プライベートに戻る時間にクラシコムの記事を
――ガスコンロや給湯器で家庭になじみの深いリンナイさんですが、ECも手掛けられているんですね。eビジネス推進室の役割と、お二人の業務を教えていただけますか?
廣江 eビジネス推進室は「ブランドの向上」と「消費者接点を作る」というコンセプトを掲げ、消耗部品の販売サイト「R.STYLE(リンナイスタイル)」の運営やEC限定商品の企画販売などを行っています。その中で私は商品企画担当として、オリジナル商品の企画から開発とのやりとり、仕様決定など、商品が発売になるところまでを進めています。
加藤 そのあとを継ぐのが、私が担当する販売企画で、プロモーション全般を手掛けています。商品企画と販売企画は、常に連携してプロジェクトを進めている感じですね。
――元々、どういうきっかけで「北欧、暮らしの道具店」を知っていただいたんでしょうか?
加藤 たぶんSNSを介して前から知っていたのですが、直接的な出会いは、友人からの結婚祝いとして御社で取り扱われている商品をもらったことでした。もう4年前くらいですね。それからサイトをよく見るようになって、気付いたら自分もプレゼント選びに使うくらい、今では特別な場所ですね。読み物も、会社帰りの電車でプライベートな自分に戻すコンテンツとしてよく読んでいます。
廣江 私もきっかけはプレゼントでした。ちょうど同じころ、仕事上で素敵なオンラインショップをチェックしていて、存在は知っていたので「あ、ここの商品なんだ」と。改めてサイトを見ると、スタッフの方々が一つひとつの商品をすごく丁寧に、愛着をもって勧めているところに共感しました。
私たちもeビジネス推進室内で企画から販売、顧客対応までしていて、メンバーも女性中心で子育て中のママも多いんです。そんな組織体制も勝手に御社と似ているなと思って(笑)、今は同じEC仲間としても皆で参考にさせてもらっています。
個性を打ち出した“ひとめぼれ”作戦
――組織やスタッフにまで注目していただいているんですね! では改めて、EC限定商品について教えていただけますか?
廣江 当社では2011年からEC限定のガスコンロを発売し始めました。ECは、一般商品と違ってピンポイントのお客さまに向けた商品展開ができるのが利点です。なので当初からスペックというよりも「こういう暮らしをしたい」、あるいは「こういう料理をしたい」といった個々のこだわりに応える商品で、もっとリンナイに愛着を持っていただけるお客さまをつくろうという考えがありました。
――中でも、今回BRAND NOTEでお取り組みさせて頂いた「Vamo.」はステンレスとブラックで統一され、一見すると業務用ガスコンロのような印象で、かなりニッチな商品なのではないかと感じます。開発の経緯をうかがえますか?
廣江 「Vamo.」のコンセプトは「料理好きのコンロ」です。市場の流れとしては、どちらかというと機能でお客さまを助ける方向へ進んでいるので、ボタンが多かったり操作が複雑化したりしがちです。それはそれで多くのお客さまのニーズに応えていますが、一方でもっとシンプルなコンロや業務用のように強い火力のコンロがほしいというニーズも分かっていたので、シンプルなデザインと強火力の2点だけにフォーカスしてみようと考えました。自分自身、インテリア性の高いコンロがあってもいいんじゃないか、と思っていましたし。(「Vamo.」公式サイト)
「Vamo.」は、スペイン語でLet’ s goを意味するvamosに由来。さあ、やってみようというニュアンスや、火力の強さを感じさせる語感などから決定したといいます。
――引き算の発想ですね。実際に販売する段階では、どのような方たちにどんなコミュニケーションを図っていったのでしょうか?
加藤 プロダクトとしての魅力と、それが実現する暮らしの中のシーン、言い換えればハード面とソフト面の両方の楽しさをうまく伝えたいと思いました。いちばん意識したのは、お客さまが暮らす上で意識している価値観です。この商品を気に入ってくれる人たちはどんな暮らしをしているのか、インテリアの画像を集めたりして皆で話し合い、その人たちの価値観をキーワードとして挙げました。その中から「気取らない、シンプルさ」などをブランドキーワードとして設定し、これを軸にしてコンテンツを開発していきました。
――「Vamo.」のサイトには、実際に飲食店に協力を得て撮影した動画もありますね。
加藤 強火力を伝えるには、料理を楽しんでいるところ、ハッとするようなダイナミックさを特に意識しました。これらを表現するにも、動画は重要でしたね。それから制作パートナーには「五徳やバーナーキャップをアートのように見せたいです」とお願いしました。それくらいしないと、この子の個性は生きてこないと思ったんです。
尖った商品は最初にぐっと個性を出して“ひとめぼれ”してもらわないと、他商品を回遊してスペックや価格を比較してからまた戻ってきてもらうのが難しい。これを私は個人的に「ひとめぼれ作戦」と呼んでいます(笑)。
記事公開2日目から直接コンバージョンを獲得
――なるほど(笑)。“この子”という言葉にも、愛情があふれていますね。BRAND NOTEの取材でも「我が子同然」とおっしゃっていましたが、BRAND NOTEの出稿はどういったタイミングで検討されたのですか?
加藤 「Vamo.」の公式サイトをローンチしてからですね。動画で飲食店のシェフに料理していただいて、楽しさは訴求できたのですが、家庭用コンロという点がちょっと伝わりづらかったんです。そこで、外部メディアを使った広告的な訴求では、もう少し家庭用に落とし込んでみようと考えました。
BRAND NOTEについては、元々「北欧、暮らしの道具店」の読者だった私たちからすると、「Vamo.」にフィットする価値観に近い方々にきっと届くだろうという自信はあったんです。御社も30代女性といった属性でセグメントするのではなく、デザイン性の高いものを使いたいとか、シンプルに暮らしたいといった価値観で読者を捉えているのだろうと。そう思ってお取り組みさせてもらいました。
BRAND NOTEでは、「Vamo.」を使用した料理の試食会(写真左)やスタッフ宅に「Vamo.」を迎えた使用レポート(写真右)といった内容を記事にしました。
――実際に出稿されて、反響などはどうでしたか?
加藤 記事公開後5日間で計測したところ、記事を経由して「Vamo.」サイトに訪問した方のPVが約10,000PV、これはVamo.サイトを立ち上げて以降、他社サイトからの参照数としては群を抜いた集客でした。
それと、直接コンバージョンを生んだのは特徴的でしたね。過去の認知系の施策では間接コンバージョンは上がっても直接購買はなかったのですが、記事公開2日くらいからコンバージョンが跳ね上がり、即効性を実感しました。しかも、それが1日当たりコンバージョン数の過去最高値になったんです。
同じお客さまを見据える企業同士でつながりたい
――そうだったんですね! 僕らはEC事業者で、そこが読み物コンテンツも展開している形ですが、他のいわゆる純粋なメディアへの出稿と比べてなにかお気づきの点はありましたか?
加藤 むしろ母体がECである点が、出稿を後押ししましたね。単品通販、特に個性が強い商品なので、商品への購買意欲が低い方に認知が広がっても正直あまり意味がないな、と。だからPVよりも、読者のモチベーションや価値観、関係の深さを重視していました。御社は買うモチベーションの高い方が多く集まることが、魅力的だったんです。
もちろん、記事自体のクオリティもとても高かったです。よくある記事広告は、私たちが提供する商品情報以上に内容が広がらなかったりしますが、御社は独自の視点で主観的に商品を掘り下げて紹介してくださった。「お墨付きをもらった」ような感じで、それをPRしたいので公式サイトからもBRAND NOTEのコンテンツにリンクするバナーを貼っているんです。
廣江 私も実際にクラシコムさんと組ませていただいて、読者に対する真摯な姿勢をあらためて感じました。広告でも、決して不自然に売ろうとはしないというか。だから、自由回答のアンケートも「素敵な商品を紹介してくださってありがとう!」みたいな熱いコメントが書かれるんだなと思いましたね。
加藤 そもそもBRAND NOTEの取り組みを開始されるとき、これからこういう広告コンテンツが入ります、と読者に説明する記事がありましたよね? あれが衝撃的でした。だから広告でもまっすぐ受け止められているし、情報として信頼されているんですね。
――僕らとしても、お二人が僕らのサイトをよくご存知だったので、ここまではやりすぎだといった点も僕ら以上に意見をいただけて、とてもありがたかったです。では最後に、今後の「Vamo.」の展開をお聞かせください。
加藤 今は御社への出稿を含めて商品ターゲットのど真ん中の方々へのアプローチが中心ですが、今後少し広がりが出てきたら、周辺の方々への訴求も考えたいです。 また、同じお客さま層にアプローチしたい企業同士でぜひコラボ企画をしたいので、御社を介してそうした横のつながりができるとうれしいです。
廣江 私たちは買っていただいた方へのアンケートは取れても、買う手前の方や買わない方の意見を聞く手段はなかなかないので、BRAND NOTEのアンケートは貴重でした。予想通り、想定しているお客さまの層が重なっていると実感したので、今度はたとえばキッチンについての悩みなど、また違う意見を聞けたら深いヒントが得られそう。今後もお客さまを軸に、御社と連携できればと思います。
【BRAND NOTE・Vamo.編】はこちらよりご覧いただけます。