誕生から35年。「カントリーマアム」が年齢を問わずに愛され続ける理由は、シーンに合わせた商品開発にある

書き手 塚本佳子
写真 栃久保 誠
誕生から35年。「カントリーマアム」が年齢を問わずに愛され続ける理由は、シーンに合わせた商品開発にある
子どもの頃はつねに家にストックされていたし、大人になってからは自分で購入して食べている、そんな商品が誰にでも必ずあるはず。ロングセラー商品には、世代を超えて愛され続ける理由があります。

「暮らしを支えるロングセラーブランド」は、長く広く愛され続けている商品にスポットをあてた連載シリーズ。

今回は株式会社不二家の深野勝さんと竹末奈央さんに、今年で発売35周年を迎える「カントリーマアム」についてお伺いしました。

(写真右)深野勝さん
株式会社不二家菓子事業本部 生産本部 商品企画部 部長
カントリーマアムプロジェクトがスタートした1983年に株式会社不二家に入社。製菓菓子の企画・開発・マーケティング、洋菓子の営業・マーケティング・マーチャンタイザー・工場長などを経て、現在は菓子事業本部 生産本部 商品企画部長に。創成期からカントリーマアムの改良に携わる。

(写真左)竹末奈央さん
株式会社不二家 菓子事業本部 生産本部 商品企画部 商品企画二課
カントリーマアム好きが高じて、2011年に株式会社不二家に入社。営業職を経て、4年前にカントリーマアム担当に。社内に「カントリーマアム女子部」を発足したり、ファンイベントを企画したり、カントリーマアムの普及に力を注ぐ。

「外はサックリ! 中はしっとり」をコツコツと追求し続けて35年

——今年で発売35周年を迎えた「カントリーマアム」ですが、誕生の経緯を教えてください。

深野勝さん(以下、深野)
当時、当社はお菓子の総合メーカーを目指していました。すでにキャンディーには「ミルキー」、チョコレートには「ルック」と柱の商品がありましたが、ビスケット・クッキーはありませんでした。そこで、お菓子の総合メーカーを目指すべく、開発したのが「カントリーマアム」です。

——35年の間に、なんと40回以上もの改良を繰り返しているとお聞きしました。

深野
はい。ロングセラー商品を生み出すには新しいお客さまはもちろん、いかにリピーターを獲得できるかが重要です。継続してご購入いただくには改良、新たな試みを続けることは必要不可欠です。

とくにカントリーマアムの最大の特徴である「外はサックリ! 中はしっとり」という食感をどう追求していくか、それが改良、新商品開発の大きなポイントになっています。

竹末奈央さん(以下、竹末)
カントリーマアムはとても繊細なお菓子なので、製造条件や材料など、些細な変化にも影響を受けてしまい、目指す食感にいきつくまでは大変です。でも、サックリとしっとりの2つの食感が味わえる2層生地にこだわり、手間ひまをかけているからこそ、おいしいバランスが生み出されているのだと思います。

ニッチなカントリーマアムで、新たな食シーンを提案

——定番のカントリーマアム以外にも、16枚入りの「大人のカントリーマアム」シリーズなど、種類がずいぶん増えましたね。

深野
カントリーマアムはトレーに入った分包型のパッケージからはじまり、1987年に中身が個包装に変わり、1992年に徳用サイズを発売しました。包装形態の違いのみで品質は一緒という商品展開をしばらく続けていましたが、徳用サイズに比べ品質にこだわった商品をつくりたいという思いから「大人のカントリーマアム」シリーズが誕生しました。

竹末
定番のカントリーマアムは、子どもを中心に家族みんなで食べるイメージがありますが、子どもが大きくなってお菓子を卒業してしまうと大袋は手に取りにくいし、大人にはちょっと甘めなんですよね。

そこで、子育てがひと段落した方々に向けた「大人のためのおやつ」として、自分一人で食べる、夫と二人で食べるなど、子どもが小さかった頃とは違う食シーンを提案することで、「昔よく食べていた」といったお客さまに再び手にとっていただくきっかけになればと考えています。

——「大人のカントリーマアム」シリーズの反響はいかがですか?

深野
おかげさまで好評をいただいております。国産小麦など素材にこだわっている部分が評価されているのかもしれません。

竹末
さらに大人目線で改良した「厳選素材カントリーマアム」が2月26日に発売されます。「香ばしバニラ」はより厳選素材にこだわり、国産小麦に新たに全粒粉も加えています。また「濃いココア」はカカオ感がアップして、ほろ苦さや口どけ感などが大きく変わりました。かなり自信があるので、ぜひ食べていただきたいです。

2月26日に発売される、「厳選素材カントリーマアム」シリーズの「濃いココア」。お二人も最近一番気に入っている商品だとか。

お客さまと一緒に新しい価値をつくり上げる

——コミュニケーション戦略はどのようなことを行っていますか?

竹末
お客さまとカントリーマアムが出会うきっかけを増やしていくために、食べ方の提案や、イベントを開催して実際に試していただく機会を増やしています。

——具体的にどういったイベントをされているのでしょう。

深野
毎年夏に開催していたのが、カントリーマアム食べ尽くしというイベントです。昨年は巨大カントリーマアムを食べるという企画もありましたね。

竹末
大量のカントリーマアムを用意して、好きなだけ食べてもらうイベントです。会場を歩いていると感想を言ってくださる方もいて、お客さまと直接触れ合える場として、とても貴重な機会になっています。

また店頭などで、温めたり、冷やしたり、アイスと合わせたり、新たな食べ方を実際に試していただくこともあります。SNSやアンケートなどでお客さまの食べ方をリサーチしながら、我々も新しい食べ方を提案していき、一方通行にならないように、お客さまと一緒に新しい価値をつくりたいと思っています。

——社内には「カントリーマアム女子部」というのがあるそうですね。

竹末
はい、カントリーマアムが大好きな有志を集めてつくった部署横断のコミュニティです。店頭販促物としてミニ巾着トート(バッグ)をつくったり、ファンイベントを開催してみたり、厳選素材を提供していただいている農家を取材した映像をローカルテレビで放映してもらったり。女性に共感してもらえる施策をあれこれ行っています。

深野
カントリーマアム女子部はとてもいい活動をしてくれているので、その後、彼女たちの活動を参考に、何かあるときは部署問わず若い社員を集めてチームをつくるようになりました。「カントリーマアム35周年」にまつわる取り組みも営業や開発などの部署を超えて、プロジェクトチームをつくっています。

「ソフトクッキーといえばカントリーマアム」を津々浦々まで浸透させる

——35周年の取り組みとはどのようなものなのでしょうか。

竹末
「Find Your Country Ma’am」をテーマに、お客さまとカントリーマアムを繋ぐプロモーションを計画しています。第一弾として、お客さまから応募いただいたカントリーマアムと一緒に写っている動画を使用し、長編ムービーをつくるというキャンペーンを2月からスタートします。

深野:当社はここ数年、「ミルキー」の65周年、「ルック」の55周年、「ホームパイ」の50周年と主力ブランドの周年が続いています。周年記念をきっかけに大々的に新商品を提案することで、周年記念商品はもちろん、その他の商品、さらには不二家というブランドの活性をはかるマーケティング活動を行っています。

——最後に今後チャレンジしたいことをお聞かせください。

竹末
お客さまに「感動」「発見」「楽しさ」「驚き」を感じてもらえるようなカントリーマアムの改良、新商品の開発はもちろん、イベントなどの企画をもっと増やしていきたいですね。「また食べたいな」「誰かに教えたいな」と感じてもらうには、よりお客さまの視点に立った商品づくりとプロモーションが必要です。

深野
そうして、全国津々浦々まで「日本のソフトクッキーといえばカントリーマアムだよね」と言っていただけることを目指していきたいですよね。

竹末
最近は、お客さまの嗜好性も細分化しています。時代のニーズに合わせた商品づくりにもしっかり取り組んでいくことで、今後何十年も愛され続けるブランドに育っていくのかなと。

今の時代に合ったカントリーマアムづくりに挑戦することで、一人でも多くの人をハッピーにできればいいなと思います。