「北欧、暮らしの道具店」のノウハウを活用して、企業のブランディング支援を行う「BRAND SOLUTION(ブランドソリューション)」。お取り組み担当者インタビューでは、BRAND SOLUTIONのクライアント企業が当初抱えていた課題や、取り組みを通じての気づきなどについて振り返っていただきます。
今回お話を伺ったのは、耳をふさがない “ながら聴き” イヤホン「ambie(アンビー)」を展開する、ambie株式会社でセールス&マーケティングチームのディレクターを務める高松奈未さん。
2022年のBRAND NOTE(記事)でのお取り組み以降、BRAND SHORT(リール動画)やコンテンツプロデュース(ambieのWEBサイトコンテンツの制作)などでご一緒させていただいています。
「気持ちよく購入していただくためには、いかに丁寧に伝えるかが大事」と話す高松さん。そうした状況に対し、当店とのお取り組みが果たした役割と得られた成果とは?
聞き手は、クラシコム ブランドソリューショングループのプランナー清水です。
ambie株式会社 セールス&マーケティングチーム ディレクター
高松奈未
2017年よりambieにジョイン。セールスマネージャーとしてtoC、toB向けの販売企画・運用を経て、国内におけるマーケティング、セールスを統括。2021年より現職。
音楽の聴き方の変化に寄り添うべく生まれたambie
―高松さんは、ambieのなかでどのような領域をご担当されているのでしょうか?
私はセールス&マーケティングの部門でディレクターを担当しています。私の役割を説明するときは、いつも「ambieを魅せて、売ることです」というふうに説明しています。
もともとはセールス担当として、ECサイトの運用とお取引先とのやり取りをしていたのですが、担当者が離れることになった2021年頃からマーケティング領域も兼任することになりました。広告運用やWEBマーケティングの領域は未経験の状態でしたが、セールスとマーケティングは密接な関係ですから通じるところもあるし、以前、女性誌の編集をやっていた経験も活かせるだろうということで担当しています。
―2017年に発売されたambieですが、コンセプトや開発の背景を教えていただけるとうれしいです。
2010年頃から、配信サービスやサブスクで音楽を楽しむことが定着すると、それまでのCDを購入して聴き込むという聴き方から、AIのレコメンドで選ばれた音楽を聴くスタイルに変化していきました。朝のカフェミュージック、コーヒーに合う音楽、集中できる曲……というようなふんわりした選曲をするようになり、音楽が「ながら聴き」されるようになります。
音楽に向き合って聴くのであれば、ノイズキャンセリングでいかに良い音で聴くかが求められますが、BGMやラジオのような感覚で音楽を聴くスタイルになったなら、それにふさわしいイヤホンがあるだろうと。スピーカーの延長線にある「BGMを身につける」ようなイヤホンを提供したいというのがambieの最初のコンセプトです。2017年に有線タイプから発売開始し、製品のアップデートを続け現在は完全ワイヤレスタイプも販売しています。
コロナ禍が追い風に。「ながら聴き」という新しい市場を開拓
―発売当初はどのようなコミュニケーション戦略で売り出していたのですか?
ambieのアイディアは現在のCEOである三原がソニーに在籍していた頃、新規事業として発案したものです。BGMを身につけるというコンセプトから、家電やオーディオ機器として売らないということは、最初から決めていました。そのためにも、あえてソニーから離れてジョイントベンチャーとして立ち上げるという選択をしました。いわゆる家電量販店の商流、商習慣のなかだと、せっかくいいプロダクトを作っても価格勝負になってしまう。値下げ競争に巻き込まれたくなかったんです。そのため、発売から2年目ぐらいまでは家電量販店やAmazonでの販売もせずに、販路を限定してスタートさせました。
その日の気分やコーディネートに合わせて、イヤホンもアクセサリー感覚で身につけてほしいという思いがあったので、アパレルブランドのビームスやロンハーマンのアクセサリーコーナーにファッション雑貨として置かせていただきましたし、家電販売店でも、ライフスタイルを大事にする蔦屋家電のようなお店に限定しました。当時、新宿伊勢丹にスタートアップのガジェットを扱う売り場があったのですが、ambieの新しいコンセプトを気に入ってくださり、そこでも販売させていただきましたね。
―音楽の聴き方の変化により生まれたambieですが、ここ数年はさらにイヤホンへのニーズも大きく変わったのではないでしょうか?
コロナ禍に入り半年ほど経った頃から、「イヤホンを使いすぎて外耳炎に悩んでいた」、「長時間、イヤホンを付けることで耳が痛い」、「イヤホンが耳に合わない」といったコメントとともに、「やっと自分に合うイヤホンを見つけた」というようなお声が集まるようにもなりました。
イヤホンの長時間利用による苦痛から開放された声のほか、オンライン会議がしやすいという声も多かったですね。家族に話しかけられても気づかない、宅配便のインターホンが聞こえないというストレスがあるなかで、外の音が聞こえるというambieならではの特徴が新しい生活スタイルにハマったようです。
ambieが「北欧、暮らしの道具店」を選んだ理由とは
―「北欧、暮らしの道具店」のBRAND NOTE でご一緒させていただいたのが、2022年12月でしたが、ご一緒しようと思っていただいたきっかけはなんだったのでしょうか?
発売初期は、いわゆるガジェット好きのアーリーアダプターと呼ばれるような30代から40代の男性が飛びついてきたんですが、ガジェット好きの人がこだわる「音質」の点で言えば、ambieは他製品に敵いません。音質を追求するならノイズキャンセリングが必要ですが、ambieはノイズウェルカムなので。求められるものが違うんです。
スペックよりも、いい雰囲気で音楽を楽しみたい人たちがどこにいるのかというのを追求していくなかで、アパレルやライフスタイルのブランドなどに行き着き、実際に売上が伸びたので調査をしていくと、この界隈の方々に刺さるんだろうなというのが見えてきました。
女性にぴったりなイヤホンと言えるイヤホンってambieくらいなのでは?という仮説もあったので、そこを打ち出せるパートナーとご一緒したいと考えたときに、これは「北欧、暮らしの道具店」だなと思ったんです。
―高松さんご自身も「北欧、暮らしの道具店」を知ってくださっていたのですか?
そうですね。ambieの開発の際、カラーリングを検討するときから、使用者のイメージに「北欧、暮らしの道具店」の読者さんがありました。30、40代の女性で、暮らしを丁寧にしたり、ウェルネスを考えたりすることに積極的な方というイメージがあり、その方々が好むカラーリングということでラテ、ミストスカイという配色が生まれた背景もあって。製品開発の時点でこういう人たちに届けたいというペルソナ像があったんです。
同時に、ambieの商品が良くも悪くも説明が必要な商品なので、そこを丁寧に伝えていただけるパートナーとご一緒したいという思いがありました。耳をふさがないイヤホンとはどういうものなのか、外の音が聞こえるけど音楽も聴こえるってどういうことなのかを説明する必要がありますから。
そんな思いから「北欧、暮らしの道具店」とご一緒させていただいたのですが、本当に大成功でしたね。
▲2023年に制作したリール動画。約45万回再生を記録(2025年2月時点)
―それはうれしいです。「こんなイヤホンを探してた!」と当店スタッフ一同大盛り上がりするところからのスタートでした。ただambieさんとご一緒するまで、「北欧、暮らしの道具店」ではガジェットのタイアップ案件での実績がなかったんですよね。そこの不安はなかったのでしょうか?
実績がなさそうだけど大丈夫かな?という気持ちも少なからずありましたし、当時はオーディオブランドがライフスタイルカテゴリーで打ち出していくのも珍しかったと思うのですが、一方で「他がやっていないなら、私がambieでやらねば!」という気持ちも大きかったですね。社内にもそうやって説得しました。
―最初のお取り組みであるBRAND NOTEでは、「北欧、暮らしの道具店」のお客様がどれくらいイヤホンに対してニーズがあるのかを調べようという側面もありましたよね。
そうですね。スペックを伝えるのではなく、生活のなかにambieがどう取り入れられるのかというのを想起できるようなシーンで訴求をしたいと考えていたのですが、それをすごくわかりやすくご提案いただきました。読んでくださった方々が、すっと自分ごとにできるような記事だったと思います。
ambieの広告のクリエイティブでも、自分が使っているシーンに紐づけて自分ごとにできるかというのはすごく気にしている点なので、それを上手く表現いただいたなと思います。
最初のBRAND NOTEでニーズを吸い上げたところから、「家事」というキーワードが出てきて、そこから継続して「家事」をテーマにリール動画などを制作していただいています。
―弊社のスタッフに愛用者がいて、彼女にヒアリングしたところ苦手な家事のときに気分を上げてくれるという話があり、それはスタッフ内でも支持されたという背景もありましたね。
そうでしたね。2023年から2年間で合計5本のリール動画を制作しましたが、たくさんの暮らしのシーンをお見せすることを積み重ね、直近のリール動画では「夜の自分時間」というワンシーンにambieがどのように寄り添うのかを深掘りしたコンテンツにしていただきました。
この2年間は前年までの結果を踏まえて、アップデートしながらリール動画を中心にお取り組みさせていただいていますが、どの動画もものすごく再生回数が伸びるんですよね。再生回数が伸びる中でも、動画の内容で反応が変わってくることも感じていて。直近の夜時間の動画では、「いいね」は伸びたけど保存数はちょっと低めで、生活のなかのambieの存在は受け入れられたけど、「後で購入しよう」という気持ちにまではつながらなかったのかな……という結果でした。目的ごとにどんな企画でどうやって見せるべきなのかのインプットにもなっています。
▲2024年に制作したリール動画。夜のひとり時間をテーマに作成
―当店とお取り組みをすることで気づいたことはありますか?
動画の再生数もそうですし、御社のスタッフの皆様がプライベートでも使っていただいているというお話をお聞きすると、30代から40代の女性をターゲットにすることは間違ってないんだなと確信しています。
正直、開発チームは男性が中心で、社長もソニー出身のエンジニアですから。女性に求められているイヤホンなので女性をターゲットにしましょうと話しても、腹落ちしきれていない部分があると思うんです。1人でマーケティングをやっていると、「本当にこの道であっているのか」と不安になることもあるのですが、御社とご一緒することで、この道で間違いなさそうと安心できます。
お取り組みを通じて感じた手応えとは
―認知が広がった手応えを感じた瞬間があれば教えてください。
リール動画は、実際に購買につながったコンバージョンが計測できるわけではないのですが、御社の動画が公開されたあとは、明らかにオーガニックでの流入や楽天での売上が増加するというのは印象的な現象の一つです。
売り上げや再生数が伸びたことからも認知拡大の実感はあるのですが、toBの案件で、住宅展示場の来場者プレゼントに採用したいというお問い合わせをいただいたときに「届いている!」という実感がありました。住宅業界の方々はきっと「北欧、暮らしの道具店」のサイトなどを参考にして空間づくりやサービス提供をしていると思うのですが、そこの方々が指名で採用してくれたのは確かな手応えと嬉しさがありました。
―クラシコムと一緒にお取り組みした感想があれば教えてください。
クラシコムさんとお取り組みをはじめた当初は、たしかリール動画の制作はメニューになかったんですよね。記事制作のお取り組み後にブランドソリューショングループの高山さんと雑談するなかで、「リール動画をやりたい」みたいな話をしたところ、その後、メニュー化してくださって。ちゃんと次に繋げていく体制ができているのが、御社と一緒にお仕事をしていてすごくやりやすいところです。だからこそ3年間、継続できているし、ご一緒したいと思えるのだと思います。
▲初めてのリール動画となったお取り組み
―ありがとうございます。私たちとしても新しいメニューにも関わらず、ご一緒いただけるとご快諾いただけた際はとても嬉しかったです。高松さんがショート動画をやりたいと思ったきっかけは何だったのですか?
Instagramにリール機能が出てきたタイミングで、若い子たちが先にショート動画を取り入れていきましたが、そもそもターゲットである30代、40代の主婦はもっと時間がないわけですから、情報をギュッと凝縮して伝える動画を良い雰囲気で伝えることができたらなと思ったんです。
もちろん自分たちで作ることやインフルエンサーを起用することも検討はしていたのですが、そうするとPR案件ぽいものになってしまうので、悩んでいたんですよね。BRAND NOTEの内容を1本の短い動画に詰め込めるのが理想的だと考えた時に、クラシコムさんにご相談させていただきました。トンマナも世界観づくり、クオリティも信頼していましたので。
▲2024年に制作したリール動画
―そうだったのですね。私たちも新しい手法にトライできる機会にもなり、ありがたいお取り組みでした。
私はいわゆるWEBマーケターではないですし、PR感が強いものがあまり好きじゃないんですよね。LPにこの色を使うとコンバージョンが上がりますみたいなことは好きではないし、ambieには合わないと思っています。
モノを売ることを生業にしている以上、いかに気持ちよくユーザーの生活の中に入っていくかが大事だと思うので。突き詰めると、モノを買わなくてもいいのに買ってほしいわけですから。「買って!買って!」という広告ではなく、いかにambieが今の自分に必要で、そばに置きたいと思ってもらえるように丁寧に伝えていくかがすごく大事なことだと思っているので、そこの価値観が御社とすごく合うなと感じています。
―そこはまさに我々が一番頑張りたいところなので、共感し、評価いただけるのはとても嬉しいです。今後、高松さんがambieのマーケティング担当として、またambieというブランドとしてチャレンジしていきたいことや展望があれば教えてください。
8年前にはなかった「ながら聴き」という市場を作ることができましたが、今やさまざまな競合が出てきています。Instagramもアルゴリズムやコミュニティとしての変化が著しい時期ですので、今後は一緒に作っていただいているコンテンツをもっといろんな場所で活用できないかということも検討させていただいているところです。
ambieとして次は、海外を見据えて動き出しているところです。日本で打ち出した暮らしを楽しむような文脈で、日本で生まれたプロダクトの良さをそのまま海外に持って行ってもウケるのではないか?と施策を検討しているところです。海外に展開することで、ambieが今まで築き上げたものをより確固たるものにしていければと考えています。
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