2022.06.03

LIXILは「半歩先をいく住まい」をどのように提案するのか? コンセプト設計のアプローチに迫る

書き手 クラシコム 高山
LIXILは「半歩先をいく住まい」をどのように提案するのか? コンセプト設計のアプローチに迫る

お取り組み企業担当者様インタビューでは、当初抱えていた課題やクラシコムと一緒に取り組んだことで得た気づきなどを担当プランナーと一緒に振り返っています。

今回お話を伺ったのは、LIXILで暮らしと空間の「コンセプトプレゼン」を担当する宮本洋介さんと金田友恵さん。

LIXILは2005年から毎年、暮らしの豊かさ・空間の心地よさを実現する半歩先行く住まいのトータル提案、コンセプトプレゼンを全国のビルダーさんに行ってきました。これまでのメーカー視点ではなく、生活者視点でコンセプト開発する必要性を感じられ「北欧、暮らしの道具店」がそのパートナーとしてご支援しました。

BRAND NOTEやBRAND MOVIEといったお取り組みではなく、コンセプト開発支援という取り組みの裏側について、担当プランナーの高山がうかがいました。

お話いただいたのは、

株式会社LIXIL
LHT TH統括部 TH戦略部 ハウジング企画G グループリーダー
宮本洋介さん

株式会社LIXIL
LHT TH統括部 TH戦略部 ハウジング企画G 主査
金田友恵さん

です。

半歩先を行く、豊かな暮らしを提案

高山
お二人は今のトレンドを踏まえて暮らしや空間の提案をされていますが、そのコンセプトプレゼンというのはどういったものでしょうか。

金田
コンセプトプレゼンはLIXILで2005年から行っていて「暮らしの豊かさ・空間の心地よさを実現する半歩先行く住まいのトータル提案」という定義です。今よりちょっと先の新しい気づきを取り入れた住空間をトータルで提案しています。

宮本
私たちのミッションは、市場やトレンドを踏まえ、暮らしや空間とともに商品を提案することです。コンセプトを決めて、今のライフスタイルを反映した1棟の住宅を作り、その中にLIXILの商材を組み込んでいきます。これをビルダー様に提案し、それがビルダー様からエンドユーザー様への提案に使われるといった形で、BtoBtoCで活用されることになります。ときにはこのコンセプトを「そのままモデルハウスとして建てたい」と言っていただくこともあります。

高山
今回のわれわれとの取り組みのように、外部のパートナーと一緒にコンセプトを考えていくアプローチはいつごろから始まったのでしょうか?

金田
従来も企業や建築家、設計事務所に協力いただきながら提案を作ってきましたが、コンセプトから一緒に練っていくのは今回が初めてでした。これまでは主にプランだけを外部に依頼したり、家具をカスタマイズで作れるスタートアップ企業とコラボして在宅ワークの空間をデザインしたり、といった協業をしてきました。

高山
なるほど。コンセプトが先にあり、そこにあわせた形でパートナー企業との協業を検討するというプロセスが主だったんですね。2021年の取り組みとしてわれわれ「北欧、暮らしの道具店」をパートナーに選んでいただいたきっかけは何でしょうか。

金田
一番のきっかけは、私が「北欧、暮らしの道具店」さんのファンだったことです。育児と仕事でモヤモヤすることもありつつ、でも日々幸せに身の丈に合った暮らしを送れたらいいな、という想いを抱えていたので、企業理念に深く共感していました。

そしてやはり、商品の使い方や魅力を伝えることがすごく上手だと思っていて、その術を学びたいというか、協業する中で何かヒントを見つけられたらいいなという思いがありました。

宮本
商品が暮らしにうまく溶け込んで提案されていると思いました。ちょうどLIXILのサッシ事業部との取り組みもやられていて、今までのサッシの訴求の仕方とはやはりちょっと違うなと。

LIXILでも機能ばかりではなく、ライフスタイルに合わせた提案に注力はしてきているんですが、まだまだ商品が先に立っている。そこが「北欧、暮らしの道具店」さんの場合は暮らしとうまく融合されていたので、ぜひお願いしたいと思いました。

高山
実は、今回の取り組みは「北欧、暮らしの道具店」としても初めての形でした。というのも具体的な記事・動画のコンテンツを作って弊社サイトに掲載する形ではなく、今回はコンセプトを一緒に考えていくという取り組みでしたよね。

金田
毎年毎年やっていると飽きられたり、「去年と変わらないじゃん」と思われたりもするので、提案するコンセプトには常に新しい要素も入れたいと考えています。でもあくまで「半歩先」なので、ぶっ飛びすぎていないことも大事。「北欧、暮らしの道具店」さんと協業することで、そのバランスの中で新しい価値や気づきを得たかったんです。

N1分析だから気づけたターゲットの価値観

高山
まずは弊社のネットワークを活かして2名の取材協力者さんをアサインして、その方へのN=1分析としてインタビューを計4回6時間ほど行いましたよね。

金田
北欧への移住経験もあるライターさんともう1名は料理研究家の方にお話をうかがいましたが、これまでにない発見が多かったです。

例えば、北欧の暮らしって自由なイメージがあったのですが、水曜日のことを「小さな土曜日」と呼びあえて時間で区切ることで、豊かに暮らすための工夫をしていると聞いて、それは新しい考え方だなと思いました。最終的なコンセプトプレゼンのタイトルもそこでの気づきを反映したものなんです。

さらに、北欧的な考え方では「キッチンは工夫したくない」とおっしゃっていて。100均グッズを買ってきて工夫するのは嫌、あらかじめしつらえられているのがよい、といった価値観も、北欧特有の機能美を大事にする文化なのかなと思いました。こういった情報は新鮮で、今まで行っていたグループインタビューの中では出てこなかったと思います。

高山
今回、1人に対して1時間半ほどのインタビューを2回行なったので、従来のグループインタビューと比べると、情報量の多さもしくは深さの違いを感じられたというところでしょうか?

宮本
そうですね。私たちもこれまで何度もグループインタビューはやってきたのですが、一般の人たちを5名程度集めてお話を聞くものでした。
今回、N1分析のメリットだと感じたのは、コンセプトのターゲットである人たちの価値観や趣味趣向を深掘りできて、その人たちに響くキーワードが見出せるということ。

ただ、インタビューさせていただく人を探すのが難しいと思うんですが、今回「北欧、暮らしの道具店」さんに世界観の合った人たちをリクルートしていただきました。これまでのアンケートやインタビュー調査とは違う形で、専門家の方にお話を聞けたのがすごくよかったと思っています。

高山
われわれもいざやってみて気づきになったのは、N1分析のインタビューは、普段行なっている取材と基本的には一緒だなと。今までいろんな方を取材し、その暮らしの背景にある思いや考えにたどり着くために「なぜそうしたのですか?」「なぜそう思われたのですか?」等の深層心理にアプローチする質問をしてきました。そういった取材力や人とのリレーションが、調査という領域においても役に立てるかもしれないと、今回の取り組みを通して感じました。

定量と定性の間に、すくいとるべき大事なことが隠れている

高山
N1分析の後は、出てきたワードを整理しながらコンセプトを仮置きし、その強度を検証するために「北欧、暮らしの道具店」のお客さまにアンケート調査も実施しました。回答に5分以上かかるボリュームでしたが、600件以上の回答数が集まり、フリーアンサーにも多くの方に回答いただくことで、強度の高いコンセプトであることを確認できましたね。

金田
ユーザーの方々の「自分なりに暮らしをよくしたい」という熱量を感じました。皆さん暮らしに興味があって、アンケートに答えることで自分の暮らしや考えていることも整理できる、そういう思いで答えていただけた気がします。その点がすごくよかったです。

高山
たしかに、私もそう感じました。アンケート回答に応じてインセンティブがあるという設計ではないので、報酬のために答えるのではなく「北欧、暮らしの道具店」に自分のホンネや考えを知ってほしいという動機で答えていただいた気がします。

金田
もちろん大規模な定量調査も大事ですが、私たちが作っているコンセプトプレゼンにおいては、ターゲットを絞ってリアルな声を聞く方が新しい気づきを得やすいです。

N1と大多数の間の「いくつか」の声に、大切な物事の真理があるんじゃないかと考えてきました。N1の声は特殊解として切り捨てられがちです。一方、定量調査で得た大多数の声はデータとして信頼できますが、「まあそうだろうね」という当たり前の情報しかとれないので新しい発見はしにくい。

長年、ここの間を上手くやりたいと考えてきました。まさに今回、N1と定量の間の声もちゃんとすくい上げて大事にできたのは、よかったと思っています。

共感してもらえる商品提案を

高山
最後に、今後「北欧、暮らしの道具店」に期待したいことや、一緒にできたら面白そうな取り組みのアイデアなどはありますか?

宮本
これからは、商品を立てるよりも生活者・消費者の暮らしに寄り添って提案することが重要になると思います。特に「共感」をどれだけ得られるかが大事です。これからの住宅の購買層はZ世代になるので、「この企業を応援したい」「この企業が提案してくれる商品に興味を持てる」といった「共感」は絶対に外せないんですよね。そうした共感を生む商品の紹介の仕方を「北欧、暮らしの道具店」さんに提案していただけるとありがたいと思っています。

数年前に北欧をテーマにしたコンセプトプレゼンを行った際、高度成長期の日本が「Time is money」の思想だとしたら、北欧の考え方は「Time makes you happy」だという対比が見えてきたんです。北欧の人たちは、心地よい時間を過ごすためにどうしたらいいのかをすごく考えている。そういった考え方を提案してもらえると、これからの若い世代にもすごく共感されるのではと期待しています。

金田
「北欧、暮らしの道具店」さんもオリジナル商品を作っていますよね。例えば、玄関ドアに付ける雑貨を最初から弊社の商品と合う形で作るなど、一緒に商品開発できたら面白いなと思います。