今回は、2018年4月と8月の2回にわたって動画も含めてお取り組みさせていただいた「キリン 本搾り™」。たっぷりの果汁とお酒だけでつくられた缶チューハイについて、キリンビール株式会社の原田桃子さん、 中村美幸さんのお二人にお話を伺いました。
6年連続で過去最高売上を更新してきた「本搾り™」のプロモーション戦略で大切にしていることとは? なぜ数珠つなぎにファンが増えていったのか? 「北欧、暮らしの道具店」とのタイアップを通じて見えてきたことは?
クラシコム中村がお聞きしました。
「果実とお酒だけ」の価値を、どう伝えていくか
──あらためまして、「本搾り™」とはどういった特徴を持つ商品なのか教えてください。
原田
たっぷりの果汁とお酒だけでつくっている缶チューハイです。糖類・香料・酸味料などは一切添加していないため、果実本来の風味を味わっていただけます。
もともとは「居酒屋で飲める手搾りチューハイを缶に入れたら?」という発想をもとにメルシャンで開発されたのですが、2006年にキリングループと経営統合したことで引き継いだ商品です。
──より多くのお客さまに飲んでもらうために、これまではどのようなプロモーションをとってきたのでしょうか。
中村
テレビCMと同じタレントさんでウェブ動画を数パターンつくり、季節限定商品が発売されるタイミングで動画メディアやSNSなどを使って積極的に流しています。
動画は短尺と長尺で目的を使い分けています。短尺バージョンは、まず認知優先。「『秋柑』出た!」といった最重要情報を一人でも多くの方にリーチできることを重視します。対して、30秒くらいの長尺の動画では「本搾り™」の特性を理解してもらうことが目的。濁っているチューハイならではの魅力や、果汁とお酒のベストバランスといった「本搾り™」だからこその物性を伝えることを大切にしています。
──「缶チューハイ」というジャンルは商品の種類がとても多いですよね。差別化を図っていくのはやはり難しいのでしょうか。
原田
そうなんです。2018年も高果汁を謳っている新商品がたくさん発売されましたし、そんな中で「香料・酸味料・糖類無添加」ということがお客さまにどれだけ認知していただけるか、という点が今の課題ですね。
中村
「本搾り™」は飲んでさえもらえれば、必ずそのおいしさをわかってもらえるブランドだと私たちは思っています。ただ、そこまでの経路をつくってあげることが難しい。「チューハイ」というたくさんの商品があるカテゴリーの中で、いかに埋もれずに価値を伝えていくか。今後はそこにしっかりと取り組んでいく必要性を感じています。
リニューアルでファンの間口が広がった
──商品の価値を、正しく理解してもらう。その文脈で「北欧、暮らしの道具店」に声をかけていただいたのでしょうか。
原田
2018年は「本搾り™」を普段から飲んでくださるお客さまってどういった人たちなんだろう、という理解が社内で深まってきた時期なんですね。そういった段階で商品の特性をもっと理解してもらおう、「本搾り™」のお客さまとかけ離れたところではなく、ちゃんとその媒体の文脈に乗せられるところにお願いしたいな、と思っていたときに中村が「北欧、暮らしの道具店」さんを紹介してくれて。
中村
「本搾り™」は一度リニューアルしているんです。以前は「居酒屋のチューハイ」をイメージした、やや男性寄りの商品だったんですね。「酒、果汁、以上!」みたいな(笑)。
原田
どちらかというと玄人っぽい雰囲気の缶チューハイでしたよね。
中村
でも2017年のリニューアルを経て、2018年は無添加、ナチュラルというイメージを打ち出したところ、ユーザー層が一気に広がったんです。ナチュラル志向の女性の方、「どうせなら無添加がいい」という方たちが新たに入ってきてくれた。
原田
「普段から料理をする」「家にお花を飾っている」「アウトドアが好き」「ヨガをやっている」……、ユーザー調査を通じてそういったワードが見えてきたんですね。明るい方、前向きに生活をされている方たちが、次の日の活力やリフレッシュを求めて「本搾り™」を飲んでくださっていることが見えてきた。そこで「やっぱり北欧さんが合うよね」という話になりました。
──ありがとうございます。1回目のお取り組みは以前から「本搾り™」が大好きだった当社スタッフがその魅力を語るという、僕たちとしてはほぼ初めての商品起点の切り口でした。反響はいかがでしたか?
中村
「本搾り™」というブランドの個性や、「本搾り™」がある生活のリアルといったものを、ちゃんと真正面から伝えられた、という手応えがありました。いただいたアンケート結果を見て、北欧さんの世界観を乱すことなく、うまくマッチできたのかな、と感じましたね。
原田
社内にも「北欧、暮らしの道具店」さんを普段から読んでいる読者が複数いるんですが、彼女たちからも「いい記事になってたね」と言ってもらえて。先週末、知人の結婚式に出席したんですが、関西に住んでいる後輩から「原田さんが出てるの見ました!」って(笑)。皆さんからいい反応をいただいています。
企画段階では、正直自信がなかった
──当時の企画書を見返すと、vol.6くらいまでやり取りがありましたよね。なかなかそこまでいくことは少ないのですが、お二人が「北欧、暮らしの道具店」のことを尊重してくれた上で、僕の勝手な解釈かもしれませんが同じチームとして議論してくれていることが伝わってきて、すごくありがたかったです。
中村
1時間くらい電話で話し込んじゃったことも何度かありましたよね。それはもちろん信頼しているからこそ、こちらも色々言っちゃったんですけど。
実は2回の「BRAND NOTE」ともに、企画段階では正直自信がなかったんです。企画としてあまりにまっすぐすぎたし、「本搾り™」を普段から飲んでくださっているクラシコムのスタッフさんにもその時点ではお会いしてませんでしたから。ブランドが伝えたいことと、登場してくださるスタッフさんが言ってくださることが一致するのか自信がなかった。とはいえ、そこを操作するような真似はしたくなかった。
そんな風に迷いながら取材当日を迎えたんですが、スタッフさんのご自宅にお邪魔して、お話してすぐに「ああ、これでよかったんだ」と実感できましたね。私たちと同じくらいか、それ以上に「本搾り™」を好きでいてくださることが伝わってきましたし、ご自身の言葉で「好き」を語ってくださったので。
ファン同士の話で内輪に閉じてしまうのではという懸念もあったのですが、いい具合に聞き手の方が入ってくださったので、すごくバランスの取れた構成に仕上がったと思います。
原田
料理家の真藤舞衣子さんが出てくださった動画も、すごくマッチしていましたよね。真藤さんの生活の中に「本搾り™」が自然に溶け込んでいて。ご自宅で撮影させていただいたのもよかったのかもしれません。
目指すのは「本搾り™」というカテゴリー
――最初のお取り組みをきっかけに、社内外で「実は私も飲んでます」という声があがって、インスタグラムでも「本搾り™」好きの輪がどんどん広がっていって……。そういった流れは僕たちにも新鮮でした。
中村
2019年のブランド戦略の方向性を決める際にも、「BRAND NOTE」での2回の取り組みはラーニングにすごく役立ちましたね。「本搾り™」を好きな人がこんなにたくさんいて、その人たちが数珠つなぎにさらにファンを増やしてくれるんだ、ということが実感としてわかってきたので。
――光栄です。最後に、ブランドとして今後目指していきたいころを教えていただけますか。
原田
「本搾り™」があってよかった、と言ってくださるお客さまをこれからも大切にしていきたいですね。と同時に、新しくファンになってくださる方もどんどん増やしていくことができたら。自分たちの言葉で「本搾り™」の魅力を発信していくこともさらに心がけていくつもりです。
中村
「代替の効かない存在になりたい」というと大げさですが、「チューハイ」の一商品ではあるのですが、そこからさらに「本搾り™」自体がひとつのカテゴリーにまで成長して長く愛されるものであってほしいな、という思いがあります。
「チューハイは飲まない」「自分の飲み物じゃない」と思っている人たちにも、「『本搾り™』ならいいかも」と思えるブランドになっていければな、と。実際そういうユーザーの方々も多いですし、そのことが結果として「チューハイ」というカテゴリーに人を呼び込むことにもつながっていくと思っています。
──お話を聞かせていただき、ありがとうございました。ぜひまたご一緒させていただけると嬉しいです。