2022.02.22

読者の約4人に1人がブランドサイトへ。象印マホービンが情緒的価値を描くことで生まれた成果とは

書き手 阿部 花恵
読者の約4人に1人がブランドサイトへ。象印マホービンが情緒的価値を描くことで生まれた成果とは

お取り組み企業担当者様インタビューでは、クラシコムとのお取り組みのきっかけやその後の反響などを伺っています。

今回お話を伺ったのは、象印マホービン株式会社でマーケティングを担当する今水陽一さん。

2020年5月に調理家電シリーズ「STAN.」、11月に同社の主力商品である「ステンレスマグ」(SM-ZA)と、2回にわたってタイアップ記事「BRAND NOTE」のお取り組みを行いました。

「デザインに対する高評価はSNSで多く集まるものの、それぞれの製品が暮らしにもたらしてくれる価値を伝えきれていない」と話す今水さん。そうした状況に対し、BRAND NOTEが果たした役割と得られた成果とは?

聞き手は、クラシコム ブランドソリューショングループマネージャーの高山です。


(写真左)
象印マホービン株式会社 マーケティング部
今水 陽一
広告宣伝を中心としたブランディングと、主に炊飯ジャー、STAN.シリーズのプロモーション、公式SNSの運用企画を担当。

(写真右)
株式会社クラシコム 取締役 事業開発部 部長 ブランドソリューショングループマネージャー
高山 達哉

 

暮らしのなかで抱く「こんな機能があったらいいな」を叶える

――今回お取り組みしたSTAN.シリーズとステンレスマグ(SM-ZA)について、改めて伺えますか?

STAN.は2019年2月に登場した、今の時代に必要な家電・道具として暮らしに寄り添う調理家電シリーズです。

STAN.とは、STANDBY、STANDARD、STANCEの3つの言葉が由来。ユーザーの暮らしに“スタンバイ”し、安全で使用しやすい“スタンダード”な製品をつくり続ける。そんな象印の“スタンス”を、シリーズ名に込めています。

現在、IH炊飯ジャー・ホットプレート・電動ポット・コーヒーメーカーの4つの製品があります。

――機能性と、シンプルで削ぎ落とされたデザイン性の両立が話題になりましたよね。

ありがたいことに、SNSで「シックでシンプルなデザインに一目惚れした」というように、うれしい反応が多く見られました。

STAN.のメインターゲットは、共働きや子育てなど、ライフスタイルが多様化している30代。SNSへのリテラシーも高く、暮らしのなかで家電を見せる楽しみにも意識が向いている方たちです。

そうした方たちにとって、慌ただしい暮らしの手助けとなる機能性や使いやすさはもちろん、見せる楽しさも演出できればという気持ちがあったんです。

――デザインのシンプルさでいえば、お取り組みしたステンレスマグ(SM-ZA)も同様ですよね。

社名に「象印マホービン」とあるくらい、私たちは長年にわたってステンレスマグを提案しています。そのメイン商品から、従来のロゴマークである「ZOJIRUSHI」を取り除き、象のマークだけにしたのは、大きなチャンレジの1つでもありました。

そうしたのは、その前にSTAN.シリーズで象マークだけのロゴを採用していて、それが好評を得ていたからなんです。

――ステンレスマグ(SM-ZA)の特徴を改めてお聞かせいただけますか。

ステンレスマグ(SM-ZA)の大きな特徴は、せんとパッキンが一体化した業界初(※)の「シームレスせん」です。

※ステンレスボトルにおいて、せんとパッキンをひとつにしたせん構造の技術(2020年7月30日発表による 象印調べ)。

もともとステンレスマグのパッキンは、保温性や密閉性のために欠かせないパーツです。でも、ユーザーさんからすると「洗うのが面倒」「付け忘れて中身が漏れてしまった」「小さいからなくしてしまった」と、家事をする上でのちょっとした不満でもあって……。

象印が製品開発で大切にしているのは「日常生活発想」。暮らしのなかで抱く「こんな機能があったらいいな」を叶え、家族みんなが安心して使えることを目指しています。

ステンレスマグ(SM-ZA)はユーザーさんが抱える不満を解消し、STAN.では使い勝手はもちろん、「キッチンや食卓で、ずっと眺めていたくなるデザイン」を実現しました。

デザインという表面の良さだけではなく、商品の持つ価値を伝えたい

――高評価を得られているなか、どうして今回「北欧、暮らしの道具店」とタイアップをしようと思っていただけたのでしょうか?

まずSTAN.でいえば、評価は高いものの、デザインにばかり注目が集まっている状態でした。

STAN.があることで「その人の暮らしがどう豊かになっているのか」という本質的な部分が伝わりきっておらず、表現もできていませんでした。

私たちとしては、ユーザーさんがSTAN.を使ったことでどんな気持ちになったのか、そうした変化とともにSTAN.シリーズの想いを伝えたいと思っていたんです。

「北欧、暮らしの道具店」さんなら、機能的な価値だけではなく、情緒的な価値も丁寧に引き出していただける。読者の方からもきっと良いリアクションを得られるだろうと思い、お取り組みを決めました。

――その結果を受けて、ステンレスマグ(SM-ZA)も実施しようという流れになりましたよね。

そうなんです。それもSTAN.でのお取り組みが想定通り、いや想定以上の反応を得られたから。

そもそもステンレスマグ(SM-ZA)は、製品の特徴から外に持ち出すイメージが強いアイテムです。ところが、2020年は新型コロナウイルスの影響で、外出もままならない。

家の中でも快適な温度で飲み物を飲める情緒的価値と、シームレスせんという機能的価値の両方を、読者の共感の得られる内容で表現してもらえたらと思っていました。

リアリティがある構成だからこそ、読者の心に響き結果につながった

――少し結果のお話もでましたが、お取り組みをしてみて、いかがでしたでしょうか?

STAN.でいえば、PVがBRAND NOTEの平均値に対して167%、コンテンツからブランドサイトへの遷移率は27.7%と、ここまでの数値はタイアップ記事で見たことがありませんでした。

ホットプレートでは、たとえばプレートのふちに直接手が触れにくいようつけられている「本体ガード」という機能面と、それがあるからこそお子さんと一緒に安心して調理ができるという情緒的価値を描いてくれましたよね。

それもあって、読者から寄せられた感想(※記事の最後についているアンケートより)に「子どもと一緒に料理を楽しみながらつくれそう」といった声が多く寄せられたことも大きなポイントでした。

こうした声が寄せられるのは、STAN.がもたらす暮らしへの楽しさ、便利さが伝わったからこそ。記事の構成や写真のトーンにリアリティがあるからこそ、読んでくださった方の気持ちに刺さり、こうした声が得られるのだと思いました。

「北欧、暮らしの道具店」さんは、ユーザーさんの気持ちの変化とともに製品の魅力を描くことができる“エモーショナルメディア”だなと思いました。

――ありがとうございます。ステンレスマグ(SM-ZA)については、いかがでしょうか?

こちらも、PVが平均値に対して281%、CTRも高い数値が出ました。

もともと、家の中での使用シーンも要素として入れてもらえたらとお伝えしていましたが、家の中でステンレスマグを使うことって、ちょっとしたハードルの高さがあると思っていました。

でも、シームレスせんでお手入れがラクだからこそ、家の中でも日常的に使うことが苦にならない。ずっと好きな温度をキープしてくれるから、在宅ワークなど、おうち時間の相棒になるなど、自分ごと化して受け入れやすい内容でしたよね。

――モデルの香菜子さんが暮らしに取り入れた様子をリアルな言葉で伝えてくれ、テーマの「ご機嫌をつくるもの」が読者にとっても興味関心の高い内容だったのだと思います。

2回とも、情緒的な価値と機能的な価値の両面で生まれる豊かさや価値を表現してもらえたからこそ、こうした高い成果につながったのかなと思います。

自分たちから発信することももちろん大切ですが、やはりユーザーさんが実際に製品を使ったことで、どのような気持ちの変化が起きたのか、それを伝えることが一番説得力があるなと実感しました。

――最後に、今後はどのような施策を行っていこうと考えているかを伺いたいです。

製品や時代の状況が変わればコミュニケーションの仕方は変わりますが、象印が掲げる「日常生活発想」に基づく一貫した想いは変わりません。

ユーザーさんの暮らしを少しでもよくしたい。その想いはぶらさず、今までなかなか伝えられていなかった象印らしさや、象印製品があることでもたらされる価値を伝えることに力を注ぎたいと思います。

私自身もいち生活者として感じているのは、今は物も情報も多く複雑になっているからこそ、自分らしくシンプルにという考え方が強くなっているということ。

だからこそ、一年でも長く使ってもらえるような品質を目指すのはもちろん、弊社のポリシーである「日常生活発想」に基づき、生活者としての目線を持ち続ける必要があると感じています。

それができれば、自ずと、象印ブランドが生活者のみなさんにとってどんな存在でいたいかという想いが伝わり、いつまでも必要とされるブランドであり続けられるはずだと考えています。