ゆとりの時間を生み出す方法を今後も提案していきますし、そこが今後の調理家電のポイントになってくるのかな、と思います。

一方で、あまりにテクノロジーだけが先を行き過ぎると、使いこなす側が置いていかれてしまうこともあります。「便利な機能があるらしいけど使いこなせない」というご意見をいただくことも少なくありません。

それぞれのお客さまの生活スタイルに柔軟に対応できるように、最新の技術をどう提供していくか。「健康って、おいしい。」というヘルシオのブランドコピーを今後も大事にしながら、過熱水蒸気だからこそできる健康とおいしさの両立に加えて、AIoT(モノの人工知能化)による利便性向上を、今後も追求していきます。