「暮らしを支えるヒットブランド」では、そんな商品やサービスにスポットをあて、ヒットの理由を紐解いていきます。
今回、注目したのは《「ブレンディ®」スティック》。インスタントコーヒー、砂糖、クリーミングパウダーが1本になった手軽でおいしいスティックタイプのカフェオレを開発。「スティック商品」という新ジャンルを牽引してきた味の素AGF株式会社の伊藤英郎さん、三橋祐太郎さんにお話をお聞きしました。
(写真右)伊藤英郎さん
味の素AGF株式会社 リテールビジネス部 Stickグループ グループ長
営業、販売マーケティングを経て、2015年より現職に。商品開発のコンセプト設定からローンチ、プロモーションまでスティック形態の商品全体をグループ長として統括する。お気に入りの《「ブレンディ®」スティック》は「カフェオレ 甘さなし」。
(写真左)三橋祐太郎さん
味の素AGF株式会社 リテールビジネス部 Stickグループ グループ長代理
リキッドコーヒー、インスタントコーヒーの開発部署を経て、2018年よりStickグループに。「ブレンディ®」ブランドのスティックを担当。お気に入りの《「ブレンディ®」スティック》は定番人気の「カフェオレ」。
ほっとくつろげる優しいカフェオレを手軽に
――「ブレンディ®」のブランドはいつ誕生したのでしょう。
伊藤英郎さん(以下、伊藤)
日本で生まれたのは1977年です。当時はコーヒーといえば「男性的」「トラディショナル」といったイメージが強かったのですが、当社としてはそれとは違う「カフェオレ」という軸で商品を設計しようという狙いがありました。
喫茶店で出るような産地や銘柄にこだわるコーヒーではなく、ミルクのクリーミーな味わいや優しい甘さ、くつろぎ感を楽しめるカフェオレをお届けしたかったんです。
1995年にはブランドのイメージキャラクターとして原田知世さんを起用することで、女性がメインのターゲット層であることを明確にアピールする方向に大きく舵を切りました。家事の合間やリラックスタイムに飲みたくなるような優しい味をイメージしています。
――かつては家で飲むコーヒーといえば、インスタントコーヒーの大瓶が主流でした。スティックタイプの《「ブレンディ®」スティック》が2003年に開発された背景は?
伊藤
カフェオレの優しい味わいをもっと手軽に味わっていただきたかったからなんです。
ただ、組み合わせる要素が多いと味もブレてしまいがち。瓶からスプーンで取り出したコーヒーの量だけでなく、牛乳や砂糖の量によっても味が違ってきます。
三橋祐太郎さん(以下、三橋)
そうした課題をクリアしつつ、一杯分のインスタントコーヒー、砂糖、クリーミングパウダーを1本のスティックに入れた個包装タイプのカフェオレが生まれました。
17年目を迎えた現在は、スタンダードな「カフェオレ」をはじめ、「カロリーハーフ」「甘さなし」「大人のほろにが」「エスプレッソ・オレ 微糖」「カフェインレス」と、お好みの味やその日の気分で色々選べる豊富な商品ラインナップをご用意しています。
その日の気分で選べる自由もスティックの利点
――レギュラー商品は11種類と豊富ですが、シリーズで一番人気は?
伊藤
定番の「カフェオレ」ですね。ブランド全体の割合としても杯数ベースでは圧倒的なご支持をいただいています。
また2015年から販売している「カフェインレス」も好評を頂いています。カフェインを抜いた分のおいしさが損なわれないように、組み合わせを工夫し、品質設計を引き上げることでようやく発売に至った商品です。
三橋
最近は普段のメニューでもカフェインレスを選択される方が増えてきていますよね。《「ブレンディ®」スティック》ではカフェオレ以外にも、ココア・オレ、紅茶オレ、抹茶オレ、ほうじ茶オレなど、バラエティ豊かなフレーバーを用意しています。
伊藤
コーヒー、紅茶、ココア……。それぞれにどんなリラックスを求めるかは、実は微妙に違うんです。コーヒーを飲むときはやや覚醒寄り、リフレッシュしたい気分だったりする。紅茶はふわっとくつろぎたいとき、ココアは甘さに癒やされたいときではないでしょうか。
そのときどきの気分に応じたものを選べる気軽さもスティックの良さだと思っています。
働く女性が増えたことでコミュニケーションの形も変化
――シリーズ発売から16年が経った現在、お客さまとのコミュニケーションや戦略も変化してきたのでは?
伊藤
それはもちろん大いにあります。たとえば、昔の「ブレンディ®」のテレビCMでは、原田知世さんが掃除機をかけた後のリラックスタイムにカフェオレを飲む風景が描かれています。
ですが最近では女性の有職率が急増していますよね。その変化に応じていくためには、「ブレンディ®」というブランドの根幹を守りつつ、新たな形でお客さまとのコミュニケーションを取り入れていく必要性も感じています。
三橋
働く女性たちの声を調査したところ、充実した一日を送るには「朝、家族が起きてくる少し前の、ひとりの時間」の過ごし方が大事という意見が多く寄せられました。
お弁当を作ったり、家族を起こしたりする前のほんの少しの自分だけの時間に、カフェオレを飲んで気持ちのスイッチを入れる。
そういった気持ちに寄り添う形で2018年末から始めたのが《「ブレンディ®」スティック 朝オーレ! キャンペーン》です。EXILE/三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEでパフォーマーを務める岩田剛典さんをイメージキャラクターに起用し、SNSを通じて前向きな朝を応援するメッセージを打ち出しています。
岩田さんのファン層は比較的若い方が多いため、コミュニケーションの伝達スピード・量ともにこれまでの手法とはまったく違ったのが新鮮でした。
伊藤
岩田さんはSNS でのフォロワーも非常に多いので、《「ブレンディ®」スティック》を飲んだことがないお客さまにも認知が拡大できた、という感触があります。
ブランドの根幹のキャラクターはこれまで同様に原田知世さんですが、新しいキャラクターの方に“起爆剤”になっていただくことが、新たなよい刺激につながるのではと思っています。
スティック市場を牽引するブランドとしての責任
――今後、《「ブレンディ®」スティック》シリーズとして挑戦したいことはありますか。
三橋
《「ブレンディ」スティック》シリーズは現在、おかげさまで年間約15億杯も愛飲いただいています。ここまで生活に浸透できたのは、カフェオレから昨年秋に発売をしたほうじ茶オレに至るまで、コーヒー以外のフレーバーラインナップが充実していることはもちろん、スティック1本で完成された味が誰でも飲める利便性にあると思っています。
一方でまだまだ、「自分好みの味がない、見つからない」というご意見もあるので、多様化するニーズや嗜好にどこまで応えていけるのか、ということは課題だと思っています。
伊藤
《「ブレンディ®」スティック》シリーズは、スティック市場全体の約50%のシェアを占めていますが、スティック市場というカテゴリー自体を成長させる、ひとつのカテゴリーとしてしっかり認知していただくために何ができるか、という意識は常に念頭にあります。
プロダクト担当者は《「ブレンディ®」スティック》というシリーズをさらに磨くために何ができるかを、カテゴリーを統括するマネージャーは今の製品設計や品種では届かない層に対して、どのような価値提案がふさわしいか、それぞれに考察を深めていかなければならないと考えています。
そういった積み重ねと挑戦がスティック市場全体を引き上げることになり、ひいては「ブレンディ®」というブランドの価値を継承・拡大することにつながっていくと思っています。