2016.12.22

「新しい提案」とは、ちょっとの違和感があるもの?「一番搾り シングルモルト」との取り組みを振り返る

書き手 長谷川 賢人
写真 木村 文平
「新しい提案」とは、ちょっとの違和感があるもの?「一番搾り シングルモルト」との取り組みを振り返る
2015年に「北欧、暮らしの道具店」はスポンサードコンテンツ「BRAND NOTE」をスタートしました。 

クラシコムのスタッフが企業や商品をじっくりと知りながら仕立てるオリジナルの記事は、読者のみなさんにも好評です。

本シリーズでは、その舞台裏として、お取り組みのきっかけや掲載後の反響などを企業のご担当者さまにうかがっています。

今回は、こだわりの製法で作られた特別なビール「一番搾り シングルモルト」でご一緒した、キリンビール株式会社を訪ねました。聞き手は、クラシコム高山です。

「北欧、暮らしの道具店」に感じていた、商売の原点。

──北島さんは以前から「北欧、暮らしの道具店」でお買い物をしてくださっていたそうですね。

北島苑さん(以下、北島) Facebookで「北欧、暮らしの道具店」をフォローしたのが3年くらい前でした。発信している価値観が、わたしの志したい生活や世界観に近いものを感じて、「いいな」と思っていたんです。

最初はバルミューダのトースターを買いました。スタッフさんが体験している姿を見て、「こんな時間が過ごせるなら、朝の時間が変わるなぁ」と。電化製品をそんな気持ちで買ったことはなかったですね。

その後には、P.F.Sのオーガニックコットンタオルを。「洗い続けても、ふんわりとした使い心地が長続きする」というスタッフさんのコラムが心にしっくりきたんです。「肌触りがいいものは他にもあるけれど、長く使うにはこのタオルがよさそうだな」と手にして、今でも愛用しています。

あとは……それ以外にも、いろいろ買っています(笑)。

 ──ありがとうございます!

北島 わたしも仕事でECに携わっていたから感じますが、「北欧、暮らしの道具店」さんには「人間らしさ」がありますよね。お店があり、人がいて、ストーリーがあって、その体験の先で売る……商売の原点みたいなものが根付いている。そんな世界観に惹かれていました。

 ──ECに携わっていた時期もあるのですね。現在はどういったお仕事を?

北島 キリンビールのマーケティング部で、カテゴリー戦略を担当しています。わたしたちのビール類商品はビール、発泡酒、第3のビールと3つのカテゴリーに分けられますが、わたしはビールをメインに、「それぞれのブランドをどういうふうにお客さまへ魅力的に伝えていくか」をトータルに考えています。「一番搾り」の担当は2016年4月からです。

「一番搾り シングルモルト」で重視した、2つのポイント。

 ──「一番搾り シングルモルト」が生まれたきっかけを教えていただけますか。

北島 そもそも「一番搾り」は素材のおいしいところだけでつくった、雑味がなくて、おいしい、という考えでうまれたビールです。日本の暮らしに根付いている、料理の「一番だし」や、お茶の「一番煎じ」にも近い純粋さです。そのコンセプトをあらためてつき詰めて、究極の純粋さを表現したいと考え、1年以上をかけてチームで開発したのが「一番搾り シングルモルト」です。

_q9a0237「一番搾り シングルモルト」(BRAND NOTEコンテンツより抜粋)

──飲む一杯を考え抜く、スペシャルティコーヒーにも近しいイメージですね。

北島 まさに、そうなんです。もっと素材そのものの味を楽しむために、いつもは原料としては複数の麦を使用するところを、オーガニック麦芽1品種だけを100パーセント使うようにしました。それこそ、わたしが愛用しているP.F.Sのオーガニックコットンタオルにも近しい感覚です。

マーケティングの観点からまとめると、「一番搾り シングルモルト」で重視したポイントは2点です。まずは、「一番搾り」ブランドが持っている資産を活かすこと。もうひとつは、ターゲットをライフスタイルや価値観で明確に定義したことです。

「一番搾り」で満たせていないニーズを考え、ブランドが持つ純粋さを大切にしながら、「本質的にいいもの」であることを、これまでとは違う切り口で提案しようと。きらびやかさ、華やかさだけではない、よいものを大切にする人たちへお届けしたいと考えていました。

──なるほど。「一番搾り」が持つ純粋なイメージを活かしながら、より飲む人の姿を具体的にされた商品なんですね。発売後の反響はいかがでしたか?

北島 もともと、“シングルモルト”は一般的にウイスキーで使われている用語なので、お酒に関心のある人たちには理解されやすいだろうとは思っていましたが、「一番搾り シングルモルト」のユーザーは感度の高い女性が多いようでした。

たとえば、SNSを見ていると、平日の夜遅くまで働いている女性が、出来合いのお惣菜と楽しんでくれている。その写真が、食卓のしつらえや飲み方に気を払った、すてきなものばかりなんです。お気に入りのグラスに注いで、自分が満たされ、特別な時間を過ごしている……「北欧、暮らしの道具店」のコンテンツにも近しい世界観でした。

そんな特別感がまず伝わるようにしたかったから、「一番搾り シングルモルト」は栓抜きがいらないキャップにして、ゆったり飲めるような広口びんの形状にしたんです。そのワンシーンにご一緒できているのは、とてもうれしかったですね。

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BRAND NOTEは「信頼のおけるフィルター」になる。

──今回、BRAND NOTEのお取り組みに至ったのは、どのような期待からでしょう?

北島 BRAND NOTEはスタートした頃から見ていました。メーカー目線やプロダクトが先行したコミュニケーションの難しさを感じていたときに、生活者の視点から暮らしの延長線上で商品が紹介される、その自然な感じが新鮮に映りました。

だから、最初にご案内をいただいたときからお取り組みは自然に考えられました。わたしたちが目指していたターゲットの価値観と、「北欧、暮らしの道具店」さんの世界観がぴったり合っていましたから。

「北欧、暮らしの道具店」さんは読者層がしっかり見えて、ひとつのコミュニティがあるかのように感じます。そこへ、スタッフさんからの信頼が置かれた上で、商品の情報が届けられる。その構造は貴重ですよね。

──ぼくたちもBRAND NOTEは、ちゃんと親和性のある、紹介する意義を感じられる企業さまだけと決めています。その前提をお客さまにも伝えているからこそ、お取り組みをするとなった時点で「安心感」が機能しているのかなと考えています。

北島 さらにいいなぁと思うのが、スタッフさんも一人の生活者として登場されていることです。わたしは、そのリアリティが本当にいいと思っていて。

だから今回のBRAND NOTEでは、「基本的には北欧、暮らしの道具店さんのテイストで紹介してください」とお願いしました。“読者が信頼のおけるフィルターを通して紹介されたもの”として取り上げていただくのが、いちばん素直だし、メッセージとして受けいれられると思ったんです。

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BRAND NOTEでは、普段から家飲みを楽しむスタッフにその楽しみ方と「一番搾り シングルモルト」を飲んだ感想を取材して記事にしました。

たくさんのアンケートで感じた、「人の心が動く」とき。

──ありがとうございます。今回、ぼくらは「一番搾り シングルモルト」を「自分時間を味わうためのお酒」として捉え、モデルの香菜子さんやクラシコムスタッフが登場して、その観点から紹介させていただきました。実際にBRAND NOTEを実施してみての感想や、得られた成果はありましたか?

北島 アンケートのコメントが想定以上に多く、ありがたかったです。すごくうれしかったのが「ビールは、丁寧でおだやかな暮らしとは遠いものかと思っていた(けれど、そうではなかった)」という言葉です。

特に多かった若い年代の女性、さらに子育てをされている方にとって、お酒は「ちょっと罪悪感があるもの」として捉えられていたのだと感じました。

「もっと気軽に飲んでもいいんだ。他にも仲間がいたんですね!」という声を聞いて、そんな気持ちを肯定してあげられたのだとすれば、とても良かったんじゃないかと思って。「北欧、暮らしの道具店」さんには今回、その「体験の価値」そのものを提案していただけました。

言い換えると「こういう楽しみ方ができるんですよ」とか、「こういう時間を持つのはいかがですか?」という提案です。その気づきを与えること、それを肯定して後押しすることが可能なのだという、わたしたちにとっても「切り口の発見」がありましたね。

──アンケートの濃さは、ぼくも大きく感じたポイントでした。「お酒は飲めないけれど、人には勧めたい」と回答してくださっている方も大勢いらっしゃいました。

北島 やっぱり「新しい提案」って、ちょっとした違和感があるものなんだなぁ、と思ったんですよね。

──たぶん、ですけれど、「新しい提案」はギャップを生むんですよ。ぼくたちもBRAND NOTEのお取り組みを続けていて感じるのが、「自分の中にある何かしらの固定概念」と「新しい提案から得られる気づき」に、ギャップが起きたときに人の心は動くのだろう、と。

北島 私たちも今回のBRNAD NOTEからは、そんな気付きをもらったように感じます。そういう気付きが一つひとつ増えていけば、まだまだビールの楽しみ方を広げていけるんじゃないでしょうか。

ビールは劇的に進化しない。だからこそ、伝えたいこと。

──「一番搾り」ブランドは、今後どのようなコミュニケーションをお考えですか?

北島 2017年も「一番搾り」は、気兼ねない人との心和やかなビールタイムを提供していくつもりです。

そう強く感じたのは、2016年に「47都道府県の一番搾り」を発売したのも大きいです。
各地域で暮らすお客さまと、キリンビールの従業員がワークショップを行い、気質や風土、食文化などからコンセプトを決め、47都道府県それぞれの「一番搾り」をつくり上げたこれまでにない活動でした。

キリンビールは「お客さまのことを一番に考える会社」でありたいと考えていますが、まさにそれを体現する機会だったと感じます。
たいへんなご好評だったのに加えて、お客さまには「自分たちの地元を応援してくれている」というふうに受け取っていただけたのも貴重な発見でした。

自分の生活や信念に「キリンビールは、このブランドは、何かいいことをしてくれる」と思ってもらえることそのものが、ブランドとしても大切な取り組みだと考えています。そういう体験をもっと増やしていきたいですね。

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──しっかり手間をかけ、各地域に入り込んでいくのは、キリンビールが他の会社と比べても強く打ち出されているポイントですね。

北島 何事も、やっぱり「人」だと思っているんです。「企業」と「お客さま」の関係だけでなく、同じ「生活者」として向き合い、そこにあたたかみや思いやりを感じられる。そういうことを強みにしていきたいなと思いますね。

ビールって、電化製品などと比べると、いきなり劇的に進化するわけではありません。数ある中のひとつというか。だからこそお客さまには、BRAND NOTEの言葉を借りれば「何者でもない時間」とか、気兼ねない心和やかな時間とかに、「一番搾り」は寄り添ってくれる、というふうに選んでもらえるような体験を、これからもつくっていければと考えています。

自己紹介の「何をしている人ですか?」に、なんて答えますか?

──“同じ「生活者」として向き合う”という言葉は、クラシコムが大切にしている「暮らしも仕事。仕事も暮らし。」の考えにも近しいように思います。

北島 それで思い出したんですけど、わたし、先日、大分県の竹田市に行ったんです。そこで、ちょっと「暮らしと仕事」を考える機会があって。

竹田市は、都会に比べたら不便かもしれないけれど、人々はそのぶんシンプルな暮らしぶりです。元から住んでいる人、移住してきた人、どちらもいらっしゃるのですが、みなさん前向きで輝いている。その土地にあるものと食材で、老若男女のつながりを持っていて、「豊かだなぁ」と思ったんです。それで、豊かさとは何か、仕事観とは何かをあらためて考えました。

──どんなふうに、考えたんですか?

北島 社外だと自己紹介のときに「何をしている人なんですか?」って、よく聞かれるじゃないですか。それってほんとうのことを言えば、「暮らしの面」と「仕事の面」と、それから「その人の価値観や暮らし」みたいなものが混ざり合う答えになるはずですよね。

──たしかに「何をしている人ですか?」って聞かれますけど、うまく答えられないです、それ(笑)。明確な線引きって、なかなかできないですよね。

北島 それこそオンとオフだけではなくて、一緒くたにした時の強みを「仕事」として生きている人が多くなっているし、個性も立っていたりする。そんなふうに捉え直したら、わたしの一部をつくる仕事って、やっぱり面白いなぁ、と。

まずは「何をしている人ですか?」に、わたしも答えられるようになりたいですね。

──その答えが見えたときには、ぜひあらためてお話を伺わせてください。今日はお時間をいただき、ありがとうございました。

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【BRAND NOTE キリン 一番搾り シングルモルト編】はこちらよりご覧いただけます。

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