大切なブランドキーワードは「安全・安心」 「オーガニック」を手の届く日常商品に変えたトップバリュ グリーンアイ

書き手 塚本佳子
写真 栃久保 誠
大切なブランドキーワードは「安全・安心」 「オーガニック」を手の届く日常商品に変えたトップバリュ グリーンアイ
お客さまの声に耳を傾けるーー愛される商品を作り上げるうえで必要不可欠なことだけど、実際には簡単なことではありません。ロングセラーブランドには、常にお客さまに寄り添うやさしい気持ちを感じます。

「暮らしを支えるロングセラーブランド」は、長く広く愛され続けている商品にスポットをあてた連載シリーズ。

今回はイオントップバリュ株式会社の渡邉親典さんに、お客さまに「安全・安心」の商品を提供し続けるイオンのプライベートブランド、「トップバリュ グリーンアイ」についてお伺いしました。

渡邉親典さん
イオントップバリュ株式会社 マーケティング本部 コミュニケーション部
イオン株式会社(現イオンリテール株式会社)に入社後、店舗勤務、商品部バイヤーを経て、現在はイオントップバリュ株式会社マーケティング本部コミュニケーション部に所属。お客さまにトップバリュ商品の良さを知っていただくために日々奔走している。お気に入りの商品は開発当初からから携わっている「トップバリュ グリーンアイフリーフロム パン・ド・ミ」。

昔も今も、一番大切にしているのは「お客さまの声」

——「トップバリュ グリーンアイ」はどのような経緯で誕生したのですか?

「毎日食べるもの、使うものだから、より安心なものを買いたい」といったお客さまの声に応える形で、体のすこやかさと、自然環境に配慮したブランドとして1993年に誕生しました。

現在、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」には、グリーンアイを含めて4つのブランドがあり、「安全・安心」のキーワードを掲げています。それは、「安全だからこそ安心できる」という考えがあるからなんです。

その中でも、「トップバリュ グリーンアイ」は、化学肥料に頼らない有機栽培の野菜、抗生物質などを使わずに飼育した肉や魚、添加物や成分に配慮した食品や生活用品など、さらに「安全・安心」に特化したブランドです。

2016年にリブランディングしたことにより、商品の特性に合わせて「トップバリュ グリーンアイオーガニック」「トップバリュ グリーンアイナチュラル」「トップバリュ グリーンアイフリーフロム」の3つのシリーズが誕生しました。

オーガニックは農薬や化学肥料に頼らない有機栽培の原料で作った商品。ナチュラルは化学合成された薬品を使用しない生鮮品。フリーフロムは添加物や成分使用に配慮した食品や生活用品のシリーズ。

——当時は「有機」「オーガニック」という言葉自体を知らない人も多かったそうですね。

はい。まず生産してくれる農家を探すことからのスタートでした。当時は無農薬や有機栽培を行なっている農家が少なく、生産効率を考えるとどうしても価格が上がってしまう。良いものを作っている自負はありましたが、新商品を発売しても価格面から思うように売れずに店頭から消えていくということの繰り返しでした。

どんなに人の体や自然環境に良いものでも既存の商品の何倍もする価格では継続して購入いただくことはできません。日常食品として取り入れていただける価格を実現できるまでにずいぶん時間がかかりました。

オーガニックが日常食品になるまで20

——低価格化が実現したきっかけを教えてください。

「有機JASマーク」の導入によりオーガニックに取り組む国内の農家が増え、2014年には同等性認証の開始により、諸外国の農務省がオーガニックと認めたものも、日本でオーガニック商品として販売できるようになりました。

そこで、イオンでは物流の効率化、収穫量の拡大、コスト削減などを実現するため新たなサプライチェーンを独自に構築し、オーガニック農家のみなさんとアライアンスを組み、オーガニック野菜の生産の拡大に取り組んでいます。

また、イオンならではの海外ネットワークも推進力となっています。イオングループのグローバルな調達網を活かし、オーガニック先進国である欧米を中心に、製造、調達を行なうことで、よりお客さまに日常的に取り入れていただきやすい価格に近づけることができるようになりました。気軽に購入できる「オーガニック商品」として大々的に訴求活動をスタートし、売り上げも急激に伸びています。

——順調に成長を続ける中で課題はありますか?

ここ数年でずいぶん変わってきたとは思いますが、「オーガニック商品=高い」というイメージは根強くあるので、それをいかに払拭していくかが課題です。

たとえば、一般的な100%のオレンジジュースはほとんどが濃縮還元です。濃縮還元ジュースとは水分をとばして濃縮した果汁に水を足して元の濃度に戻した商品のこと。濃縮された容量であれば、輸入する際のコストがぐんと下がるので、一般的には濃縮還元の商品がほとんどです。

でも、トップバリュ グリーンアイオーガニックのオレンジジュースストレート100%は、濃縮したり、水を足したりしない、絞ったままの果汁、ストレートのジュースなので、おいしさが違います。ちなみにこの商品、いくらだと思いますか?

——オーガニックでストレート、しかも750mlもあるので1000円近くしそうですよね。

そういうイメージがありますよね。ですがこの商品は298円(本体価格:2019年1月時点)なんです。

——一般的なオレンジジュースと変わらない値段ですね。

そうなんですよ。価値と価格を聞けば「買ってみよう」と思ってくださるお客さまは間違いなく、たくさんいると思います。ただ、その価値をまだまだ伝えきれていません。

最大のコミュニケーション戦略は、従業員に商品の理解を深めてもらうこと

——現在、商品の良さをお客さまに伝えていくために、どのような取り組みを行なっているのでしょうか。

まずは、従業員全員に商品の良さを理解してもらうことが大切だと考えています。イオングループの従業員数は現在約50万人。その50万人が商品を理解していなければ、お客さまにも伝わらないと思っています。そこで、2年ほど前からコミュニケーション戦略のひとつとして、従業員教育支援にも力を入れています。

——どういったことをされているのでしょうか?

最新のトップバリュ情報を発信する、イオングループ従業員専用のWEBサイトを管理運用しています。実際の開発担当者による毎月の新商品や季節歳時にあわせた商品紹介ページ、イオングループが一丸となりお客さまにオススメする商品を、従業員がわかりやすく理解できる映像コンテンツ制作など、店頭で従業員がお客さまとのコミュニケーションをとっていく上で必要になる情報発信を行っています。

また、従業員試食会支援を強化し、実際にそのおいしさを理解してもらうことも。さらに春と秋の年2回、主要都市を中心に従業員を対象とした展示会も行なっています。ここでは発売予定の商品や開発中の商品を紹介し、商品理解とともに率直な感想ももらっています。

——そういった場を作ることで、みなさんの声を拾い上げるのですね。

従業員たちはおいしくなければ、はっきりと言いますからね。それを商品開発に活かすことで、改良を重ね販売にこぎつけます。

実際に商品を発注しているのは主婦の方々を含めたコミュニティ社員が多く、商品の近くにいる従業員ほど、市場の動きをよく把握しています。彼らが実際に食べておいしければ、その商品をお客さまにすすめたいと思うし、売り場にどんどん並びます。おいしさを理解しているがゆえに積極的に販売してくれるので、お客さまにも商品の良さを伝えることが容易になります。

お客さまの「幸せ」につながる商品作り

——そうすると今度はお客さまからの声も寄せられ、さらに商品開発に活かせるという循環になるのですね。

気になる添加物や原材料、成分の使用に配慮した、「トップバリュ グリーンアイフリーフロム」シリーズ

その通りです。ありがたいことに、日々コールセンターにはお客さまからの声が届きます。ここ数年で増えているのが、添加物や原材料、成分についてのお問い合せです。

そこで、コールセンターに届いた声や「気になる添加物」のアンケートを実施、集約し、「気になるものは入れない、いらない」をキャッチフレーズに誕生したのが「トップバリュ グリーンアイフリーフロム」シリーズでした。このシリーズの商品は、各種メディアで取り上げていただくことも多くなっています。

——最後に、新たにチャレンジしたいことなど、今後の展望をお聞かせください。

トップバリュ グリーンアイの商品を通じて、お客さまの生活を豊かに、そしてハピネスにしていくことです。お客さまに「この商品を食べるだけで幸せになる」「この商品を使うと生活が豊かになる」と言っていただける商品を作り続けていきたいですね。

そのためには良い商品を開発するのはもちろん、商品の良さをいかにお客さまに伝えるか、そこも重要です。「安全・安心」商品のご提供、トップバリュの訴求活動、その先にあるお客さまのハピネスを叶えられるように、我々だからこそできる価値を形にしていけたらと思っています。