お互いのそもそもの資質や、編集チームの構成についてお話した前編に続きまして、後編では、たくさんの女性スタッフを抱える管理職同士、「女性社員のマネージメント」についてお話ししました。
女性社員と働いている方、女性社員をまとめている方、そして、女性上司との関係にちょっと悩まれている方にも、ちょっとしたヒントがあるかもしれません。ふたりの率直な対談をぜひご覧下さい。
女性社員たちの空気を肌で感じてマネージメント
西山
わたし、マネージメントということで、特別にやっていることなんてないなと思っていたんですけど、ひとつずっと守っていることがありまして。
佐藤
ぜひ聞かせてください!
西山
「座席」についてなんですけどね。編集長って大きい机が与えられて、編集部のみんなの島とは、席が少し離れているのがよくあるパターンなんですよね。でも、私は、編集部の席と自分の席を離さないでほしいと総務にお願いしているんですね。
こんなかんじで…。
(イラストを描いて説明してくださいました)
佐藤
編集部のスタッフさんたちの島に西山さんの席も含まれているわけですね。確かにぴったりと席がくっついていますね。これは何故ですか?
西山
みんなの様子がわからなくなるのが嫌なんです。この辺は、楽しそうでいいなとか、なにか停滞してるなとか、この配置だと盛り上がるなとか。この辺は時短で早く帰っちゃう人が多いから、この子が寂しいなとか、そういう感じを分かっておきたいんですよ。
佐藤
すごくわかります!顔つきや顔色で、あれ?今日、コンディションがあまりよくないのかな?って感じたりもしたいですよね。
西山
そうそう。
みんな30代も半ばすぎると、ライフスタイルが仕事に出てくるので、その人のペースをある程度把握しておかないと間違った仕事の振り方になっちゃうんですよね。ざっくりとでいいんですけど、その人のライフスタイルみたいなものは掴めて、気配を感じられる距離でいたいと思っています。
もちろん、夫婦仲はどうなの?とか、そういう込み入った質問はしませんけど(笑)。
佐藤
私も、いちおう自分の個室もありますが、みんなと同じフロアで、会社の端の全方位が見れる場所にも席を設けています。それぞれの気配や聞こえてくる話からキャッチできる情報は、マネージメントにかなり役立っていると感じていますね。
あと、うちの会社は、みんなに「私語も大切にしてね」と言っています。何気ない会話から面白い企画が生まれたりしますし、思ったほど売れなかったね、あれが悪かったんだよとバイヤーが話していたりするのを聞くことで、私にとっても良いインプットになるんですよね。
社長である兄の青木は、ちょっと離れたところにぽつんといるんですけど、わたし、ああいう状態になったら寂しくて死ぬって思います(笑)
西山
寂しいですよね。
佐藤
でも、その距離感を取らないといけないのかなぁと考えたりもするんですよね。
女性の部下は可愛くて共感しすぎてしまう
西山
もっと怒ったりしたほうがいいのかなって思うこともありますよね。厳しさに憧れるというか。自分も厳しくされたことで、はっと気づいて直せたこともあるから、厳しい存在の大事さも分かってるんですけど。
あー、男性の部下だったら言いやすいのかな。女子は可愛いから言えない…。
佐藤
本当にそうなんです。こういっちゃあ、なんですけど可愛すぎるんですよ。
別に、妹みたいとか、子どもみたいとかというわけではないんですけど、女性が相手だとついつい自分を大事にするように、大事にしたくなるというか。
決して男性のスタッフが大切じゃないわけではないのですが、相手が異性だと、不思議と「それはいい」「だめ」みたいなもっと単純なコミュニケーションができるっていうか…。
女性同士は共感しやすいので、共感してしまうことが時に強さや厳しさの邪魔をしてしまわないように気をつけないとと、思ったりはしますね。
西山
わかります。
佐藤
うちの社員は、ほとんどが私より年下ですし、自分がこれまで経験してきた人生のポイントにいたりする人も多いので、仕事やプライベートで悩んでいるときに、共感しすぎてしまうと、リーダーとしての率直さを見失ってしまいそうなことがあったりもして。でも、それは本当の親切でも優しさでもないこともありますからね。
西山
たしかに。
佐藤
青木は突き放してマネージメントできてるなと思います。席も離れていますし。ただ、わたしはトップではなくて二番手の役割なので、自分のところに社内の悩み相談がやってくるのは悪いことじゃないと思っているところもあって。それぞれがそれぞれの距離感をもつことで、会社が機能しているならいいんじゃないかと思ったりもしてるんです。
西山
悩むところですよね。
女性のモチベーションは、自分が「機能」しているかどうか
佐藤
女性にとって一番モチベーションが下がっちゃうときってどういうときかなって考えたんですけど。
西山
お、教えてください!
佐藤
もちろん評価や報酬も大切だと思うのですが、それが一番ではないなと思っていて。私自身もそういうところがあるんですが、何が一番モチベーションを下げるかというと、自分が機能できてないなって感じてしまうときだと思っていて。つまり、役立てていないと思うことが、女性の士気を下げるなと思います。
西山さんのお話を聞いていて、任されてるとか、支配されてない、裁量をある程度与えられてるというのは、機能できている実感を持ってもらうことと、すごく紐付いていると思うんですよね。
結局、リンネル編集部の方々が、「西山さんの雑誌」を作っていると思うのではなく、『リンネル』を作っている、「私たちの雑誌」を作っていると思うのが、女性の動機としては一番じゃないかと思うんです。実際は、どうですか?
西山
そうあってほしいなと思います。「雑誌は編集長のもの」という人もいるんですけど、私自身はそんなことは思わなくて、編集部のみんなには、自分が考える『リンネル』というものや、読者が何を読みたいだろうかということを、それぞれが考えてほしくて。
その考えた結果が集まった時に、ずれているというか、丸いお弁当箱に詰めたつもりが、みんなの企画を詰めたら四角いお弁当箱に変わってしまっていたら、また丸に戻すのが私の役目だと思っています。
とってもありがたいことですけれど、うちも、「北欧、暮らしの道具店」さんも、編集部に居るのは、ここに携わりたいと思ってきている人ばかりで、役に立ちたい、機能したいと思ってきている人ばかりですよね。だからこそ気をつけなければいけないことってありますよね。
佐藤
本当にそうですね。そういう人たちだからこそ、機能できるように、大切にしないとという責任感はあります。
女性社員が欲しているのは「正しい公平感」
佐藤
あと、自分も女性なので分かりますが、女性は他人と比べちゃいますよね。
西山
比べちゃいますね。そのために「公平感」は大切にしないとと思っています。
佐藤
公平は大切ですね。でも、公平にいこうと思っても、能力の差は出てきますし、在籍年数による違いもあったりすると思うのですが。
西山
差や違いはもちろんあるので、その上で今現在自分がやるべきこと、自分ができることを正しく分かってもらうということが何より大切なんじゃないかと。
佐藤
なるほどー。本当にそうですね。単なる平等と、公平は違いますね。女性は特に、正しい公平感を求めている気がします。
西山
公平じゃない!って思いはじめると、あの人と私は何が違うの…とかで苦しくなっちゃいますよね。でも、難しいんですよ、これが。
佐藤
正解がない話ですよね…。
西山
そして、こういう考え方に対して、「あなたたち、リーダーとしてまだまだ甘いなっ」て思われる方もいらっしゃるかもしれないですよね。
会社を大きくするとか、会社の利益をシビアに突き詰めているような管理職の方は、そういうんじゃだめなんだよねーとか、思われると思う。
佐藤
そうですよね。
でも、西山さんも私も、作っている媒体の空気感でいうと、やっぱりチームの雰囲気が漏れ出るじゃないですか。
西山
そうそう、ほんとに。
佐藤
だから、そこはできたら嘘がないチームで、世界観を作りたいと思います。
西山
でも、だからって、いつでも仲良しチームってことでもなくていいのかなと。そこまで雑誌を偶像化したくないというか、夢になりすぎたくないんですよね。
リアルでいいと思っていて。なんか揉め事が起こりそうだとか、そういうことが漏れ出てもいいと思います。いろんなことを、オープンでいいんじゃないですかね。
女性の先輩に葛藤を見せて欲しかった
西山
でも、まあ、そうは言ってもオープンにできないことも多くて、結構、孤独な仕事ですよね。
佐藤
孤独ですよね。
でも、思うのは、一人で、葛藤してることを隠したくないなということで。私は若い頃にそういう年上を見たかったし、でも身近にそういう葛藤を見せてくれる年上の人がいなくてやさぐれていたので(笑)
いつも答えを持っていて、今の自分のあり方を正確に言語化できるリーダーには憧れますけど、自分はそうはなれないし、じゃあ、自分のパーソナリティで女性というものをまとめようと思った時に、私が出した答えは、とにかく「正直」でいようということだったんです。
西山
あー、そうか。でも、すごいですよ、それ。良いと思う。
佐藤
できないこともあるんですけど。
何かを聞かれてわからなかった時に、私もそれ分からなくて迷ってるんだよね、そりゃ君たちを迷わせてるよねって言ってみたり、でも明確に答えが見えているときは、どこまでも入っていって口を出すということもあったり。そんな風に、両極端ではあるのですが、そこも含めて、ありのままを見てもらうというか。
でも、もちろん、私で大丈夫なのかなって思いますけどね…。
西山
私も日々、私で大丈夫かなって思ってるし、でも、私で良かったって思われたい部分もありますしね。
佐藤
難しいんですよ。
「できる上司プレイ」でもやってみましょうか
佐藤
共感マネージメントをしないで、女性にもある種の、厳しさを持って、成果を求めて突っ走るリーダーになろうとしたら、それはもう、こうなるぞって決めてなるしかなくて。
西山
プレイですね。
佐藤
そうです。自分の中にあまりにもそういう要素がないので、「できる上司プレイ」「厳しい上司プレイ」から始めるしか無くて。
西山
私は会社員だから、自分がこうあるべきだと思う上司でいれば、それが会社にとってどうかは会社が判断してくれるので、ある意味突っ走れるんですよ。でも、佐藤さんの場合は、自分が会社の運営側でもあるから、間違っても良いわけじゃないから難しいですよね。
佐藤
そうなんです。まあ、究極、間違ってもいいとは思うんですけど…。もう少し規模が小さいときは、私に向いているやり方をすれば、割と結果がでたんですね。
でも、会社の規模が40人くらいになって、自分の思う通りにやるだけじゃ駄目だと思うことが、ちょこちょこ増えてきて、一皮むけるしかないなって思っているところもあって。
西山
そうか、そういう節目か…、リスタートしてるんですね。
佐藤
私は、葛藤がデフォルトなので、落ち込むとかではないんですけどね。
西山
葛藤がデフォルトかぁ。
佐藤
365日そうです。
西山
うーん、もっと楽に考えてほしいけど、小さくないものを背負っていて、それを大きくしていこうとしてる人だと考えると、それはやっぱり自分も色んな辛さを引き受けないとということもありますもんね。根本的に、広げなくちゃいけないのだろうか、とかも悩まれるでしょうし。
佐藤
ほんとにそうです。
西山
自分たちが良いものだって思うからには、たくさんの人に知ってもらいたいですもんね。でもなんかなー、楽になってほしいなー。
佐藤
楽にしてくださいよ。なにか良いこと言ってください〜。
西山
そう、なんか、こう、締めの言葉をビシって言ってあげたいけど、ごめん、なんにも浮かばない!
でも、ある程度期間をもうけて、1年間くらいは、プレイをしてみようかなとか、自分に課すアソビみたいな、そういう風に思うくらしかないですよね。
佐藤
プレイしか、葛藤を楽しむ方法はないと思います。
西山
うん、ざっくり考えましょう!
佐藤
ざっくりですね!うん、そうですね。
あーー、今日西山さんとお話して、気配を感じながら雑誌をつくるとか、公平感のお話とか、良い話を聞けまくりました。想像以上に、すごく、元気が出ました!
今日は、自分の話はあんまりできないと思ってたんですけど、私、すっごい自分の話しちゃった、すみません!
西山
両方が両方の話を話すって面白いですね。
でも、私、関西人なのに全然話がおもしろくないことがコンプレックスなんですよね。関西人としては、しゃべるなら笑わせないとって。
佐藤
兵庫ですよね。関西の方はハードルが高い!
私、一回、西山さんの下で働きたいです。結構役立つ部下だと思いますよ。
西山
めちゃめちゃ役立ってくれると思う!
佐藤
インターシップかなにかでお願いします。
西山
では、私もクラシコムさんで働きたいです。
佐藤
西山さんなら、顔パスです。
西山
なにか一緒にやることがあるといいですね。うん、わたしも脳内プレイしてみよう。
佐藤
ぜひ、ぜひ!
最後にお写真をとってびっくり。まるで双子コーデのようなお二人でした。
西山さんが編集長になられた経緯、編集部の作り方などなど…こちらも、ぜひご覧ください。
『【前編】「編集部の作り方」ってどうしてます?』
■雑誌ご紹介
『リンネル』
“心地よい暮らしと装い”をコンセプトに、201
『大人のおしゃれ手帖』
40~